01
○○は中忍である。
しかし、その実力はドベのドベ。
アカデミーの卒業試験には3回落ち、下忍になってからの試験にも落ちた。
普通そこで辞める人が殆どなのだが、○○はどうしても忍になりたかったので、頑張ってもう一度アカデミー生からやり直した。
そこから下忍として任務をこなしながら、中忍にもなかなかなれず、18歳の時ようやく中忍になれたのだ。
それからまともな、命のやり取りもないまま○○は書類の管理を任されていた。
なかなか忍としての才能には恵まれなかったが、持ち前の根性と目標達成への執念、そして笑顔のお陰で任務の受付業と書類管理をして暮らしていた。
「でも、これって忍じゃないよねぇ……」
○○は大きくため息をついた。
医療忍術も、色仕掛けも才能を発揮出来ず、くの一としての任務もなかった。
「あーあ、こんなはずじゃ無かったのになぁ」
○○は天を仰いだ。
十数年前に起こった九尾による木の葉の里襲撃事件で一般人であった□□一家は○○を残して運悪く皆死んでしまったのだ。
そんな中○○の命を救ったのが忍の一人で、単純だがそれから忍を目指したのだ。
□□一族からはもちろん忍を出した事もない。
□□は料理人一族として暮らしいていたのだ。
「あ……れ?」
人気の無い道。木々がざわめく中、誰かが倒れていた。
「え?あ!だ、大丈夫ですか?」
(っ!お面、暗部だ)
動物の面をした暗部独特の格好をした男が道から隠れるように倒れていた。
その体は血まみれであった。
○○はその男の元に座り込んだ。
「あの、大丈……」
「全部返り血だから」
差し出そうとした○○の手を自分の手と声で制した。
「す、すみません!余計な事を」
○○は慌てて立ち上がる。
「いや、疲れて休んでただけ」
落ち着き過ぎる男の声。
「あの、良かったらこれ」
「なに?」
「パンです」
「なんで?」
「……に、任務お疲れ様でした。と言う事で」
「……」
○○は手に持っていた紙袋を差し出す。
「く、クルミパンです」
「……」
「いらなかったら捨ててください」
引っ込みがつかなくなった○○は紙袋を男の傍らに置くと、くるりと踵を返した。
○○はそのまま一度も振り向かずにその場を離れた。
「変な女」
男はぽつりと呟いた。
紙袋に手を伸ばし、中からまだ温かいパンを取り出した。
「…………うまっ」
面を少しずらしてそれを頬張った。
石橋を叩いて渡るのが好きな彼にとってはとても驚くべき行動だった。
「テンゾウ」
「あ、先輩」
テンゾウと呼ばれた暗部の男に同じ暗部の男が呼び掛ける。
「遅かったじゃない」
「えぇ、疲れて少し休んでました」
「ふーん」
テンゾウは着替えをしようとパンの入った紙袋を置く。
「どうしたの?それ。パン?」
クンクンと臭いを嗅ぐようなしぐさをする。
「さすが鼻が利きますね」
テンゾウは小さく笑った。
「うまっ」
「ちょっ!勝手に食べないで下さいよ!」
「ま!気にしない!」
「気にします!」
「おーい!カカシー、テンゾウー!お前らも行くだろ?」
テンゾウとカカシが2人で言い合ってると仲間が呼びに来た。
これから飲み会へ行くようだ。
店へ行く途中、テンゾウは先程パンを渡してきた女ーー○○を見付けた。
しかし、テンゾウに気付く事なく隣を通り過ぎた。
「……そりゃそうだ」
(面をしてたんだ。判る訳ない)
テンゾウは少し苛立ちを覚えた。
「…………知り合い?」
カカシが○○を振り返る。
「……いえ」
テンゾウは小さくそう答えた。
きみとぼくの距離1
顔見知り以下の同じ里の人間
[ 1/24 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]