11

素肌の肩が布団から出た。

「ん、寒……」

「離れなきゃ良いだろ」

ポツリともらした声に後ろから抱き寄せられた。
背中に感じる人肌が心地よく、うとうとと再び意識が遠退く。

「………………ん?」

そろりと目を開ける。
見慣れた自分の部屋に、見慣れない逞しい腕。

(…………腕?)

横を向いて寝ている自分の耳の所から伸びた腕。どうやらそれを枕に眠っていたらしい。

嫌な予感がして目だけを動かすと低いベッドの回りに脱ぎ散らかした自分の服と明らかに自分の服ではない男物のそれ。

もちろん、服だけではなく下着も投げられている。

「っ!!」

もぞりと動くのはもう一本ある腕が腰に巻き付いていた。

「っ、痛っ!!!」

がばりと起き上がり、頭痛がした。
起き上がるとあっさり腕はほどけた。

「あんなに飲んだからね。急に動いたら痛いだろ」

感情のあまり籠らない声は知っている。

恐る恐る振り返るとそこには予想通りの男が寝ていた。

「て、テンゾウさん」

「おはよう」

「…………お、おはよう」

○○は混乱しながら布団を引き寄せ、素肌の自分に巻き付けた。

「シャワー借りて良い?昨日結局入らなかったしな」

くわっとあくびをしながらテンゾウは声を出す。

「あ、そっちがお風呂場」

○○は布団で身を隠しながら指を差した。

「ん、借りる」

テンゾウは自分の服を拾うとそちらへ向かった。

「………………な、なに?この状況……」

明らかに行為をしましたなベッド。
ゴミ箱を覗くとティッシュの山。

「…………こ、これってやっぱり……」

○○は頭を抱えた。

少しずつ記憶が戻る。

「……しかも、誘ったの私だ……」

○○は二日酔いの頭痛と言い知れぬ疲労感に再びベッドに身を沈めた。

「………………ちゃんと告白もしてないし、これって、ほんとにどう言う状況よ……」

○○は働かない頭で思いだけを巡らせた。





「ん?作ったの?」

風呂から上がったテンゾウが見たのは食卓に並んだ朝食だった。

「うん」

(何かしてないと気が滅入る)

○○は無理矢理笑った。

「先食べてて、私もシャワー浴びてくる」

○○は着替えも持つと風呂場へ消えた。






「…………はぁ」

シャワーも浴びて汗臭さが消えればホッと一息つけた。

「あれ?テンゾウさん、もう行くの?」

○○はテンゾウの分だけ無くなった朝食と、テンゾウが出掛ける準備をしているのに気付いた。

「ああ、今日も任務があるからね」

「さすがだね」

○○はにこりと笑う。

玄関へ向かうテンゾウを追いかける。

「気を付けてね」

○○は軽く手を振る。

「うん」

テンゾウがドアノブに手をかける。

「行ってらっしゃい」

○○の何気無い一言にテンゾウが振り返る。

「?………………っ!!!ご、ごめん!ふ、深い意味は無いの!」

自分の言った言葉を理解して、顔に熱が集まり慌てる○○。

「じゃあ、行ってきます」

テンゾウが柔らかく笑うと部屋を後にした。


ーーパタン



ドアが静かに締まった。

その場に座り込む。

「な、なに今の…………。テンゾウさん、カッコ良過ぎ……!!」

○○は困りきった顔で項垂れた。







それから、特に特別何かがある訳ではなく、平穏な日々が過ぎて行く。

昼休み、○○の隣には時々ナルト少年、殆どテンゾウ暗部、時たまカカシ上忍がいた。

テンゾウと一緒の時でも、特にこの前の話は出ない。

「…………夢だったのかな」

○○の呟きは一人きりの部屋に吸い込まれた。

「…………気のせい……とか?服脱いで寝ただけとか」

○○はどんどん気持ちが重くなって行った。

「はぁ、忘れた方が良いのかな?」

○○は枕を抱き抱えた。

テンゾウが任務に出て今日で1週間。
まだ、帰ってきたとの情報は入って来なかった。



ーーピンポーン


「え?はい!」

こんな時間に誰だろうと玄関へ向かう。

「どちら様ですかー?」

「ボクだけど」

その声に心臓がドクンと高鳴る。

「い、今開けるね」

○○が鍵を開けると、テンゾウが立っていた。

「どうも」

「いらっしゃい、任務は?」

「終わって帰ってきた。どうしても○○ちゃんの顔が見たくて」

テンゾウがジッと○○を見る。

それだけで心臓が破裂しそうな程鼓動が速くなる。

「……入って良い?」

テンゾウが少し不安げに聞く。

「え?うん。もちろん」

○○が頷いた。

だが、テンゾウが一歩も動かない。

「入ったら顔見るだけじゃ、収まらないかもよ」

テンゾウが○○を見つめながら静かに声を出す。

「…………」

「嫌なら言って」

「…………嫌じゃ、ないけど」

「けど?」

テンゾウは静かに聞き返す。

「わ、私達の関係ってなに?」

○○は思いきって聞いた。

「同じ里の忍?暗部と中忍?お弁当仲間?それとも……」

テンゾウが俯く○○の頬に手を触れた。

「恋人同士ってのは?」

テンゾウはゆっくりと噛み締める様に声を出した。

「っ!!」

「嫌?」

「う、ううん!」

○○は首を激しく左右に振った。

「う、嬉しい」

○○は涙目で声を絞り出した。

「好きだよ、○○ちゃん」

「わ、私も」

2人は引かれ合う様に口付けを交わす。

「テンゾウさん」

「ん?」

「お帰りなさい」

○○はにこりと笑った。

「ああ、ただいま」

テンゾウも柔らかく微笑んだ。







きみとぼくの距離11



恋人同士



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