08
「そっか、いよいよ明日かー」
あれから1年。
○○の貯金も全額返ってきた。
正直どうやって返金して貰ったのか、その後あの2人がどうなったかは怖くてマルコに聞けなかった。
一度聞こうと試みたがマルコの表情は予想以上に怖かった。
マスターからは「気付いてあげられなくて申し訳ない」と謝られた。
○○はそれに対しても申し訳なさでいっぱいだった。
そして、1年経った今、○○の店が完成するのだ。
「マスターも大変だな!強力なライバル店の出現で!」
常連客の一人がニヤニヤと笑った。
「失礼です!ここのお店とは言わば暖簾訳の姉妹店ですよ!ね?マスター」
○○は不服そうに常連客を見てから、マスターに聞く。
「もちろん、協力関係ですからね」
マスターは穏やかに笑った。
「そっか!ちゃんと俺たちも行くからな!」
もう一人の常連客はにかりと笑った。
「そうだぞ!何かあったらオジサン達に言うんだぞ!」
もう一人の常連客が寂しそうに言った。
「ふふ、ありがとうございます」
○○は嬉しそうに笑った。
「しっかしさ、絶対店よりも結婚が早いと思ったんだけどなぁ」
常連客の一人がちらりとマルコの座ってる席を見た。
「仕方がないですよ。マルコは気付いてないと思ってる見たいですけど、自分がヤクザだから私に気が引けてプロポーズ出来ないんだから」
○○はやれやれと言う顔でマルコを見た。
「ぶふっ!」
マルコは○○の言葉に珈琲を吹き出した。
「な、なっ!」
「私が気付いてないとでも思ってるんですか?あんなに近くにいて、あり得ない」
○○は店を持つのに節約としてマルコのマンションに転がり込んでいた。
と、言うよりマルコが○○の入院中にアパートの物を全て自分の部屋に詰め込み、勝手に解約までしていたのだ。
今まではあまり強引な態度を見せなかったマルコだったが、ここに来て○○への執着心が深まった様だ。
「何で気付いたよい」
マルコは驚いたまま○○を振り返る。
「マルコの留守中にサッチさんとイゾウさんが来ましたからね」
○○はにこりと笑った。
「……あいつら……」
マルコは外を見て、見えない2人を睨み付けた。
「ま、マルコ」
○○はカウンターから出てマルコの席へと近付いた。
常連客が今日に限って皆カウンターに座っているのは○○との別れを惜しむためではなかったようだ。
「好きです。ずっと一緒にいたい。結婚してください」
○○はマルコのすぐそばで頭を下げた。
「……」
常連客とマスターがニヤニヤとこちらを見ているのが気に食わなかったが、○○の肩が震えているのにマルコは気付いた。
「……ヤクザの嫁なんて苦労するよい」
マルコは真剣な声を出す。
「……解ってる。でも、わからない。マルコと一緒なら大丈夫だと思うから」
○○は頭を下げたまま声を出した。
「はぁ……」
マルコはため息をついた。
「っ!!」
「こう言うのは男に言わせろよい」
マルコは立ち上がると○○を抱き締めた。
「結婚してくれ。一生大切にする」
マルコは○○の耳元で甘く言葉を紡いだ。
「……はい!宜しくお願いします」
○○は感極まって泣きながらマルコに抱き付いた。
気付けない私。「いやー!良かった!」
「おめでとう!」
「ほら!マスターも泣いてないで!」
「おめでとうございます。どうか、お幸せに」
「っ!ありがとうございます!!」
「ありがとうよい」
***
○○様!
ここまでお読みいただきましてまことにありがとうございました!!
本当は1ページ短編を考えていました。
書き始めたら前中後編になるかなぁと思っていたら8ページでした(笑)一体どういう事なの?!
本当はもっと酷いマルコと酷いヒロインの予定でしたが、私の力量ではハッピーエンドにはならなかったので、こうなりました!
少しでもお楽しみいただけましたら幸いです!
大切な人にはちゃんと話をしましょうね♪
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[mokuji]
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