偽りの関係5


コトリと置かれた物は細長い白い小さな機械。

『他の女に手を出すなど!浮気など上に立つ者がする事ではない!!お前の様な奴はこの世にいらん!!!』

カチ、シャンクス部長が機械を操ると社長の声がした。
どうやらボイスレコーダーのようだ。

「…………それがどうした」

社長は一瞬狼狽えたみたいに黒目が揺れた。
ここまで見えたよ。

「どこ入れたっけ?あーっと、あ!あったあった」

シャンクス部長が色んなポケットをまさぐり、ようやく見付けたのか、封筒を取り出した。

「悪ィ○○、ちょっと手ェ貸してくれ」

シャンクス部長に言われ私は慌てて手を出した。
封筒から取り出したのは写真?
あれ?この人どこかで……。

私は顔を上げると写真の人がいた。あ、社長か。

「この人知ってるか?」

シャンクス部長は社長に写真を見せながら女性の名前をつらつらと上げて行く。

私が訳が解らなくてただ、手元の写真を見る。良く見ると社長と色々な女性が写真に写っていた。
私とシャンクス部長の写真よりも近く、肩を組んだりしていた。

ふと見ると社長の顔が青くなった。
え?大丈夫なの?

「し、知らんな……」

社長は震えた声でそう言った。

「あー、これだこれ。この女優さんとやりたかったんだろ?奥さんの為に用意したはずの2億の指輪どこにやったのかねェ?」

シャンクス部長は私の手から一枚の写真を取って社長に見せた。

「っ!!!」

社長は顔を引き吊らせていく。

「さすがに2億の指輪ならすぐに後追えるな」

シャンクス部長はにかりと笑った。
な、なんか悪い顔だな。

「…………何故だ……。娘と結婚していればこの会社は行く行くはお前のもの、何故」

社長はがっくりと項垂れた。

「俺はこの会社には興味がない。お前が俺の恩人に手ェ出したからな。潰しに来た」

シャンクス部長はにかりと笑った。

「まァ、ここ潰すのは簡単だからな。折角だから金も家庭も世間体も全部再起不能になって貰おうと思ってさ。あ、他にも色々やっといたぞ」

シャンクス部長は実に楽しそうな怖い顔で笑った。
な、なんなんだ。これ、怖い。

「っくそ!!!」

社長はシャンクス部長に殴りかかる。
シャンクス部長は薄ら笑いを浮かべたまま動かない。


ーーガッ


社長は腕を掴まれて動きを止めた。

「ベン!!貴様!裏切るのか?!」

止めたのは私をここに連れて来た灰色髪の男だった。

「裏切る?俺は元々この人のスパイだ」

ベンさんはにやりと笑った。
え?こんな用意周到にこの会社を潰す気だったの?

「さて、俺達は失礼するよ。今頃この写真も奥さんのもとに行ってるだろうし、会社中にも広まってる。取引先にあー、まァ、色々な」

シャンクス部長はベンさんに目配せをする。
ベンさんは社長の腕を投げるように捨てた。

社長はその場にうずくまった。


「ほら、行くぞ」

シャンクス部長は私の肩を抱いた。
は?私も?

慌てているとそのままベンさんと一緒に会社の外まで連れ出された。

行きはあんなにジロジロ見られたのに帰りはみんなパソコンにかじりついていた。
どうやらさっきの写真やら色々がパソコンメールに一斉送信されたらしい。

……何だか、ここまでやると社長が哀れになってくる。
シャンクス部長の恩人とか知らないし。







「よう!お頭!上手く行ったか?」

先程の運転席の男ーーヤソップさんだっけ?も仲間だったよだ。

「おゥ!もちろん!」

シャンクス部長はにかりと笑った。

「あれ?あんたは……。お頭!まさかこの子連れてくのか?!」

ヤソップさんが驚きながら私を指差す。
だよね、意味わからないです。

「あァ、置いてけないだろ」

シャンクス部長は私を抱き寄せる。

「だから、適当に言い寄ってくる女にすりゃ良かったんだよ!」

「まァ、そう言うなよ、ヤソップ」

シャンクス部長はにかりと笑った。ベンさんは「諦めろ」とヤソップさんに言っている。
な、なにこれ?私どうなるの?

「わ、私これで帰ります」

私はくるりと踵を返す。が、すぐにシャンクス部長に捕まった。
全然力入れてる様に見えないのに離れない!

「おいおい、本人はヤル気なしじゃねェか」

ヤソップさんは呆れたようにシャンクス部長を見た。
取り合えず離して欲しい。
この人たち常識的に考えてヤバイ。
もう、関わりたくない。

「仕方無いな」

「へ?」

シャンクス部長は車の後部座席のドアを開けると私を押し込んで自らも入った。
前には2人も乗り込んだ。

「っ!!開かない!」

「だから、チャイルドロックだ」

私がガチャガチャとドアを捻るが空回りする。助手席のからベンさんの呆れたように声がした。

「取り合えず一時間くらい走ってくれ」

「了解」

シャンクス部長の言葉を聞いてヤソップさんがそう言うと、運転席の後ろ側に壁が反り出て来た。

完全に閉まると前の音が全く聞こえなくなった。

「ちょ、ちょっとなにして!」

シャンクス部長が私の事を後部座席のシートに押し倒した。
いやいやいやいや!!何をするんですか!

「○○の体に俺を覚え込ませる。仕方ねェだろ、愛しちまったんだからよ」

シャンクス部長の顔を初めて間近で見た気がした。

「っ!!」

嘘臭いその笑顔に私は抵抗などそもそもする気がないと気付いた。

「愛してる」だなんて絶対嘘なのに!顔見りゃ分かるわ!









偽りの関係









「と、言う事でこれから宜しくな、○○」

「……」

「何だよ、不服そうだな」

「…………シャンクス部長」

「もう部長じゃねェな」

「しゃ、シャンクスさんは」

「30点」

「…………シャンクスさんは何なんですか?」

「うーん。○○の恋人だろ?」

「いやいや、それは違いますから。じゃなくて、」

「つれないな!まァ、人間知らない方が幸せだ」

「…………やっぱり帰る!」

「悪ィがそれは聞けないな」



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