10
「ただ今戻りました」
いつもとあまり変わらない飄々としたカカシと、ぐったりと辛そうな○○が火影部屋にやって来た。
「良く戻った。指輪は?」
綱手が机に肘を付けニヤリと2人を見る。
「この通り」
カカシは自分の左手で○○の左手を掴み、掲げる。
2人の薬指にはお揃いの指輪が光った。
「良くやった。では、これに2人でサインをしろ」
綱手の合図でシズネが一枚の紙を出す。
「こ、婚姻届け……」
○○はやっとそれだけ言う。
「はーいっと」
カカシが素直にサインする。
「お、恐れながら!!!」
○○は思いきって声を出す。
「何だ?新婚旅行の連休なら譲歩するぞ?」
綱手が真剣な顔で言った。
「いや、いやいやいやいや!!!嫌です!!!」
○○はきっぱりと言う。
「何が不満だ?これでも一応この里のトップクラスの忍だぞ?」
綱手はカカシを指差す。
「いや、そうかも知れません。と、言うかそれだからこそ吊り合わない」
○○はブンブンと頭を振る。
「そんな事はない」
綱手はジッと○○を見る。
「お前は優秀な忍だ。自信を持て。胸を張れ!」
綱手は真面目な顔で力強く言った。
「ほ、火影様……」
○○は感動した様にうるると目を潤ませる。
「と、言う訳で、はい」
カカシが○○の手を取り、さらさらとサインをする。
「は?」
「っと、血判」
「痛っ」
カカシは○○の親指をクナイで傷付け婚姻届けに判を押す。
「よし、出来た」
カカシは機嫌良く出来上がった婚姻届けを綱手に渡した。
「受理した」
「は?え?やっ、待って!待って下さい!!!」
綱手の言葉に放心していた○○は意識を取り戻した。
「待った無し!」
カカシが嬉しそうに笑った。
「は?嫌です!嫌!!!」
○○はカカシに喰ってかかる。
「悪いが○○。これは受理した。お前達は夫婦だ」
綱手の言葉に○○は死の宣告を受けた気分だった。
「あぁ、それと。最初の任務は取り下げる。夫婦なのだから後はお前達に任せる」
綱手はそれだけだと手を振った。
「ほら、行くよ」
カカシは○○の手を握り、火影部屋を後にした。
「ほら、着いたよ」
カカシの声にハッと意識を取り戻した。
「は、はたけ上忍!良いんですか?何か、結婚させられちゃいましたよ!」
○○は慌てて声を出した。
「んー、ま!良いんじゃない?」
カカシは額あてや装備品を取り外す。
「そ、そんな適当な!」
「それより○○も楽にすれば?」
カカシの言葉に○○は額あてやベストを脱ぐ。
「いや、違う。だって、ほら!結婚とかって一緒に住んだりするんですよ?」
「そうだよ」
「政略結婚とか昔はあったかも知れないけど、今は!」
「確かに」
カカシは静かに声を出した。
「確かにあったよ。でも、違うでしょ?」
「違う?結婚って好きな人同士がするものでしょ?!」
「そうだよ」
カカシは○○の頬を包み込む様に手を添える。
「好きな人と家族になって、子供作って、それを守るもんでしょ」
カカシの真剣な眼差しと言葉に自然と○○の顔に熱が集まる。
「○○。俺と結婚してよ」
カカシはにこりと笑った。
「は、はたけ、上忍」
今まで否定の言葉を並べていた○○がカカシの言葉にポーッとしながら彼を見上げる。
「ま!取り合えずヤらせて」
先程までの真剣な顔はどこへ行ったのかと思うほどの笑顔だ。
「…………は?」
「もーさ○○のエロい声聞いてから我慢してるの大変なんだよ?」
「…………」
「早く触れたくて、あのまま婚姻届けにサインしなきゃ、初めから最初の任務取り下げるだろうなぁって思ってたし」
「はぁぁぁぁぁ?!!!」
「ほら!もう夫婦なんだし、遠慮もいらないよね?」
「…………」
「ま!結婚しちゃったし、宜しくーね!」
カカシはにこりと笑った。
「…………」
「○○?」
「ぜっっっったい!!!夫婦だなんて認めないからぁぁあ!!!!」
○○はカカシに思いきり閃光弾を投げ着けた。
「ちょっ?!」
カカシは慌てて目を閉じるが、写輪眼でちらりと見てしまい、目にかなりの負担がかかった。
「私としたかったら、私をその気にさせる事ね!!!」
○○はそれだけ言うと窓から飛び出た。
任務を遂行せよ「っとに、やってくれるね」
やっと目のチカチカが無くなった時には既に○○の姿はなくなっていた。
「俺だって、ぜっっっったい逃がさないからね」
カカシは楽しくて仕方がない。そんな笑顔で夜空を仰いだ。
任務、失敗!
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