05
マルコが○○に疑問を持つ様になったのは割りと早い段階だった。
彼女の誕生日やクリスマスなど記念日に買った宝石を初めの内は喜んで着けていたが、いつの間にか着ける事を止めていた。
そして初めの内は「割り勘!」「ここは払います!」と躍起になっていたが、いつの間にかマルコが払うのが当然になっていたのだ。
もちろん金を払うのが嫌なわけではない。彼女の為に払うのであればマルコは喜んで払う。
そしてデートの時は決まって遅刻をする。しかも毎回道を聞かれると言うものだった。
さすがに毎回と言うのにマルコは疑問を持った。
そんな話を仲間内にしたのは、確実にマルコが酔っていたからだった。
「それはヤバイって!」
サッチはオーバーリアクションに言った。
「どこがだよい」
マルコは紫煙を吐き出した。
「だってよ、それお前のプレゼント売ってるよ!」
サッチはビシッと指を指した。
「……」
「考えても見ろ!せっかく喜んでたアクセサリーだろ?普通いつも着けるだ。喫茶店ならそんな厳しくないだろ?」
サッチは黙り込んだマルコに畳み掛けるように言う。
「……」
「金使いが荒いんだな!変な女に引っ掛かりやがって!」
サッチはバシバシとマルコの肩を叩く。
「っテメェ、それ以上……」
マルコはサッチの手を捕まえると低い声で睨み付けた。
「お前……本気なのか?」
サッチはマルコの様子に驚いて目を見開く。
「……悪ィか?」
マルコは地を這うような低い声を出した。
「…………悪くねェよ」
サッチは捕まれた手を弾いた。
「だけどな、お前が彼女をダメにしてる可能性もあるんだぞ」
サッチは真剣な顔をした。
「……俺が?」
マルコは少し驚いた顔をする。
「あァ。最初はまともだったんだろ?なら、お前の金を当てにしてんじゃねェのか?」
サッチはハッキリと声を出す。
「…………」
「本当にその子が大切なら突き放してやれば?」
「…………無理だよい」
サッチの提案にマルコは小さく首を振る。
「なんで?」
「俺が彼女無しじゃ無理だよい。俺の金が目当てならそれで」
「待て待て」
マルコの言葉をサッチが遮る。
「何も本当に別れなくても良い。お前が冷たく別れる言葉を出して、彼女がどう出るかを見るんだ。見込みがあれば自分で立て直るだろうし、ダメなら……それはお前次第だ」
サッチはジッとマルコを睨むように言った。
「……彼女を、試すのかよい」
マルコはため息をついた。
「そうなるな」
サッチは頷いた。
「まァ、やるやらないはお前次第だが、彼女の成長にも役立つだろ。将来店もってオーナーになりたいんだろ?」
サッチはやれやれと声を出す。
「……あァ」
「店を持つって事は大変だぜ?どんなに小さな店でも売れなきゃ火の車だし、売れても上手くやらなきゃ火の車だ」
「……そうだな」
マルコは別れるつもりなどサラサラなかったが、サッチの考えも納得がいった。
帰り道、マルコは酔った体を冷やそうと歩いていた。
「……あれは」
マルコは煙草をくわえなが前の方へ視線を向けた。
それは○○が若い男と親しそうに立ち止まって話をしていた。
○○は笑顔で携帯画面を男に見せる。
男も嬉しそうに笑うと何度も頷いている。
話は盛り上がっているようだ。
そして、男は○○に手を振るとその場を離れた。
○○は会釈をしてその場を離れた。
「…………道でも聞かれたよい」
マルコの発した言葉は誰にも聞かれずに夜空へ上った。
そして、マルコは彼女を試すためにわざと彼女のに酷い言葉で別れを切り出したのだった。
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