21
瞬身の術を使い、ヤマトは○○を抱き抱えたまま自分の部屋へとやって来た。
「入って」
ヤマトが鍵を開けてドアを開けた。
「お、お邪魔します……」
ヤマトの圧力に仕方なくドアをくぐる。
久し振りに入るそこは、生活感はあまりなかった。
「座って」
「いや、でも」
「ここから出られなくしても良いんだよ」
ヤマトは言いながら無表情で印を結ぶ。
「し、失礼します……」
○○は怖々とテーブルについた。
「……」
「……」
「……」
「……」
2人は無言のまま座っていた。
時刻は夜。周りから聞こえる声もあまりなかった。
「……でさ」
「はっ、はい?」
突然のヤマトの声に○○の肩はびくりと震えた。
「僕は本当にショックだった訳で」
「……はい」と○○は小さく頷いた。
「あれから何人か女の人と付き合おうとした事もあったんだけど、無理。また裏切られるって考えるとさ。暗部の仕事増やして結局ぼくは忍でしかなかったんだ」
「……」
○○はキリキリと痛む胸を押さえながらヤマトの話を聞く。
「何で僕に相談してくれなかったの?」
ヤマトは無表情のまま○○を見据えた。
「…………。てん、ヤマトさんが里にとっては特に特別で、初代様の遺伝子を受け継いでいて。私の血でせっかくの子供の血を薄めると言う事に納得したから、です」
○○は辛そうな顔をしながらもしっかりと声を出し続けた。
「血を……ね」
ヤマトは大きくため息をついた。
「僕さ、君を恨んだよ」
「っ!」
ヤマトの言葉に自分の服をぎゅっと握った。
「でもさ、いざこうして話しちゃうとダメだね。愛しさの方が勝っちゃう」
ヤマトの顔は驚くほどに穏やかだった。
「ダメです!私はヤマトさんを二度と愛せないです」
○○は泣きながら頭を激しく振る。
「それでも君は僕が忘れられない。僕も君が忘れられない」
「っ!!…………」
ヤマトの言葉に○○は項垂れた。
「私が悪い事は分かってるの。あのお店の借金とヤマトさんを天秤にかけたの。だから、私の事は忘れて」
○○の声はどんどん小さくなる。
「無理だ」
「無理じゃない!」
「じゃあさ」
ヤマトは冷たく声を出した。
「僕ともう一度付き合いなよ。その代わり僕は任務の為に他の女を抱く」
「……」
「血が薄くなるって言うなら向こうが用意した女に子供を産んで貰う。でも」
ヤマトは○○を腕の中に閉じ込めた。
「僕はそうまでしても○○ちゃんと一緒にいたい」
「っ、や、ヤマト、さん」
「愛し合った事が罪なら、どちらか一人が犠牲になる事はないよ。○○ちゃんに取っては辛い事だって解るけど」
ヤマトは強く○○を抱き締めた。
「いい」
「ん?」
ヤマトは抱く腕の力を弱めて○○の顔を見えるようにした。
「わ、私もそれでも良いからテンゾウさんと一緒に、いたい」
○○は辛そうに顔を歪めながら涙を流した。
「……○○ちゃん」
ヤマトは○○の流れ落ちる涙を親指の腹で拭う。
「凄い、凄く後悔した!テンゾウさんの側にいられないのがこんなに苦しいとは思わなかった!テンゾウが他の女の人と……それでも私は!」
ヤマトは○○の唇に自分のそれを重ねた。
「ごめん」
ヤマトは謝るともう一度○○を抱き締めた。
きみとぼくの距離21
共犯者
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