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「じゃあ、行ってくるからね」
テンゾウが任務に出掛ける準備を整えると、○○に向かって言った。
「うん!気を付けてね」
○○は笑顔で言うと口付けをねだる。
テンゾウはそれに答えるように触れるだけの口付けをした。
基本の4マンセルの任務。
全てが順調で、何事も起きず、危険な任務は無事に終了した。
様に見えたのだ。
「っ!!木遁!!!」
仲間の一人が死に際の敵に忍術を掛けられた。
いち早く気付いたテンゾウが素早く木遁忍術を繰り出すが、一歩遅かった。
「っぐあっ!!!」
仲間が苦しそうに吐いた。
「大丈夫ですか?」
テンゾウが様子を見る。
忍術をかけた相手は死んでしまっているので、何がかけられたのかは解らない。
厄介な事になってしまったのだ。
「お、お前の」
「話せるんですね?」
テンゾウが素早く仲間を観察する。
「お前の大切な人間は誰だ?」
「え?」
仲間の問いにとっさに○○の事を思い浮かべてしまったテンゾウ。
「そいつか」
「っ!!木遁!」
にたりと笑った顔は既に仲間のそれではなかった。
仲間を木でぐるぐる巻きにした。
すると、仲間の顔は元に戻って落ち着いた顔で眠りについた。
「とにかく帰ろう。医療班に早く見せなくては」
テンゾウの言葉に残る2人も頷いた。
忍術をかけられた仲間は全てが正常値で、忍術をかけられた事すら覚えていなかった。
本当にかけられたのかも解らず、特に何も施されないまま家に返された。
「お疲れ様です。交代ですよ」
夜勤のイルカがにこりと笑った。
「お疲れ様です!やっと、今日も終わりました!」
○○は嬉しそうに笑った。
「あ、今日はたい焼き半額の日でしたよ。俺も買いました」
ほらと見せてきた袋の中にほかほかのたい焼きが入っていた。
「わぁ!私も買って帰ります!それでは、先に失礼します!」
「はい、気を付けて」
○○は良い情報を貰ったとるんるんと帰り支度をした。
「あんことカスタード2つずつ!」
「はいよ」
○○はたい焼きを受け取ると帰路についた。
「あ!美味しい!」
我慢できずにぱくりとたい焼きを食べる。
口の中に広がる甘さは疲れを癒してくれた。
「みつけた」
そんな声がしたと思い振り返る。
(暗部?テンゾウさんじゃない)
○○は不思議そうに木の葉の里の暗部を見る。
「えっと、こんばんは。何かご用ですか?」
○○は警戒心無く聞いた。
「っ!!」
「苦しいかい?」
一気に距離を縮めると暗部は○○の首を片手で絞めた。
ぱさりとたい焼きの入った紙袋が落ちた。
(何なの?息が……)
持てる力の全てで相手を蹴るが、力の差は歴然でびくともしない。
「死ぬと良い。そうすれば俺は自由だ」
首を絞める手が両手になる。
お面で顔は見えないが、楽しそうな声だ。
(……ッダメ。もう、意識が……)
○○の手に力が入らなくなり、だらりと下がった。
「木遁!!!」
「くっ!」
突然現れた木に暗部は手を離した。
「っげほげほげほ!!!」
急に吸い込んだ酸素量に○○は思わず咳き込んだ。
「大丈夫?!」
テンゾウが右掌を相手に見せながら、ちらりと○○を見た。
「だ、いじょ、」
喉元を締め付けられていたので、上手く声が出なかった。
「遅れてごめん。ずっと監視してたんだけどちょっと目を離して、一歩遅れた」
テンゾウは暗部を睨み付ける様に言う。
○○は首を左右に振った。
「邪魔をしないでくれ。その子を殺れば俺は解放される」
暗部はゆらりと○○を向く。
「解放?」
テンゾウが聞き返す。
「そうだ。お前の大切なものを殺せば忍術は解ける」
暗部はクナイを握った。
「……他に方法は無いのか?」
テンゾウは油断無く暗部を見る。
「無い」
きっぱりとした声を出し、暗部が動く。
真っ直ぐに○○へ向かう。
ーーキーン
クナイ同士がぶつかる音が響く。
「悪いけど、簡単にはさせないよ」
テンゾウは応戦した。
「○○ちゃん、ここから離れて!」
「っはい!」
テンゾウに言われ、素直に従った。
テンゾウと暗部が戦う音を聞きながらも急いで離れた。
○○の様な万年事務中忍は暗部同士の戦いでは邪魔にしかならない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息が切れそうになりながらも木々の上を飛んだ。
「キャッ!!」
飛んできたクナイが○○を木から突き落とした。
「もう、逃げないのかい?」
「っ!!」
暗部が感情の無い声で言うとクナイを上げた。
「悪く思わないでくれ」
降り下ろされるクナイに○○はギュッと目を閉じた。
「…………」
衝撃がない事に不思議に思いながら、○○は恐る恐る目を開けた。
「っ!テンゾウさん!」
血だらけのテンゾウが暗部を突き刺していた。
「○○ちゃん、急いで誰かを」
「わ、解った!」
どさりと倒れた血塗れの2人を残し、○○は駆け出した。
「2人とも命に別状はありません」
医療忍者が落ち着いた声を出した。
「良かった」
○○は思わずその場に座り込んだ。
「暗部の方もテンゾウさんの機転で術も解かれました」
「そう、ですか」
「それと」
ホッとしたのも束の間、医療忍者は言いにくそうに言葉を切る。
「ご意見番様達がお呼びです」
「私を、ですか?」
「はい」
医療忍者は失礼しますとその場を離れた。
きみとぼくの距離15
守ったボクと守られたきみ
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