12
「見付け次第殺るぞ!」
その言葉にぞくりと嫌な物が○○の背中を這った。
ナルトが禁術の書かれた巻物を取って3代目火影から逃げたと非常召集がかかり来てみれば、そう言って里の忍達が声を上げたのだ。
「っ早く見付けなくちゃ!!」
○○は急いだ。
(もし、他の人に先に会ったらナルト君は!)
震える手を何とか誤魔化し、○○の横で楽しそうに弁当を頬張る少年の笑顔を思い出した。
「っはぁ、はぁ、はぁ」
走り過ぎて喉の奥が乾いて痛かった。
どの位探したか、ナルトは見付からない。
「……森の方かな」
○○は行き先を変えた。
時間にすればもうずいぶん経っていた。
「こっち?」
人の気配を感じて懸命に走った。
「あ!ナルト君!イルカさんも!」
○○はホッとした様に2人に近付くか、そばにイズミが倒れていた。
何やら大人数にリンチにあったようだ。
「へ?あ!だ、大変?!大丈夫?2人とも!」
○○がナルトとイルカに話しかける。
「○○姉ちゃん!大丈夫だってばよ!」
ナルトは何やら晴れやかな顔をしていた。
「あ、額あて」
○○はそれに気付いた。
「あぁ!今イルカ先生に貰ったんだってばよ!俺さ!俺さ!アカデミー卒業だってばよ!」
ナルトは嬉しそうに額あてを撫でた。
「ん??えーっと、おめでとう!」
○○は訳が解らず取り合えず祝福をした。
「とにかく一度戻りましょう。話はそれから」
イルカが言いながら辛そうに立ち上がる。
「え?イルカさん!背中」
「あぁ、大丈夫ですよ」
「肩、お貸しします」
○○が心配そうにイルカに肩を貸す。
「す、すみません。助かります」
イルカは戸惑いながらも素直に借りる事にした。
「ふふん!イルカ先生ってば顔赤ーい!ムッツリだってばよ!」
「うるさい!!!」
ナルトの楽しそうに茶化す言葉にイルカは怒鳴る。
3代目に報告が終わり、イズミは他の忍にたくされ、3人は解放された。
そのまま誘われ一楽に来ていた。
「必殺技は出来たし!卒業は出来たし!ラーメンは食べられるし!俺ってばついてるってばよ!」
ラーメンを美味しそうにすすりながらナルトは嬉しそうに叫んだ。
「まったく、現金な奴だな!お前は」
イルカは口でそう言いながらもとても幸せそうだ。
「何か、すみません。私まで一緒に」
○○もラーメンを食べながら言う。
「いえ!誘ったのはこちらですし!」
イルカが慌てて言う。
「そーそー!やっぱり花が欲しいってばね?イルカ先生!」
ナルトはニヤリと笑った。
「お前なー」
イルカは呆れながらナルトを見る。
「ふふ、何か仲の良い親子か兄弟の様ですね」
○○はくすりと笑った。
「そうでしょ?」
一楽の親父さんが話に乗ってきた。
「ええ。いつもこうですか?」
「いつも、こうだね!」
一楽の親父さんが豪快に笑った。
「でも、俺から見たらあんたら3人で仲良し家族みたいだよ!」
一楽の親父さんがニヤリと笑った。
「俺さ!俺さ!父ちゃんと母ちゃんがいたらこんな感じかなぁ?って思うってばよ!」
ナルトが嬉しそうに笑った。
「ナルト…………」
イルカは優しい目でナルトを見た後、頭を撫でた。
疲れたのかすっかり眠ってしまったナルトをおんぶしたイルカと○○は並んで歩いていた。
「ナルト君はこれからが大変ですね」
○○はナルトの寝顔を見た。
「そうですね。でも、こいつならやってくれますよ」
イルカは優しい顔付きでナルトを背負い直した。
「じゃあ、俺はナルトを送ります」
イルカは立ち止まる。
「はい、今日はご馳走さまでした」
結局○○の分もイルカが奢ったのだ。
「いいえ!ラーメンで良ければいつでも!では、お休みなさい」
イルカはにこりと笑った。
「お休みなさい」
○○はイルカとナルトの背を見送った。
次の日の昼休み。
○○の隣にはテンゾウが任務で留守の代わりにカカシが座っていた。
「え?じゃあカカシ上忍の班にナルト君が?」
○○は食べながらカカシを見上げる。
「そー。ま!合格するかは知らないけど」
カカシはパクパクと食べながら言う。
「それでさ、明日弁当余分に2つ作れる?」
「お弁当、ですか?」
「ん。ちゃんとお金は払うから」
カカシが指を2本立てる。
「それは、もちろん。お弁当3つ受け賜りました」
○○はにこりと笑った。
「助かるよ。悪いんだけど、10時までに持ってきて貰える?」
「はい、わかりました」
○○は素直に頷いた。
「あー、それとさ」
「はい?」
「あんまり他の男とラーメンとか食べに行かない方が良いよ?」
「……はい?」
カカシの言葉に意味が解らず首を傾げた。
「噂になってるよ」
「え?」
「怒るよ、テンゾウ」
カカシはニヤリと笑うと「ご馳走さま」と姿を消した。
「………………いや、いやいやいやいや!!ナルト君もいたし!」
○○は慌てて首を左右に振った。
きみとぼくの距離12
気にしないきみと任務中のぼく
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