15

「じゃあ、行ってくるからね」

テンゾウが任務に出掛ける準備を整えると、○○に向かって言った。

「うん!気を付けてね」

○○は笑顔で言うと口付けをねだる。

テンゾウはそれに答えるように触れるだけの口付けをした。







基本の4マンセルの任務。

全てが順調で、何事も起きず、危険な任務は無事に終了した。







様に見えたのだ。








「っ!!木遁!!!」

仲間の一人が死に際の敵に忍術を掛けられた。

いち早く気付いたテンゾウが素早く木遁忍術を繰り出すが、一歩遅かった。

「っぐあっ!!!」

仲間が苦しそうに吐いた。

「大丈夫ですか?」

テンゾウが様子を見る。
忍術をかけた相手は死んでしまっているので、何がかけられたのかは解らない。


厄介な事になってしまったのだ。


「お、お前の」

「話せるんですね?」

テンゾウが素早く仲間を観察する。

「お前の大切な人間は誰だ?」

「え?」

仲間の問いにとっさに○○の事を思い浮かべてしまったテンゾウ。

「そいつか」

「っ!!木遁!」

にたりと笑った顔は既に仲間のそれではなかった。

仲間を木でぐるぐる巻きにした。
すると、仲間の顔は元に戻って落ち着いた顔で眠りについた。

「とにかく帰ろう。医療班に早く見せなくては」

テンゾウの言葉に残る2人も頷いた。







忍術をかけられた仲間は全てが正常値で、忍術をかけられた事すら覚えていなかった。

本当にかけられたのかも解らず、特に何も施されないまま家に返された。








「お疲れ様です。交代ですよ」

夜勤のイルカがにこりと笑った。

「お疲れ様です!やっと、今日も終わりました!」

○○は嬉しそうに笑った。

「あ、今日はたい焼き半額の日でしたよ。俺も買いました」

ほらと見せてきた袋の中にほかほかのたい焼きが入っていた。

「わぁ!私も買って帰ります!それでは、先に失礼します!」

「はい、気を付けて」

○○は良い情報を貰ったとるんるんと帰り支度をした。








「あんことカスタード2つずつ!」

「はいよ」

○○はたい焼きを受け取ると帰路についた。


「あ!美味しい!」

我慢できずにぱくりとたい焼きを食べる。
口の中に広がる甘さは疲れを癒してくれた。

「みつけた」

そんな声がしたと思い振り返る。

(暗部?テンゾウさんじゃない)

○○は不思議そうに木の葉の里の暗部を見る。

「えっと、こんばんは。何かご用ですか?」

○○は警戒心無く聞いた。

「っ!!」

「苦しいかい?」

一気に距離を縮めると暗部は○○の首を片手で絞めた。

ぱさりとたい焼きの入った紙袋が落ちた。

(何なの?息が……)

持てる力の全てで相手を蹴るが、力の差は歴然でびくともしない。

「死ぬと良い。そうすれば俺は自由だ」

首を絞める手が両手になる。
お面で顔は見えないが、楽しそうな声だ。

(……ッダメ。もう、意識が……)

○○の手に力が入らなくなり、だらりと下がった。

「木遁!!!」

「くっ!」

突然現れた木に暗部は手を離した。

「っげほげほげほ!!!」

急に吸い込んだ酸素量に○○は思わず咳き込んだ。

「大丈夫?!」

テンゾウが右掌を相手に見せながら、ちらりと○○を見た。

「だ、いじょ、」

喉元を締め付けられていたので、上手く声が出なかった。

「遅れてごめん。ずっと監視してたんだけどちょっと目を離して、一歩遅れた」

テンゾウは暗部を睨み付ける様に言う。

○○は首を左右に振った。

「邪魔をしないでくれ。その子を殺れば俺は解放される」

暗部はゆらりと○○を向く。

「解放?」

テンゾウが聞き返す。

「そうだ。お前の大切なものを殺せば忍術は解ける」

暗部はクナイを握った。

「……他に方法は無いのか?」

テンゾウは油断無く暗部を見る。

「無い」

きっぱりとした声を出し、暗部が動く。
真っ直ぐに○○へ向かう。


ーーキーン


クナイ同士がぶつかる音が響く。

「悪いけど、簡単にはさせないよ」

テンゾウは応戦した。

「○○ちゃん、ここから離れて!」

「っはい!」

テンゾウに言われ、素直に従った。




テンゾウと暗部が戦う音を聞きながらも急いで離れた。
○○の様な万年事務中忍は暗部同士の戦いでは邪魔にしかならない。

「はぁ、はぁ、はぁ」

息が切れそうになりながらも木々の上を飛んだ。

「キャッ!!」

飛んできたクナイが○○を木から突き落とした。

「もう、逃げないのかい?」

「っ!!」

暗部が感情の無い声で言うとクナイを上げた。

「悪く思わないでくれ」

降り下ろされるクナイに○○はギュッと目を閉じた。



「…………」

衝撃がない事に不思議に思いながら、○○は恐る恐る目を開けた。

「っ!テンゾウさん!」

血だらけのテンゾウが暗部を突き刺していた。

「○○ちゃん、急いで誰かを」

「わ、解った!」

どさりと倒れた血塗れの2人を残し、○○は駆け出した。









「2人とも命に別状はありません」

医療忍者が落ち着いた声を出した。

「良かった」

○○は思わずその場に座り込んだ。

「暗部の方もテンゾウさんの機転で術も解かれました」

「そう、ですか」

「それと」

ホッとしたのも束の間、医療忍者は言いにくそうに言葉を切る。

「ご意見番様達がお呼びです」

「私を、ですか?」

「はい」

医療忍者は失礼しますとその場を離れた。






きみとぼくの距離15




守ったボクと守られたきみ

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