その後の時間6

「こほん、こほん」

部屋に響くのは○○の苦しそうな咳の音。

「大丈夫か?」

シャンクスは不安そうにベッドで眠る○○の顔を覗き込む。

「ん、大丈夫」

○○は朦朧とした中でもシャンクスの声を聞き、何とか笑おうと試みる。

「無理するな。寝てろ」

シャンクスはあまりの痛々しさに片手で○○の目を塞ぎ、落ち着かせる。

「んーん、シャンクスが仕事に行くまで起きてる」

シャンクスの手を取る。
ぼぉっとした目線をしながらも、○○にはシャンクスと一緒にいられる時間が大切なのだ。

例え、自身が風邪で寝込んでいても。

「……。悪いな、一緒にいてやりたいんだが、今日は外せない会議があるんだと」

シャンクスは決まり悪く頭をがしがしと掻いた。

「うん。大丈夫。解ってる」

○○が小さく頷いた。

「ここの近くに知り合いの医者がいる。口は悪ィが、腕は確かだ。診察券を出しておくから、9時になったら行くんだぞ?」

シャンクスがやはり心配そうに説明する。

「うん……。解った」

「くそっ、こんな時に会議なんてあっても、身が入らないな」

小さく舌打ちをしながらシャンクスは悪態をつく。

「ダメだよ、シャンクス」

「ん?」

「貴方は沢山の部下とその家族の命を預かってるんだから、ちゃんとお仕事頑張ってね?」

○○は息苦しそうに口を開く。

「………………そうだな。悪かった」

シャンクスはグッと腹に力を入れる。

「じゃあ、行くが、何かあったら遠慮なく電話しろ?俺が動けなくても、優秀な部下や友人が多いからな」

「ん」

シャンクスは○○の眠るベッドに近付いて頭を優しく撫でた。

そして、唇を寄せる。

「ダメです。風邪がうつったらどうするの?風邪じゃなくて、変な病気だったら、それこそ困る」

「俺は風邪なんてひかねェよ!」

シャンクスがキスを止められてご機嫌斜めだ。

「ダメ。万が一ひいたら私は私が許せなくなるもの」

○○は困った様に笑って「ごめんね」と言う。

「…………あー!!早く治してくれよな!ちゃんと病院行くんだぞ!」

シャンクスは少し苛立たしげに立ち上がる。

「うん。行ってらっしゃい」

「あァ、行ってくる」

シャンクスが身支度を整えると玄関へ向かう。

「シャンクス」

「ん?」

小さく呼んだだけだが、シャンクスはその声を捉えて、再び寝室に帰ってきた。

「あの」

「どうした?」

○○はまさかシャンクスが来るとは思わなくて、少し驚いた表情だ。
シャンクスは寝室の入り口から○○を伺う。

「さ、寂しいから、早く帰って来てね?」

「………………」

○○の照れたような言い方にシャンクスの思考が止まる。

「あ、あの、寄り道とかしないで、なるべくで良いから……」

あわあわと慌てながら○○は言葉を紡ぐ。

「だー!!!もー!!!」

シャンクスは大股でベッドまでやって来た。

「なるべく早く帰って来る」

シャンクスは○○をかき抱いた。
そのいつもとは違う体温の高さに驚きつつ、優しく声を出す。

「うん……。ありがとう」

○○は嬉しそうに笑った。







○○はシャンクスが出て行った後、何とか着替えをして、病院へと向かった。

薬を出され、家にたどり着くと大人しく眠った。







シャンクスは慌てながらも安全運転で地下駐車場に車を停める。

ボタンを押してもなかなか来ないエレベータに少しイライラとしながらも、やって来たエレベータに体を滑り込ませた。

自分の部屋の階と、“閉”ボタンを連打したのは仕方のない事だ。


ーーポーン


目的階に着くと、無理矢理扉を開けるようにエレベータから飛び出る。
自分の部屋の前までダッシュしたのは初めての経験だ。

予め用意していた鍵を押し入れ、ガチャリと回す。

「ただいま!」

シャンクスが乱暴に靴を玄関に脱ぎ捨てる。

「おかえりなさい」

リビングに入るとキッチンからにこりといつもよりは少し疲れた顔の○○が出て来る。

「え?……だ、大丈夫なのか?」

シャンクスは不安そうに○○を見る。

「うん!薬飲んで、いっぱい寝たら元気になったの!あ、薬飲む為に今日は先にご飯食べちゃった」

「ごめんね」と小さく謝る。

「いや、それはもちろん良いが……」

シャンクスはジロジロと無理はしていないか見る。

「ありがとう、シャンクス」

「ん?」

「寄り道とかしないで帰って来てくれたのね」

○○は嬉しそうに笑った。

「………………」

シャンクスはおもむろに○○に近付いてしゃがむ。
そして、大きく息を吐き出した。

「え?きゃっ?!」

何だろうと思っている間に、シャンクスが○○を担ぎ上げる。

「悪いな、○○。可愛すぎて限界だ」

シャンクスはニヤリと笑うと寝室を目指す。

「え?え?!しゃ、シャンクス?!夕飯は?と、言うか、私、病み上がり」

○○は慌てて暴れる。

「まァ、良いじゃねェか!優しくするからな」

シャンクスはそう甘く囁くと、寝室の扉を閉めた。











「……」

「わ、悪かったよ」

「……」

「ごめんな」

「……」

「でも、汗かいて元気になったろ?」

「っ!!」

(可愛いなァ。襲うか)

「ちょっと!シャンクス!!」

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