18
「ご意見番様達がお呼びです」
そう言われ、○○は彼等の部屋に来ていた。
「お前が□□○○か?」
「は、はい」
ご意見番事、水戸門ホムラとうたたねコハルを前にして○○は緊張気味に頷いた。
「何故呼ばれたかわかるか?」
ホムラが重々しく声を出した。
「……申し訳ありませんが全く……」
○○は小さく呟いた。
「お前がテンゾウと付き合っていると聞いてな」
コハルが口を開いた。
「どう言うつもりで付き合っておるんだ?」
「どう、と言いますと?」
コハルは深く椅子に座り直した。
「結婚を考えているのかと言うている」
「け?!いえ!め、滅相もありません!!」
○○は顔を赤くして慌てて首を左右に振った。
「ならばすぐに別れるといい」
「……え……」
何を言われたのか解らず、○○は顔を歪めた。
「テンゾウはあれで純粋なところがある。先程の事も、おぬしの事が大切でテンゾウが怪我をしたのだろう?傷は浅い方が治りやすい」
「……」
「簡単に言うとお前には忍としての才能がない」
ホムラが口を開いた。
「お前がそれなりに使えればテンゾウも暗部の方も傷付かずにすんでたのではないか?」
「…………」
○○の心臓が嫌な速さで脈打つ。
「悪いが、大切な忍をお前ごとき者を守るために失いかけた事は大事だ」
「…………」
「そして、テンゾウは初代様から受け継いだ木遁を使う事が出来る唯一の忍。血筋もないお前の血で子を薄める事は避けたい」
「…………」
「わかるな。これは任務だ。里を思えばこそだ。テンゾウと別れる事だ」
「…………っ」
○○は声が出なかった。
「ただ別れるだけでは、テンゾウが諦めんだろう。こっぴどく振るが良い」
「成功報酬は用意しよう。確か、借金があったな」
「っ!!!」
「それを無くしてやろう」
「………………1週間」
「ん?」
「……1週間ください」
○○は頭を下げたままだった。
「あまり長引くと辛くなるぞ」
「1週間でいいです」
○○はがばりと頭を上げた。
「…………わかった」
その、強い意思を宿した目にご意見番2人は頷いた。
「ありがとう、ございます」
***
○○はテンゾウと別れた後、町への道を走っていた。
「あっ!!」
ばさりと石に躓いて転んだ。
「こ、これで、借金が無くなったじゃない!」
○○は声を絞り出した。
「男なんていっぱいいるじゃない!!」
○○は手を強く握った。
「うう…………て、てんぞうさん」
○○はとうとう耐えきれずに泣き出した。
そのまま涙を止められずに泣き続けた。
「そうか、ご苦労だった」
泣きらはしたままの顔でご意見番2人の前にやってきた。
涙は止まっていたが、酷く腫れていた。
「はい。あの、お願いがあります」
○○は呟くように声を出した。
「なんだ?借金の手はずは調っているぞ」
ホムラが言う。
「ありがとうございます。私、忍を止めます」
「止めてどうする?」
「はい、両親が残してくれたその店で働きます」
「……そうか。それが良いな」
コハルが頷いた。
「はい。それでは、失礼します」
○○は小さく笑った。
きみとぼくの距離18
同じ里の一般人と忍
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