08
「痛っ」
痺れた体は動きを拒み、○○の体はあっさり地面に叩き付けられた。
「ねぇ?今何が欲しい?」
男の笑い声に嫌気が差す。
「助けが欲しい」
思っている事が○○の口から出てしまう。
「俺がいるから大丈夫だよ」
男の柔らかい笑顔。
「嘘臭い。キモい消えて」
自白剤のせいで思っている事が口から出る。刺激してはいけないと思えば思うほど○○の口からは男を否定する言葉が出る。
「っ!落ちこぼれ忍者の癖に」
「うるさい。黙れ」
ーーガツッ
「何すんのよ!」
殴られて文句を言う。
「口で言って解らないからだろ?素直に俺だけを好きになれば良い」
「嫌よ!あんたなんか絶対!!!私はっ!!!」
ビリリと服を破かれた。
「お前が上忍に相手にされる訳ねーだろ!」
男は○○の胸を見て興奮したのか叫び出す。
「上忍?離れろ!変態!!」
「イイ気味だな」
「ちょっ!嫌ぁ!!!」
男は○○の上に馬乗りになり、露出した肌に舌を這わせる。
痺れた体を動かすが、男の頭に手を添えるので精一杯だった。
「や!て、てんぞ」
「木遁!!!!」
「っわぁっ!!」
「ぐはっ!!」
突然出て来た木材に○○と男は吹き飛ばされた。
「痛たたた…………あれ?何これ」
○○はいつの間にか出来た木製の牢屋に入れられていた。
痺れる体を何とか動かして座り、状況を確かめようと外を見る。
「何やってるの?」
「て、テンゾウさん」
怒った、それは物凄く怖い顔をしているテンゾウが睨む訳でもなく○○を見ていた。
「な、何で私が檻の中?」
「質問してるのはボクの方」
物凄く怖い顔のテンゾウは静かに言う。
「あ、あの男が無理矢理!」
○○は慌てて男を指差す。
「何だよ!その女が寂しそうにしてたからだろ!」
男は苛々としながら叫んだ。
「その台詞、あんたに言われても苛つくだけだわ」
○○はキッと相手を睨み付けながら叫んだ。
「……」
テンゾウは小さく息を吐いた。
いつもより口が悪い。
そうとう怒っているか、自白剤でも飲まされたか。
テンゾウは素早く状況を判断する。
「じゃあ、あんたこの人要らないならボクが貰ってくよ?」
テンゾウが自分で建てた木製の牢屋を親指で指した。
「何言ってやがる!その女は俺の女だ!」
男はテンゾウを睨み付けた。
「そう?じゃあ男らしくサシで勝負と行きますか」
テンゾウがニヤリと笑った。
「テンゾウさんカッコイイ!」
「はいはい、どうも」
(自白剤ってより酔っ払いだね)
テンゾウがやれやれと返事をする。
「舐めやがって!!」
「舐めてるのはあんたの方だろう」
テンゾウは素早く印を結ぶ、対する男も印を結んだ。
「強い…………」
勝負などあっと言う間についてしまった。
テンゾウが○○の近くまでやってくる。
「まったく、何でちゃんと言わないの」
テンゾウは呆れながら木製の牢屋を解いた。
「間に合ったから良かったもの…………間に合ったよね?」
呆然とテンゾウを見上げる○○は服を破かれ、胸が露出していた。
「う……うう、こ、怖かっ」
ボロボロと泣き始める○○。
「え?ちょ、もう大丈夫だから」
「テンゾウさーん!」
「わ!ちょ、○○ちゃん!」
痺れる体を無理矢理動かして○○はテンゾウに抱き付いた。
「うう、テンゾウさん、カッコ良過ぎ!」
「はいはい、そりゃどうも」
酔っ払いをあやすようにポンポンと背中を叩くテンゾウ。
「ありがとう!」
「あのね、ボク怒ってるんだよ?」
テンゾウは呆れた様に声を出す。
「ご、ごめんなさいー!嫌いにならないでー!」
えーんと泣き崩れる○○を面倒臭そうに抱き上げる。
「だから、嫌いになんてならないよ。違うだろ、ちゃんと言ってくれてれば怖い思いしなかったんだからね」
テンゾウが今言っても無駄だろうと思いながらも説教をする。
「ごめんね。…………テンゾウさん」
「ん?」
やっと落ち着いてきた○○を抱いたまま歩き出すテンゾウ。
「好き」
「は」
「テンゾウさんが、好き」
ーーバサッ
「っ痛あぁぁ!!!」
「ご、ごめん」
思わず手を離してテンゾウは○○を落とした。
「体動かないんだから、お願いしますよ!」
○○はテンゾウを責める様に言う。
「手がね、滑った」
「暗部の癖に?」
○○がクスクスと楽しそうに笑う。
テンゾウが再び○○を抱き上げる。
「悪かったね」
「ふふ、うん!」
テンゾウが照れを隠す様にお面を被った。
「ありがとう」
○○は言うと目を閉じた。
「ああ」
寝息のし始めた○○にテンゾウは笑いかけた。
「で、昨日の事を全く覚えてないと?」
カカシは呆れた様に聞く。
「………………はい」
テンゾウはため息を付きながら頷いた。
「あ!テンゾウさん!カカシ上忍!」
○○が2人を見付けて駆け寄った。
「○○ちゃん、昨日はどうしたの?記憶無いって聞いたけど」
カカシが眠たそうな目をして聞いた。
「そうなんです。誰かに追いかけられて、クナイ投げられて傷付けられてって所までは覚えてるんですけど。気付いたら家の前でテンゾウさんに抱えられてました」
○○は不思議そうに答える。
「じゃあ、その間の事は?」
「全く覚えてないんです!…………テンゾウさん、私何かやらかした?」
○○は不安そうにテンゾウを見上げる。
ーーテンゾウさんが、好き
「………………何も」
昨日の○○がフラッシュバックする。
テンゾウは頭を抱えて項垂れた。
「……や、やっぱり何かやらかしたのね?」
○○はその後もテンゾウに謝り続けていた。
きみとぼくの距離8
きみの気持ちを知ってしまったぼくと、それを知らないきみ
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