02

テンゾウは久し振りに任務もなく木の葉の里をぶらついていた。

暗部として活躍する彼はなかなか里にいる事もない。

久々に戦場から戻るたびに新しい店が出来ていたり、逆に古い店が潰れたりしていた。



「お」

本屋の前を通りかかると、○○の姿が見えた。

本屋に入り、何と無く彼女の隣を陣取ってみた。

○○は熱心に何かの本を読みふけっていて、誰かが隣に立った事にも気付いていないようだ。

(そう言えば、この子は忍なのか?それにしちゃ、百面相だな)

テンゾウが見ていると○○は文章を読みながら一喜一憂しているのだ。

(ぷ、面白いな)

テンゾウは悟られない様に本を見る振りをしながら彼女を観察した。


(お?)

○○は今まで読んでいた本を本棚に戻すと新たに本を探し出した。

(…………届くのか?)

彼女の背がぎりぎりの高い所の本を背伸びをし、手を伸ばして取ろうとしている。

ぷるぷると震える姿が可愛くて(いや、面白くてだ!)見ていた。

「これ?」

テンゾウがスッとその本を取り、彼女に掲げる。

「え?」

○○は驚いてテンゾウを見上げた。

「これじゃないの?欲しかったやつ」

テンゾウがその本をペラリと捲った。どうやら節約術の本らしい。

「あ、それです。すみません」

○○が手を伸ばしてテンゾウの手にある本を取ろうとする。

「あんたこれ必要?」

テンゾウは○○の手を無視する様にページをさらに捲る。

「万年事務中忍だとお金が無くて……って関係ないでしょ」

○○は少しムッとした様に口を開く。

「そうだね。ほら」

テンゾウがぽいと本を投げる。

「あ!ちょっ!商品は大切に扱わなきゃ!」

○○はちゃんと本をキャッチした。

「あ!いた!○○!!」

名前を呼ばれ振り返る○○。

「あ!ちょっと待って!」

○○は友人にそう言うとテンゾウを振り返る。

「ありがとうございました」

○○は丁寧にテンゾウに礼を言う。

「じゃあね、○○ちゃん」

テンゾウは軽く手を振った。

「…………」

○○はテンゾウを不思議そうに見てから本を持ち、レジへと向かった。







「テンゾウじゃないの」

カカシが珍しそうにテンゾウを見た。

「先輩何やってんですか?任務は?」

テンゾウがカカシを振り返る。

「ん?これの発売日だからね」

そう掲げたのは「イチャイチャパラダイス上編」だ。

「…………そうですか」

「お前ね、そんな顔するけど、これの奥深くには忍としての何かが隠されてるんだよ?」

カカシがしれっと言う。
しかしどう見ても18禁のエロ本だ。

「そうですか」

テンゾウは興味なさそうに頷いた。





「あ!見て見て!あれ!カカシさん!」

女の小声が聞こえてそちらをチラリと見ると○○とその友人がいた。
声を出したのは友人の方らしい。

「あ、本当だ。って、そろそろ行こうよ!」

○○は友人を引っ張って本屋から出て行った。

「やっぱり知り合い?」

「…………さぁ」

カカシの質問にテンゾウはそう答えた。





きみとぼくの距離2


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