10

テンゾウが○○と昼飯を一緒にしなくなって数日が経った。

いつも座っていた場所にはいつの間に仲良くなったのか、金髪の少年が座っていた。

「ボクは何をしてるんだ」

テンゾウは深いため息をついた。

○○から覚えていない告白を受け、意識しているのはもちろん自分だけ。

このままではいけないと思いつつも、忍しかも暗部である自分がここまで平常心を保てないのも考えものだと考える。

考えれば考える程にどうして良いのかが分からなくなってる。

このまま気付かないふりをすれば良い。
そう思うのだが、彼女の余りにも変わらない態度に腹を立ててしまう自分が情けなく思うのだ。

「…………うだうだと気持ち悪い」

テンゾウは意を決する様に深呼吸をひとつした。







「ふー!今日も疲れましたね!」

○○は就業時間を迎えて大きく伸びをした。

「ええ、お疲れ様でした!」

イルカがにこりと笑った。

「そう言えばそろそろアカデミーも卒業試験ですか?」

「ええ、いい加減ナルトにも合格して欲しいです」

イルカは難しい顔をする。

「ふふ、そうですね」

最近知り合った少年ナルトとイルカは生徒と教師として仲が良かった。
そこで、時々昼飯を一緒に食べる○○とは共通の話題なのだ。

「では、私はお先に失礼します」

○○は席を立ち上がった。

「お疲れ様でした」

イルカはにこりと笑った。






ーードロン



「うわっ!!!」

「……こんばんは」

「…………こ、こんばんは」

突然目の前に現れたのはテンゾウだった。

「ど、どうしたの?なんか、久し振り」

最近は弁当を受け取って金を渡すだけの関係になっていたテンゾウ。

「……これから飲みに行かない?」

「は?」

突然の提案に目を丸くする○○。

「これから?」

「うん」

「飲みに?」

「うん」

「何で、また?」

不思議そうにテンゾウを見上げる○○。

テンゾウは無言でジッと○○を見る。

「えーっと、お、美味しい梅酒のある所なら」

○○は恐る恐る提案する。

「梅酒?好きなの?」

「う、うん。明日はお休みだし。それなら良いよ」

○○はテンゾウから誘われて嬉しいが、いきなり飲みに行くとは何だろう?と疑問に持つ。

「なら、決まり。外で待ってる」

「わかった」

「じゃ、後で」

テンゾウはドロンと消えた。

「……う、嬉しい」

○○は緩む顔をつねった。






「お疲れ様!」

「お疲れ」

○○の梅酒が入ったグラスとテンゾウのビールの入ったグラスがカチンとぶつかった。

「あ!美味しい!」

○○は上機嫌でグラスを傾けた。

「それは良かった」

テンゾウもグラスを傾ける。

「どうしたの?急に飲みに行こうだなんて」

○○は不思議そうにテンゾウを見る。

お通しの角煮も絶品であった。

「いや、いつも弁当作って貰ってるからたまには別のモンでもご馳走しようかと思って」

テンゾウがたこわさに箸をつける。

「…………そっか」

「別に○○ちゃんの料理に飽きたとかじゃないから勘違いしないでね」

「そ、そっか!」

正しくそう思ったので、嬉しそうに頷いた。

「でも、ご馳走って事はテンゾウさんの奢り?」

○○は冗談めかして聞く。

「うん。だから、いっぱい飲んで、食ってよ」

テンゾウが頷いた。

「え?いや!冗談だから!」

○○が慌てて首を振る。

「借金ある癖に無理しないの」

クスリとテンゾウが笑う。

「……でも」

「ここはボクの顔を立てると思って奢られなよ」

「……ありがとう」

テンゾウの優しい笑顔に顔を赤くしながら頷いた。

「せっかくだから、梅酒いっぱい飲む!」

○○は嬉しそうに梅酒を飲んだ。








「んー!おいひぃー」

「飲み過ぎ」

テンゾウは呆れていた。

「テンゾウさーん!飲んでる?」

○○がテンゾウの首に腕を回す。

「はいはい、飲んでる。くっ付かないで」

テンゾウがやんわりと○○の手を取った。

「ほんと?何か全然変わってなーい」

○○は不服そうにテンゾウを見る。

「忍たる者、酒は飲んでも呑まれるなってね」

テンゾウは日本酒を傾けた。

「ぶー!ずるい!わたしだってしのびー!」

○○は若干怪しい口調だ。

「はいはい、そうね」

テンゾウは少し面倒臭そうに言う。

つい、飲ませ過ぎたらしい。
この前の自白剤の様になってしまったとテンゾウは後悔をしていた。

「そろそろ帰ろうか」

こうなっては仕方ない。
テンゾウは勘定札を手に取る。

「はーい!」

思いの外素直に○○は立ち上がる。

約束通り勘定をしたテンゾウと○○は店の外に出た。

「ごちほう、さまでした!」

○○は深々と頭を下げる。

「いいえ」

テンゾウはやれやれと言う。

「じゃあ、おやすみなさーい」

○○はフラフラと歩き出す。

「送るよ?」

「だいじょーぶれふ!」

○○はへらりと笑った。

テンゾウがその後ろ姿を心配そうに眺める。

すると、一人の男が○○に近寄る。

嫌がる○○の腰を抱く。

「ったくっ!」

テンゾウは苛立ちながら○○に近寄る。

「ボクの女だから触らないでくれる?」

○○の肩を抱いて無理矢理自分の方へと引き寄せた。

「なんだよ、男付きかよ」

チッと舌打ちをして男は離れて行った。

「忍の癖に隙があり過ぎだ」

テンゾウは怖い顔で○○を見る。

「テンゾウさんカッコイイ!」

○○は嬉しそうに笑った。

「はぁ、送るよ」

「ありがとう!」

今度は素直に頷いた。




フラフラと覚束ない足取りの○○を支えながらのんびりと歩くテンゾウ。

言葉は少な目だか、穏やかな時間を過ごしていた。



「到着」

テンゾウが○○のアパートの玄関まで送り届けた。

「えっと、かぎ」

バッグの中を探って取り出す。
鍵穴に入れようとしたら、鍵を落とした。

「あー、何やってるの?」

呆れながらテンゾウが拾い、代わりに鍵を開け、ドアを開けた。

「はい、どうぞ」

「はーい!」

○○がテンゾウを部屋の中へ押し込んだ。
テンゾウは抵抗も見せなかった。


ーーパタン


静かにドアが締まった。

「…………一応聞くけど、どうしたの?」

テンゾウが○○の肩を抱く。

「うーん、なんか帰ってほしくなくて…………」

先程よりもしっかりした声で○○が呟いた。
○○の腕はテンゾウの腰に回わす様に抱き付いていた。

「そう…………。意味、解ってる?」

テンゾウが真剣な顔をした。

「うん」

○○は静かに頷いた。

どちらからともなく、唇が重なる。

「っ!」

一度離れてから、お互いに息を奪い合う様な口付けへと変わる。

「っはぁ、…………寝室、奥だから」

○○の濡れる瞳でそう言われ、靴を脱ぐと○○を抱き上げた。





きみとぼくの距離10




我慢しない中忍と我慢出来なかった暗部



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