06
※暴力的表現、流血があります。
苦手な方はご注意下さい。
○○は店にマルコが居た事に気付いていたが、必死に気付かない振りをして店から出た。
「……はぁ。マルコ、さん」
人気のない裏道で○○はポツリと呟いた。
「っ!!!」
悲しみに暮れていると突然後頭部に激しい衝撃が襲った。
勢いが殺せないままゴミ捨て場に突っ込んだ。
「っ?!」
痛みと生臭さで吐き気がした。
何が起こったか理解できずにいた。
「こんにちはぁ!○○さん!」
ねっとりとした言葉使いの女の声。
○○が振り返るとバイトの女がいた。そして、知らない男は木片を持っていた。
血がついているのは○○をそれで殴ったからだろう。
「な、なに?」
○○は意味が解らずそう呟いた。
殴られた頭は有り得ないほど痛く、恐怖と混乱が脳内を支配していた。
「まぁ、汚いですね!お金もない○○さんにはお似合いかしら?」
女はにたりと笑った。
いつもの女からは想像できない嫌な笑顔に○○の心臓は大きく跳ねた。
「貴女の価値は貯金でしたよね。特に綺麗なお顔でもないのにでしゃばって」
女はクスクスと笑った。
「私、お金返せる当てがないのぉ。だから、返さなくて良い方法を思い付いたの!」
女はうっとりと笑った。
隣にいた男が木片を構える。
「っ!!」
○○は生命の危機を感じた。
このままではいけない。ここから早く逃げなくては!
だが、体は震え、なかなか動いてはこれなかった。
「い、いや!」
○○はやっとの事でゴミ捨て場から這い出ると、道に出ようとする。
「待てコラ!」
男は思いきり木片を振り上げて後ろから○○の右肩を強打した。
「ぐぁっ!!!」
あまりの痛さに目眩がした。
「逃げて警察とか行かれたら凄く面倒なんですぅ」
女はクスクスと笑った。
「い、行かない!だから!」
「無理ですよぉ!」
女が言うと男は勢いよく木片を投げ付けた。
「っうぅっ!!!」
ささくれ立っていた木片が背中に刺さった。
じくじくと痛みが広がる。
(あぁ、殺される)
○○は近付いて来る男に恐怖を感じた。
(マルコ、さん……。きっと、これは罰だ)
○○は男が懐から出してきた刃渡り30センチのサバイバルナイフを目にした。
右手の感覚はすでになかった。
(あぁ、もう一度マルコさんに会いたい)
ナイフを振り上げて男は近付いて来た。
「ま、マルコぉぉ!!!」
○○は思わずマルコの名を叫んで頭を抱えた。
マルコはマスターと常連客に促され店の外に出ていた。
「裏口かねい」
マルコは煙草に火をつけると裏道の方へ足を向けた。
ここは建物と建物に挟まれ、昼間に来ても薄暗かった。
ほどなく人の気配がした。何やら揉めているらしい声に歩を速めた。
何だか嫌な胸騒ぎがしたのだ。
「ま、マルコぉぉ!!!」
○○の悲鳴に走り出す。
頭で理解する前に地を蹴っていた。
男の持っていたサバイバルナイフをマルコが蹴り落とした。
マルコは急いで身を屈め、○○の様子を見る。
「○○!」
マルコが声をかけると○○は薄く目を開いた。
「……」
「なに?」
口を開いたが声が聞こえずにマルコは耳を近付けた。
「ごめ……さい、まる」
○○は涙を流し、朦朧としながらマルコに謝る。
「テメェ等…………何してる?」
マルコは○○をその場に寝かせると、地を這う様な低い声をマルコは出して立ち上がった。
「っ!テメェには関係ねェだろ?!!」
男は素早くナイフを拾うと腰を低く構えた。
「あ、あー!マルコさぁん!こんな所で何してるんですかぁ?」
女はにっこりと笑顔を出した。
「……なるほど」
女の笑顔にマルコは煙草を足元に投げ、足で揉み消した。
「テメェが○○にタカってた奴か」
マルコは女を冷たい目で見下ろした。
「っ!……もしかして、マルコさんが○○さんの?」
女は驚いてマルコを見上げた。
「だったら、なんだよい」
マルコはゴミでも見るような目で女を見る。
「ふふ、じゃあ、逃がすわけにはいかないわ。こいつも殺っちゃって!」
女は男に合図を送る。
「ま、マルコ?……も、もしかして、こいつ……」
しかし男はマルコを見て冷や汗をかいていた。
「?だったらなんなの?」
女は苛立たし気に男を見た。
「こいつ!白ひげのマルコじゃねェか!!!そんなヤバイ奴に手なんか出せねェよ!!こっちの命が危ねェ!!!」
男はくるりと背を向けて走り出す。
「なっ?!」
女は驚いて男の背を見る。
すると、すぐ隣を猛スピードで何かが通った。
「逃がさねェよい」
マルコはあっと言う間に男に並ぶと思いきり蹴り飛ばす。
大の男が宙を舞った。
ーーガラガラガラ!
派手な音を立てて男はエアコンの室外器に激突した。
「ひぃっ!!」
それを見た女が顔をひきつらせた。
マルコはぐったりとする男を片手で掴むと引き摺り上げた。
「テメェら」
マルコは捕まえた男を女の隣に投げ捨てた。
女は短く「ひぃっ!」と悲鳴を上げた。
「警察呼んで貰えると思うなよい」
マルコの顔は鬼の形相と言う名に相応しいほど歪んでいた。
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