09
初めて彼女を見たのは、あぁ、あれだ。
初めて「カカシ先生」と呼ばれ、生徒を持ちそうになった時のアカデミーの担任だった。
何て事はない。
ただ、「お気を付けてくださいね」と笑顔で言われただけ。
まぁ、その生徒達は全員アカデミー送りにしたが。
それでも彼女は俺にも、他の上忍にも同じ笑顔で「お疲れ様でした」と言ったのだ。
それだけで、たったそれだけで彼女を目で追う様になったのだ。
それなりにモテると思っていたのに。
他の美人達には他の奴等とは違う視線を送られるのに、彼女は全員に同じ笑顔で接していた。
それから、わざとらしく彼女に近付いても彼女は特に気にした様子も見られなかった。
そして俺にも生徒、部下を持つ事になった。
同じくの一でも、サクラとは面識は無かったようだ。
何もかも俺と彼女を近付けさせる材料はなかった。
そんなある日。
5代目火影てある綱手様に連れられて飲みに行った時だ。
「なぁ、カカシ。次の客が男か女か賭けないか?」
かなり酔っていた綱手様がそう持ち掛けてきた。
「……金は賭けませんよ?」
カカシは呆れながら酒を飲む。
「わかった!なら、負けたらお互いの願いをひとつ叶えると言うのはどうだ?」
綱手はニヤリと笑った。
「…………ま、それなら」
「よし!決まりだ!私は男に賭ける!」
綱手は機嫌良く声を出す。
「なら、俺は女ですね」
カカシは興味無さそうに秋刀魚を頬張る。
「いらっしゃーい!」
「よし!男!男!」
綱手は期待に胸を膨らませる。
「うわ!くそー!女だ!」
綱手はがっかりと肩を落とす。
「よし!カカシ!願いを言え」
「えー、いいですよ」
カカシは面倒臭そうに声を出す。
「何かあるだろ?ほら!言ってみろ」
「……」
「火影の名に懸けてやるから」
「なら」
「よし!なんだ?」
綱手はカカシを楽しそうに見る。
「アカデミーに□□○○って教師がいるんですが」
「あぁ、いるな」
まだ話した事はないがと綱手は頷いた。
「その人としたいです」
カカシがポツリと呟く。
「は?」
「その人とセックスしたいです」
トランプしたいです。と同じ軽さで言うカカシ。
「…………結婚したいからお見合いさせろと?」
綱手は眉間にシワを寄せた。
「いやー、実際どんか子か知らないからそこまではいいです」
カカシは手酌で酒をつぐ。
「貴様!それは男としてどうなんだ!!!」
ガツンと綱手が怒りに任せてテーブルを叩き割る。
「じゃあ、子供が欲しい、にします」
カカシはしれっと酒を飲む。
「…………お前の子か」
綱手は大きくため息をついた。
「昔はそんな話も多かったでしょ?婚姻関係が無くても優秀な忍同士子を作ると」
カカシは落ちてしまった秋刀魚を拾う。
「………………結婚はしないのか?」
綱手はカカシを睨み付ける。
「ま!それは彼女しだいでしょ」
カカシはにこりと笑う。
「宜しくお願いします。火影の名に懸けて」
カカシの言葉に綱手の機嫌はいっそう悪くなった。
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