04
「はぁ……今月は本当にピンチ……」
お財布の中身を確認。
いくら数えても中身は変わらず。
原因ははっきりしている。
昼御飯のお弁当を2人分用意しているからだ。
別に頼まれた訳でもないが弁当を用意しないと自分の分をテンゾウに取られてしまうからだ。
しかもテンゾウもテンゾウで任務の時は「明日は昼飯いらないから」と言ってくるのだ。
だからそれ以外の日は作る事にしたのだが。
「…………ヤバイ。明後日給料日だから良いけど、明日の分はない」
○○は重い息を吐き出した。
「どうも」
「わぁっ!!」
まだ来ないと踏んでいたテンゾウが突然現れた。
瞬身の術とは厄介なものである。
「どうかした?」
「ううん!はい、お弁当」
「ありがとう」
テンゾウは心なしか嬉しそうに弁当箱を受け取った。
「…………お弁当、そんなに嬉しいの?」
○○は不思議そうにテンゾウを見上げた。
「そりゃね」
テンゾウはにこりと笑った。
(最近は良く笑うなぁ)
最初は無表情に近い顔をしていたテンゾウ。
今は上部だけでなく、表情が変わるのが分かるようになった。
「あ、このごぼうサラダ旨い」
テンゾウが弁当を頬張る。
「あ!それ自信作」
「クルミが香ばしくて好きだな」
「でしょ?でしょ!」
テンゾウの感想に嬉しそうに答える○○。
テンゾウは正直に味に対する評価をして来る。
この前は散々ダメ出しを受けた。
なので、誉められると本当に嬉しく思うのだ。
「あ、あのね」
「ん?」
「明日なんだけど……。お弁当作れないんだ」
○○は申し訳無い様に言う。
「…………何、誰かと食べるの?」
「え?あ、そうそう!」
○○が誤魔化す様に頷いた。
「…………男?」
「へ?あ、みんなで」
「ふーん」
テンゾウのおかしな質問に不思議そうに答える。
「丁度ボクも明日から任務だから」
「え?そうなの?」
「ん」
「どれくらい?」
「1ヶ月」
「1ヶ月……」
○○はお財布の中身にホッとすると同時に、どこか気分が落ち込む様に感じた。
「寂しい?」
「へ?」
見透かされたのかとドキリとした。
「また一人でお昼だね」
テンゾウは無表情に言う。
「…………テンゾウ、さん?」
○○は怪訝そうにテンゾウを見る。
「いつも一人でお昼食べて寂しそうだったもんね」
テンゾウは弁当を頬張る。
「見かねて話しかけちゃったよ」
「………………」
テンゾウの言葉に○○はショックを受けた。
「…………そっか、そうだよね」
○○は泣きそうになるのを堪えて弁当を片付ける。
「すみません。今まで寂しい女に付き合って頂いて」
「…………」
テンゾウは無表情に○○を振り返る。
「もう、ここには来ません。お邪魔しました」
○○は荷物を持つとテンゾウの前から走り去った。
「…………何やってんだ、ボクは」
テンゾウは空を仰いだ。
次の日。
○○は誰ともお昼休憩を過ごしていなかった。
お金も無く、途方に暮れていた。
「別に友達がいない訳じゃないもん。お金が無いんだもん……」
昨日のテンゾウの言葉に○○は傷付いていた。
「……テンゾウさん。なんであんな事言ったのかな?本当に私を馬鹿にしてたのかな」
○○は泣きそうになるのを必死に堪えた。
「あ、あれ?何で泣くんだろう」
○○は堪えていたはずの涙が目から落ちてくるのを止められずにいた。
「…………う、て、テン、ゾウ……さん」
○○はいつの間にかテンゾウを想う様になっていたようだ。
きみとぼくの距離4
ケンカをして離れる
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