09
「テンゾウさん!はい!お弁当」
「ありがとう。悪いけどボク、違う所で食べるから」
「……うん」
テンゾウは弁当箱を受け取るとそのまま瞬身の術を使い、姿を消した。
「…………やっぱり私何かやらかしたんだ」
○○はショボンと落ち込んだ。
仕方なくいつものベンチで一人お弁当を広げる。
「あー!もー!腹減ったってばよ!!!」
突然目の前で金髪の男の子がそう叫んだ。
(あ、この子って確か九尾の……)
ーーぐーぎゅるるるる
それは凄まじい腹の音。
「くっそー!」
少年は腹を押さえた。
「クスクス、凄いお腹の音だね」
○○はあまりの大きな音に笑い声を上げてしまった。
「なんだってばよー!」
少年は機嫌悪そうに○○を見る。
「問題です」
「?」
「ここにお弁当がひとつ余っています。私はこれをどうするでしょう?」
○○はイタズラっぽく笑う。
「何?姉ちゃん振られたのか?」
少年は不思議そうに答える。
「…………やっぱり自分で食べるか」
○○は不機嫌そうに弁当箱の蓋を開ける。
「じょ、冗談だってばよー!余ってるならちょうだい!!」
少年は素直に手を出してきた。
「良くできました。隣どうぞ?」
○○は隣にスペースを開けた。
「やっほー!いただきまーす!!」
少年は素直に○○の隣に座ると手を合わせた。
「うまい!!これ、うまいってばよ!!!」
少年はガツガツと弁当を食べ進める。
「ふふ、良かった」
○○はお茶を少年に渡した。
「姉ちゃん良い人なのに男に縁がないんだな!」
少年は無邪気ににこりと笑った。
「やっぱ、そうなのかな?」
○○はため息をついた。
「こんなにうまい飯作れるのに!見る目ないんだな!そいつ!」
少年はガツガツと口に入れる。
「ご飯は美味しいって言ってくれるんだよ?…………まぁ、それだけだけどね」
○○は言いながら少年を観察した。
「ねぇ、君の名前は?」
「おれの名前はうずまきナルト!火影になる男だってばよ!」
ナルトはまだあどけなさの残る笑顔を見せた。
「お!カッコイイ名前だね。私は○○って言うの。宜しくね」
○○はにこりと笑った。
「ナルト君はどうしてお腹を空かせてたの?」
「時間がなくて朝飯も作れなくて弁当も無かったんだってばよー」
ナルトは最後に残った生野菜をジッと睨んだ。
「ちゃんと食べないと火影になれないよー」
「わ、わかってるってば!!」
ナルトはムムムと生野菜と格闘してからようやく口の中にそれを放り込んだ。
「お!偉い!偉い!」
○○はにこりと笑った。
「○○姉ちゃんは何で弁当を余計に持ってたんだ?」
ナルトがお茶で口の中の物を流し込んだ。
「ん?お弁当を作って売ってるの。でも、一人の人が急な任務が入って要らなくなっちゃって」
「姉ちゃんは弁当屋か!」
ナルトはぱぁっと嬉しそうに聞いてくる。
「ううん。中忍なんだよ。まぁー、実力はドベのドベだけど」
あははと照れ隠しに笑う。
「うう、……俺もだってばよ」
ナルトは頭をかきながら言う。
「そうなの?でも、諦めずに頑張ればナルト君なら火影も夢じゃないよ!!」
○○の言葉にナルトは顔を輝かせた。
「俺さ!俺さ!頑張るってばよ!誰にも負けない火影になってみせるってばよー!!!」
ナルトは嬉しそうに高らかと宣言をした。
「うん!楽しみにしてるね」
○○は本当に楽しそうに笑った。
「じゃあ、ごちそーさん!○○姉ちゃんまたな!」
ナルトは笑顔で走り去った。
「ふふ、九尾って言っても元気で良い子じゃない」
○○は穏やかにナルトを見送る自分に少し不思議になった。
しかし、悪い気はしなかった。
きみとぼくの距離9
逃げるぼくと追いかけないきみ
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