07
小降りになった所でサッチのマンションの駐車場へついた。
サッチの血を見てパニックを起こす○○を取り合えず車に乗せ連れてきた。
キャリーバックごとサッチは○○をマンションの自室へと入れた。
サッチご自慢のリーゼントはすでになく、長めの髪は重力に逆らわずにいた。
「とにかく手当させて下さい!」
○○が譲らないのでサッチは大人しく地べたに座った。
髪の毛を後ろに流すと○○が近付いて来た。
目を閉じると濡らしたティッシュで丁寧に血を拭かれる。
(はァ、なんだ?この状況。まァこの子には彼氏いるから大丈夫だろ)
サッチがチラリと目を開けると真剣な顔で傷口を見る○○と、少し下に目線をやると濡れたシャツが肌に張り付く艶かしく映る胸があった。
(うーん。まずい)
サッチは再び目を閉じた。
サッチはわざと本気になりそうな女には近付かないでいた。
自分は好きな女がいてもついつい他の可愛い女に目移りしてしまう癖がある。
それを自覚してあるからだ。
例え好みの女だとしても男持ちには反応しないので○○を連れて来たのだが、やはり目の前にそう言う物があると、悲しいかな男の性と言う奴だった。
「良かった、思ったより深い傷じゃなくて」
○○は独り言のように言い、ホッと胸を撫で下ろした。
ガーゼを傷口に当て、テープで止めた。
「ほい、さんきゅー」
サッチは軽く礼を言う。
「礼を言うのはこちらの方です。ありがとうございました。そして、すみませんでした」
○○は深く頭を下げた。
「良いって事よ!サッチさんを頼りにしてくれて!」
サッチはニヤリと笑った。
「……すみません」
○○は何故あの時サッチの顔をが浮かんだのだろうと不思議に思った。
「もう遅いからな。送ってく」
サッチは「よっこらせ」と言いながら立ち上がる。
「あ…………。この近くに漫喫とかありますか?」
○○は思い出したように声を上げてから、おずおずと聞いた。
「漫喫?あったかな?」
サッチはうーんと首を捻る。
「なに?どうして?」
サッチは不思議そうに声を出す。
「え?あー……あぁ!スラムダンク!久し振りに読みたくて!」
○○はポンッと手を叩いた。
「こんな時間に?明日も仕事だろ」
サッチは訝しげに○○を見る。
「えー、えぇ!どうしても読みたくて!」
○○は必死に頷く。
「確か、エースが置いていったのがある待ってな」
サッチは立ち上がると紙袋を持って帰ってきた。
「ほら、貸してやるから帰れ」
サッチはどんっとスラムダンク全巻が入った紙袋を差し出した。
「……あー、ドラゴンボールだったかなぁ」
○○が目を泳がしながら言う。
「それなら俺が」
「やっぱいいです!」
立ち上がったサッチを○○は慌てて止める。
「お、送らなくて大丈夫です!」
○○は立ち上がる。
「ここ、どこら辺か解ってる?」
「…………」
サッチの言葉に○○は押し黙る。
「あ!携帯!……充電切れてるんだった」
○○は携帯で地図を開こうとして動かない事に気付いた。
「さすがにさ、さっきまで襲われてた子を一人で外に出せないってんだよ」
サッチは呆れた様に○○の近くでしゃがみ込んだ。
「それともなに?家出?そんなデカイ荷物持って」
「…………」
「言っちゃいなさいよ」
サッチ少し口調を厳しくすると○○は先程あった事を説明した。
「と、言う訳で、家には帰れないので、漫喫かホテルの場所を教えて下さい」
○○は情けなくなりながら声を出す。
「……マジか……」
サッチはガックリと項垂れた。彼氏持ちではないなら、とそこまで考えて止めた。
「わかった。取り合えずこんな時間に女の子一人で外に出せねェ。仕方ないから取り合えずここに泊まる?」
サッチは軽く声を出した。
「…………で、でも、迷惑」
○○は口では言うが、社交辞令のようだ。
「良いよ。その代わり年頃の女の子が男の部屋に泊まる意味わかる?」
サッチは軽く、ごく軽く言葉を重ねた。
「…………」
2人の間に沈黙が流れる。
サッチは「いじめ過ぎたか」と口を開こうとした時、○○は濡れたシャツのボタンを外し始めた。
止める間もなくシャツを脱ぐが、そこにはブラジャーは見えずにタンクトップが見えただけだった。
サッチはガックリしながもホッとしていた。
「こ、子供ではないので解っているつもりです。サッチ部長がそれをお望みなら、私!」
○○は思い詰めた顔でタンクトップにも手をかける。
「解った!はい、おしまい!」
サッチは慌てて○○の手を止めた。
「冗談だ。取り合えず住む所が見つかるまでいて良いから。風呂に入ってらっしゃい。風邪引くぞ」
サッチはため息をつきながら風呂場の位置を教えるべく立ち上がった。
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