22

「テンゾウ?どこ行くの?」

真面目な顔で早足で歩くヤマトにカカシが思わず声をかけた。

ヤマトは足を止めて体ごとカカシに向き直った。

「ヤマトです。ご意見番方に用事があって行ったら5代目様の所にいるようなので、これから行くところです」

それだけを言うとヤマトはまた素早く歩き出した。

「ふーん」

カカシはヤマトの背を見送った。

「それにしちゃ、誰かを殺しそうじゃない?…………役者も不足してるね」

カカシはポツリと呟くとヤマトとは逆の方へと歩き出した。








ーーカチャン


「いらっしゃいませー!って、カカシさん!サボりですか?」

ドアが鳴る音に反応して○○は振り返るとカカシが立っていた。

開店して間もない時間。客はまだ誰もいなかった。

「どーも」

カカシは眠そうな顔で片手を挙げた。

「コーヒーでもいれます?」

○○が席を進めるとカカシは手でそれを制した。

「あんた、ヤマトとはどうなったの?」

カカシは近くの壁に半身で寄りかかる。

「……そ、それはですね」

○○は昨晩の事を思い出して恥ずかしそうにテーブルを拭いた。

「あいつ、ご意見番に会いに行くって」

「…………え?」

カカシの言葉に○○は驚いてカカシを振り返る。

「そんな!だって!!」

○○は焦る。もし、ご意見番の2人に寄りを戻したのがバレたら今度こそテンゾウと会えなくなる。と言う事が頭を過った。

「急がないと手遅れになる」

カカシの言葉に○○は拳に力を込めた。










ーーコンコン


『誰だ』

ドアの向こうからくぐもった声がした。

「ヤマトです」

ヤマトは静かに告げる。

『はいれ』

「失礼します」

ヤマトはドアをくぐると5代目火影である綱手と目があった。

「どうした?」

綱手は面倒臭そうに持っていた書類をポイっと机の上に投げた。

「今日はご意見番方にお話が」

ヤマトは綱手に一礼するとソファーに座っていたご意見番に体を向けた。

「……なんだ?」

ホムラが顔だけを動かしてヤマトを見上げた。

「○○と言う元忍の事です」

ヤマトは静かに声を出した。

「○○……?知らないな」

ホムラは表情を崩さずに言う。

「そうですか。なら、思い出させて差し上げます。今から3年ほど前あなた方がボクと別れさせた女性です」

ヤマトは静かな声だが、若干の殺気が混じっていた。

「…………知らないな」

ホムラは何食わぬ顔でヤマトを見上げた。

「そうですか。では、ボクと彼女が付き合おうが結婚しようが良いですね」

ヤマトは言葉を重ねた。

「結婚となると話は別だ。家柄や人間性も見なくては」

ホムラは口を開いた。

「元と言うくらいですから、今は忍ですらないのですね?」

コハルも口を挟む。

「はい。今は料理人として店を持っています」

ヤマトは頷いた。

「あァ、○○か。あの店には時々行く。お前たち付き合ってたのか?」

話を聞いていただけの綱手が興味を持ったのか口を挟んだ。

「はい」

ヤマトは綱手に頷いた。

「なら、尚更だ。結婚は認められない」

ホムラは厳しい口調で口を開いた。



ーーコンコン


ヤマトが口を開きかけた時にノック音が聞こえた。

「誰だ」

一瞬静まり返った部屋で綱手がドアに向けて聞いた。

『カカシです』

「すまない、取り込み中だ後にしろ」

綱手はヤマト達の展開がどうなるか気になりカカシに言う。

『○○もいます』

「…………入れ」

内心「面白くなってきた!」と思いながらも面倒臭そうに綱手は口を開く。

『失礼します』

ドアが開くとカカシが○○を引っ張り入れた。

小さく驚くヤマトに、好奇の目を向ける綱手とシズネ、眉間にシワを寄せるご意見番の2人の目が○○に向いた。

「……」

「結婚は認められない」

○○が何かを言う前に畳み掛ける様にホムラが先手を打つ。

「それは何故です」

ヤマトが間髪を入れずに聞き返す。

「……」

「ボクが木遁が使えるからですか?」

ヤマトはじっとホムラを見る。

「……そうだ」

ホムラは大きく息をついた。

「初代様がお使いになられた木遁を使えるのはヤマト、お前だけだ。お前の子は里の宝となる。その宝を、その血を薄める事は出来ない」

ホムラは落ち着いた声ではあったが、早口で捲し立てた。

「それでもボクは彼女以外の子を欲しいとは思わない」

「っ?!テンゾウさん?!」

○○は驚いてヤマトを見上げる。
昨晩とは言っている事が違った。

「一晩、君の寝顔を見ながら真剣に考えた。やっぱり君以外の女性を愛す事なんて出来ない」

ヤマトは○○の目を見ながらきっぱりと言い切った。

「っ!!!……でも、それだと」

○○は嬉しさで胸が張り裂けそうになった。しかし、すぐに不安が襲う。

「そうか、任務は失敗の様だな」

ホムラは怒りの滲んだ顔で○○を見た。

「っ!!」

○○は恐怖に顔が歪む。
ヤマトが庇うように○○を背に隠した。

「ボク等の間にどんな子が産まれようと、火の意思は受け継がれる」

ヤマトは珍しく感情的に言い切った。

「っ!!!」

ホムラは顔を赤くして立ち上がる。

(っ、もうテンゾウさんと一緒にいる事も許されない、いや、私が木葉にいる事も出来ないかも)

○○は次に起こるであろう最悪な場面を想像していた。










きみとぼくの距離22









混乱する料理人と覚悟を決めた木遁使い

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