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「テンゾウ?どこ行くの?」
真面目な顔で早足で歩くヤマトにカカシが思わず声をかけた。
ヤマトは足を止めて体ごとカカシに向き直った。
「ヤマトです。ご意見番方に用事があって行ったら5代目様の所にいるようなので、これから行くところです」
それだけを言うとヤマトはまた素早く歩き出した。
「ふーん」
カカシはヤマトの背を見送った。
「それにしちゃ、誰かを殺しそうじゃない?…………役者も不足してるね」
カカシはポツリと呟くとヤマトとは逆の方へと歩き出した。
ーーカチャン
「いらっしゃいませー!って、カカシさん!サボりですか?」
ドアが鳴る音に反応して○○は振り返るとカカシが立っていた。
開店して間もない時間。客はまだ誰もいなかった。
「どーも」
カカシは眠そうな顔で片手を挙げた。
「コーヒーでもいれます?」
○○が席を進めるとカカシは手でそれを制した。
「あんた、ヤマトとはどうなったの?」
カカシは近くの壁に半身で寄りかかる。
「……そ、それはですね」
○○は昨晩の事を思い出して恥ずかしそうにテーブルを拭いた。
「あいつ、ご意見番に会いに行くって」
「…………え?」
カカシの言葉に○○は驚いてカカシを振り返る。
「そんな!だって!!」
○○は焦る。もし、ご意見番の2人に寄りを戻したのがバレたら今度こそテンゾウと会えなくなる。と言う事が頭を過った。
「急がないと手遅れになる」
カカシの言葉に○○は拳に力を込めた。
ーーコンコン
『誰だ』
ドアの向こうからくぐもった声がした。
「ヤマトです」
ヤマトは静かに告げる。
『はいれ』
「失礼します」
ヤマトはドアをくぐると5代目火影である綱手と目があった。
「どうした?」
綱手は面倒臭そうに持っていた書類をポイっと机の上に投げた。
「今日はご意見番方にお話が」
ヤマトは綱手に一礼するとソファーに座っていたご意見番に体を向けた。
「……なんだ?」
ホムラが顔だけを動かしてヤマトを見上げた。
「○○と言う元忍の事です」
ヤマトは静かに声を出した。
「○○……?知らないな」
ホムラは表情を崩さずに言う。
「そうですか。なら、思い出させて差し上げます。今から3年ほど前あなた方がボクと別れさせた女性です」
ヤマトは静かな声だが、若干の殺気が混じっていた。
「…………知らないな」
ホムラは何食わぬ顔でヤマトを見上げた。
「そうですか。では、ボクと彼女が付き合おうが結婚しようが良いですね」
ヤマトは言葉を重ねた。
「結婚となると話は別だ。家柄や人間性も見なくては」
ホムラは口を開いた。
「元と言うくらいですから、今は忍ですらないのですね?」
コハルも口を挟む。
「はい。今は料理人として店を持っています」
ヤマトは頷いた。
「あァ、○○か。あの店には時々行く。お前たち付き合ってたのか?」
話を聞いていただけの綱手が興味を持ったのか口を挟んだ。
「はい」
ヤマトは綱手に頷いた。
「なら、尚更だ。結婚は認められない」
ホムラは厳しい口調で口を開いた。
ーーコンコン
ヤマトが口を開きかけた時にノック音が聞こえた。
「誰だ」
一瞬静まり返った部屋で綱手がドアに向けて聞いた。
『カカシです』
「すまない、取り込み中だ後にしろ」
綱手はヤマト達の展開がどうなるか気になりカカシに言う。
『○○もいます』
「…………入れ」
内心「面白くなってきた!」と思いながらも面倒臭そうに綱手は口を開く。
『失礼します』
ドアが開くとカカシが○○を引っ張り入れた。
小さく驚くヤマトに、好奇の目を向ける綱手とシズネ、眉間にシワを寄せるご意見番の2人の目が○○に向いた。
「……」
「結婚は認められない」
○○が何かを言う前に畳み掛ける様にホムラが先手を打つ。
「それは何故です」
ヤマトが間髪を入れずに聞き返す。
「……」
「ボクが木遁が使えるからですか?」
ヤマトはじっとホムラを見る。
「……そうだ」
ホムラは大きく息をついた。
「初代様がお使いになられた木遁を使えるのはヤマト、お前だけだ。お前の子は里の宝となる。その宝を、その血を薄める事は出来ない」
ホムラは落ち着いた声ではあったが、早口で捲し立てた。
「それでもボクは彼女以外の子を欲しいとは思わない」
「っ?!テンゾウさん?!」
○○は驚いてヤマトを見上げる。
昨晩とは言っている事が違った。
「一晩、君の寝顔を見ながら真剣に考えた。やっぱり君以外の女性を愛す事なんて出来ない」
ヤマトは○○の目を見ながらきっぱりと言い切った。
「っ!!!……でも、それだと」
○○は嬉しさで胸が張り裂けそうになった。しかし、すぐに不安が襲う。
「そうか、任務は失敗の様だな」
ホムラは怒りの滲んだ顔で○○を見た。
「っ!!」
○○は恐怖に顔が歪む。
ヤマトが庇うように○○を背に隠した。
「ボク等の間にどんな子が産まれようと、火の意思は受け継がれる」
ヤマトは珍しく感情的に言い切った。
「っ!!!」
ホムラは顔を赤くして立ち上がる。
(っ、もうテンゾウさんと一緒にいる事も許されない、いや、私が木葉にいる事も出来ないかも)
○○は次に起こるであろう最悪な場面を想像していた。
きみとぼくの距離22
混乱する料理人と覚悟を決めた木遁使い
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