01
「もうすぐ社長」
ベックマンが子機を片手にシャンクスの元へやって来た。
「なんだ?その‘もうすぐ社長’って!」
シャンクスは笑いながらパソコン画面から顔をあげた。
「会社を起こすんだ。なら、慣れておいて損はない」
ベックマンは紫煙を吐き出した。
「はぁ、慣れ……ねぇ」
シャンクスはため息と共に言葉を吐いた。
学生時代からの仲間とつるんでとある会社で10年程修行を積んだ。
今や実績のある仲間と共に、今まさに会社を立ち上げようとしていたのだ。
「で、電話だ」
ベックマンが子機を投げて寄越す。
「おォ!誰からだ?」
しっかり保留ボタンを押されているのを確認してから聞く。
「鷹の目だ」
「鷹の目!!ずいぶん懐かしいな!」
シャンクスはライバルでもある友人の名を聞き、嬉しそうに電話に出る。
「もしもし?鷹の目か?」
『赤髪か?』
懐かしい友人の低い声が耳元から聞こえた。
赤髪と言うのはシャンクスの通り名で、それは見た目から取ったものである。
ちなみに、鷹の目と言うのも、金色の鋭い目から来ている。
「懐かしいな!どうだ?元気か?」
『あァ。お前に行って欲しい所がある』
挨拶も抜きで鷹の目は本題に入る。
「行って欲しい所ォ!?」
なんのこっちゃいとシャンクスの声は裏返る。
『あァ、センゴクを覚えているか?』
鷹の目の言葉に昔世話になった警察のお偉いさんを思い浮かべる。
「あ?センゴクのオッサンまだ引退してないのかよ?」
シャンクスは笑いながら声を出す。
『なんでも、引退祝いをするんだそうだ。お前にも声をかけろとガープに言われてな』
鷹の目は年上だろうが、年下であろうが、構わず呼び捨てにする。
「ガープのオッサンも来るって事はルフィもエースもサボも来るのか?」
『あァ、ロロノアも来るらしい。お前の仲間にも連絡してやれ』
「……そんなに入れる所なのかよ?」
『らしいぞ。場所はーー』
よく聞く高級ホテルの名前。
「分かった。詳しい日程が出たら教えてくれ」
『分かった』
用件だけ言うと電話は切れた。
「センゴクさんもとうとう引退か」
ベックマンが煙草を吹かした。
「あァ、時代の流れも早いな」
シャンクスが少し感傷的に笑った。
「もうすぐ社長、そんな事言ってないでチャッチャと仕事しろよ」
ベックマンは子機を受け取るとそう言う。
「分かってるよ!」
シャンクスは笑いながら答えて、再びパソコンに目を落とした。
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