05

家に行く前に食事を済ませようと近くの飯屋に入った。

何だか味なんて分からなかった。
店主とは顔見知りらしく○○を連れているカカシを見てニヤリと意味あり気な視線を送ってきた。

そして、そのままカカシの家へと行く。





「お邪魔します」

「どーぞ」

○○はカカシに続いて部屋へと入る。

カカシは○○を先に上がらせて玄関の鍵をガチャリと閉めた。

「…………」

○○はその音に帰りたくなった。

「ま!そこにでも座ってくつろいでてよ」

あまり物が置かれていない部屋は生活感が無かった。

カカシは背の低いソファーを指差した。
○○は荷物を置くと仕方なくそこに座った。

「ほい、珈琲」

カカシは柄の違うマグカップを2つ用意した。

「あ、ありがとうございます」

○○は緊張しながら礼を言う。

「ふぅ」

「っ!!!」

ぽすんとカカシが○○の隣に腰を下ろす。
そして当たり前の様に自分の背中を○○の左肩へと預けて来た。

(ちょっ!いきなり何してるの?この人!!)

カカシは何も喋らずに本を読み始めた。


ーーペラリ


部屋にはカカシが本のページをめくる音と珈琲を飲む音だけが響く。

(…………平常心、平常心。忍はいかなる時も)

自分を落ち着かせる為に頭の中でそう唱えた。


ーーペラリ


(そう言えばする時ってキスとか…………しないか)

これは任務だ。行為を楽しむものではない。


ーーペラリ


(痛くしないで欲しいな)

綱手に貰った札をそっと手で確認する。


ーーペラリ


(薬とか使うのかな。あ、でも、子供に悪影響が万が一出るとダメよね。…………お酒もダメかな…………)


ーーペラリ


(素面かぁ。色の任務だって思えば良いけど……あれって幻術見せる方が多いし)


ーーペラリ


(そもそも、はたけ上忍がその気にならなければ良いのよ!)


ーーペラリ


(ダメだ。この沈黙重すぎる。…………よし)


「は、はたけ上忍」

○○の声が思わず上擦る。

「んー?」

カカシが本から目を離さずに声を出す。

「はたけ上忍の夢って何ですか?」

「夢?」

のほほんとした声がする。

「やっぱり火影になる事ですか?」

○○が見えないカカシの顔を見ようとする。

「いや、俺は火影って柄じゃないでしょ」

カカシはペラリとページをめくった。

「そうですか?皆、次期火影ははたけ上忍だって言ってますよ!」

「そー」

特に興味もなさそうにカカシは頷いた。

「わ、私は今天ぷら蕎麦が食べたいですね」

○○は負けじと次の話題を出す。

「さっきご飯食べたばかりでしょ」

「…………そうですけど……。はたけ上忍もいかがですか?」

「俺、天ぷら苦手なんだよねー」

「…………デザートとか食べたいですよね!ケーキとか!」

「俺、甘いの苦手」

(終わった。私やっぱりこの人無理だ)

○○はがっくりと項垂れた。

仕方なく○○は黙った。


ーーペラリ


「○○は?」

「へ?」

突然カカシから声がかかって驚く。

「○○は夢とかあるの?」

カカシは興味なさそうに本から目を離さずに聞く。

(お、おぉ!!ようやく会話する気に!!)

「そうですね。火影!と言いたいところですが……。自分で言うのも悲しいですが、忍として先は見えてしまっているので、平凡な夢が良いですね」

「平凡な夢?」

「はい。やっぱり、素敵な人と結婚して子供を産んで幸せな家庭を築きたいですね」

○○はにこりと笑った。

「……いるの?」

「はい?」

「素敵な人」

カカシが初めて本から顔を上げて○○を見た。

「いえ、残念ながらまだ。だから、今回の任務には差し支えないですよ。まぁ、するならやっぱり中忍くらいの優しそうな人が良いですね」

○○は少し考えながら言う。

(まぁ、今回の子供ははたけ上忍に取られちゃうとして、何人か産まなきゃね!)

○○は物思いに更けながら、ある事を思い出した。

「あ、はたけ上忍!」

「…………ん?」

少しの間があったのが気になったが、気にせず続きを言う。

「彼女さんには今回の任務の事ちゃんと話してくださいよ!修羅場になっても上忍相手なら私生きてる自信ないですから!」

○○はきっぱりと言う。

「…………彼女なんていないよ」

「あれ?そうなんですか?」

あの噂は所詮噂だったのだろうかと思案していたら、目の前が急に暗くなり、唇に何かが当たる。

「っ!」

忍としての自分がとっさにそこから引いた。
すると目の前にはカカシのドアップがあった。

そこで初めて自分がカカシに口付けられた事に気付いた。

(っ!始まった)

何がスイッチになったのは分からないが、目を細めたカカシは口布を外していた。

初めて見るカカシの素顔にカッと顔に熱が集まるのを感じた。

再び近付いて来たカカシを反射的に避ける。

(つ、つい!)

○○が冷や汗をかくと、お構いなしにカカシの唇が○○の耳に寄る。
そして、耳たぶをべろりと舐めた。

「っ!」

混乱する中、カカシの唇はゆっくりと○○の首筋を這う。

「ん!」

途中、強く吸われ声が思わず出た。

カカシはお構いなしに○○の服に手をかけ、胸元を肌けさせ唇を下へと這わせる。

○○は『これは任務だ』と自分に言い聞かせるも、思わず手でカカシを押しのせようとしてしまう。
だが、その手もあっさりとカカシによって弾かれてしまった。

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