01
○○は木の葉の里の中忍である。
彼女は血筋は良く、チャクラ量も多かったが、忍術的センスが皆無であった。
何とか中忍にはなれたが、忍者としては先が見えてしまっていた。
医療忍術には少し秀でていて、教え上手なので、アカデミーの教師に収まっていた。
それに何の不満もなかった。
そんなある日。
「あ!○○!綱手様が呼んでるわよ」
同僚くの一が声をかけた。
「え……。な、何だろう?」
○○は不安にかられた。
○○は特に目立つタイプの女ではない。
何かに特別秀でている訳でもなく、ただ人望は厚かったが、上層部に直接呼ばれる様な事は今まで無かったのだ。
「分かんないけど、早く行った方が良いよ!火影室ね!」
「わかった。ありがとう」
○○は素早く立ち上がると早足で歩き始めた。
ーーコンコン
「誰だ」
ノックをするとドアの向こうから女の声が響いた。
「アカデミー教師の□□○○です」
○○はなるべく大きな凛とした声を出した。
「入れ」
「失礼いたします」
ガチャリとドアを開けて中へと入る。
火影室へは下っ端の○○は入った事などなかった。
中には3人の人物がいた。
目の前の大きな机にいるのが5代目火影の綱手。
その近くにいるのが彼女の弟子のシズネ。
そしてーー
(あ!はたけカカシ上忍!こんなに近くで見たの久し振りだ!)
ちらりとこちらを見たのは顔の殆どを隠した長身銀髪の男。
コピー忍者のはたけカカシだった。
小さくお辞儀をされたので、慌てて○○も頭を下げた。
「○○だな。待っていた」
綱手の声に弾かれる様にそちらを向いた。
「お前に特別任務を言い渡す」
「は、はい!」
綱手の凛とした声に慌てて頷いた。
「こいつの子を孕め」
「はぃ………………はい?」
綱手がビシッと指を差した。
その先にいた人物は、と言うよりもこの部屋にいる異性は
はたけカカシただ一人だった。
「いや、は?え?」
○○は一人戸惑っている。
対する言われた本人であるカカシは事の成り行きを見ているのか、眠たそうな目をしているだけだった。
「っく!!何故私が大切なアカデミー教師にこんな事を」
綱手は怒りから来る震えで拳が揺れた。
「あの、恐れながら……」
「なんだ!」
○○がおずおずと手を挙げるのを綱手が苛立たしげに見た。
(ひぃぃぃ!!!)
○○は現火影である綱手の迫力に怯える。
「そ、その。優秀な忍の子孫を残す事が大切な事だとは私も重々承知しております。……しかし、何故それが私なのでしょうか?上忍の方の方が良いのではないでしょうか?」
○○は恐る恐る声を出した。
「そんな事は分かっている!!」
ドンッ!と机を叩く綱手。
「今はこれから起こるであろう戦争に備えて少しでも戦力が必要だ。子を宿し、産み、育てる。それは女にとって時間のかかる事。上忍をそれに裂けられん」
綱手は机に手を置いたまま話す。
「は、はぁ」
○○は気の無い返事をする。
「それにお前は元々の血筋は悪くない。こいつの欠点であるチャクラの量も補える子が欲しい」
カカシは優秀な忍故に操る忍術も高度な物ばかり。
よって、すぐにチャクラ切れになってしまうのだ。
「色々な調査の結果。決まった事だ」
言いながらも綱手は少し不機嫌そうだ。
「…………はぁ」
○○は考えながら頷いた。
「これは任務だ!拒否権は無いと思え」
綱手は言い切る。
「…………わかりました」
○○は覚悟を決めて頷いた。
「段取りが決まったら知らせろ。2人で少し話し合って来い」
シッシッと綱手は手を払った。
「それじゃ、失礼します」
カカシが軽く礼をするとドアへと向かった。
「し、失礼します!」
○○も慌ててカカシの後を追った。
「綱手様。良かったんですか?」
シズネが不安そうに声を出す。
「知らん!だが、賭けは私が負けたんだ。そうしてやらねばならん!」
綱手はイライラと机を指で叩いた。
「カカシの奴。絶対責任取らすからな」
綱手は2人の出て行ったドアを睨み付けた。
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