17
あの温泉以来○○は意図的にテンゾウを避けていた。
会いに行っても留守で、他で会っても用があると避けられてしまう。
「て、テンゾウさん!」
「喋んないで、舌噛むよ」
「っ!!!」
突然現れたテンゾウは○○を抱き上げるとそのまま跳んだ。
まるで人拐いの様な見事な手際であった。
人気の無い場所まで連れてくるとテンゾウはようやく○○を下ろした。
「どうしたの?」
○○はテンゾウの顔を見れずにうつ向いた。
「それはボクの台詞なんだけど?」
テンゾウは腕組みをして○○を無表情に見下ろした。
「…………別に何とも」
○○は首を左右に振った。
「何ともないのにボクを避けるの?」
「…………」
「○○ちゃん、ボクらはお互い忍だ。だから、言えない事もあるだろう。それでも君がボクを避ける理由って何?」
テンゾウが無表情のまま聞く。
「…………」
「○○ちゃん、黙りは止めてくれないかな?」
テンゾウは静かなまま言う。
「…………ぷっ!」
「…………」
「あはははははは!!!!」
テンゾウは急に笑い出した○○に目を細めた。
「本当に面白いね、テンゾウさんって!」
お腹を抱えて○○は笑った。
「本当に私が貴方と付き合ってたと思った?」
「…………どういう事?」
クスリと妖艶に笑う○○にテンゾウは無表情に聞き返す。
「みんなでさ、賭けたの。誰が一番上の忍を捕まえられるかって」
クスクスと笑った顔は今までに見た事の無い笑顔だった。
「狙い目はアスマ上忍とかカカシ上忍とか。そしたら、何と!!あの『木遁のテンゾウ』が引っ掛かったじゃない!」
○○は大袈裟に驚いた。
「賭けは私の勝ち!ありがとうね?テンゾウさん?」
○○は正面からテンゾウを見た。
「……………………」
テンゾウは無表情のまま○○を見返した。
「あ?さすがのテンゾウさんでもショックかしら?ごめんね?」
わざと逆撫でするように○○が言う。
「っん」
テンゾウが無理矢理○○の手を掴むと乱暴に引き寄せて口付けた。
「っ、んはぁ」
「これも、全部嘘だと?」
テンゾウが地を這う様な低い声を出した。
「えぇ、あまりキスは上手くないよね?」
至近距離から勇名忍の睨むような目付きにも負けずに○○が言う。
「…………」
テンゾウは乱暴に○○を離した。
「悪いけど、行ってくれ。このまま君を見てたらボクは君をどうするかわからない……」
テンゾウは目線を下げて拳を握っていた。
その手から血が滲み出ていた。
「…………じゃあ、ね」
○○はそのまま振り返らずに歩き出した。
「…………クソッ!!!」
テンゾウは思いきり側にあった木を殴った。
きみとぼくの距離17
裏切られ、別れる
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