その後の時間
ある休日の日。
相変わらず忙しく、不定期な休みのシャンクスは仕事に出ている。
代わりにシャンクスの家に遊びに来ているのはエース、サボ、ルフィの3兄弟である。
「私、お仕事でもしようかな?」
ぽつりと呟いた○○。
「何だ?○○!もう夕飯か?!」
ルフィが目を輝かせる。
「あ、違うの。最近シャンクスさん忙しくて、家にいないから、一人の時間が増えちゃって」
○○は笑いながら訂正をする。
「暇なの?」
サボが不思議そうに尋ねる。
「それもあるけど、何だか悪い気がして」
「悪い?」
エースが不思議そうに○○を見る。
「うん。シャンクスさんが働いてるのに、家にいて時間が空くと借りたマンガ読んでの生活だから」
○○は苦笑する。
「良いなぁ!俺と代わってくれ!」
ルフィがズルイと声を出す。
「ふふ、それはダメ!私ちゃんと大学まで出たもの」
○○はにこにこと指で小さくバツを作る。
「そっかー!」
ルフィは残念そうに口を尖らせた。
「残念だったな、ルフィ」
サボはハハハと笑った。
「それで、仕事しようか、か」
エースは呟く様に頷いた。
「なら、オヤジに頼んでやるよ!」
エースはにかりと笑った。
「え?エースのお父さん?」
○○は不思議そうに尋ねる。
「いや、そっちじゃなくて、バイト先のオヤジ!まァ親父より親父っぽいけどな」
エースはにししと楽しそうに笑った。
「へぇ」
○○は目を丸くする。
「エースの父ちゃんと母ちゃんは体が弱いから田舎暮らしなんだよ」
ルフィが説明する。
「あ、そうなんだ」
○○はこの3兄弟が義兄弟である事を思い出した。
「シャンクスさんの修行先がエースの父ちゃんの会社だったんだよ。今はもう無いけどな」
サボが付け加える。
「へぇ!そんな繋がりもあったのね」
○○は納得する様に頷いた。
「俺のバイト先だから知らない奴ばっかりより良いだろ?大きな会社だから、雑用とかたくさんあるしな」
エースがにかりと笑う。
「そうね!シャンクスさんにも相談してみる!ありがとう、エース君!」
○○が笑いかけるとエースは嬉しそうに笑った。
「仕事?」
久し振りに我が家で愛しの妻の手料理を頬張りながらシャンクスが不思議そうに首を傾げる。
「そう」
○○はこくんと頷いた。
「生活費か?お小遣い足りないか?なら増やすぞ?」
シャンクスはぱくりとトンカツを口に入れる。
「え?ううん!違うの!」
「違う?」
慌てて否定する○○にシャンクスはますます不思議そうな顔をする。
「あのね、昼間の時間をもて余して」
○○は困った様に笑う。
「良いじゃねェか、のんびりすりゃ」
シャンクスはキャベセンに箸を伸ばす。
「悪いなぁって」
「悪い?」
「シャンクスさんが働いているのに、私がそのお金でのほほんと生活するのに……」
○○の言葉にシャンクスは箸を置く。
「俺は奥さんを働かせるほど甲斐性無しじゃないぞ?」
「へ?そう言う意味じゃなくて」
「じゃあ」
「…………前までは一人でいるのが良かったの。あの人が来るのが怖かった」
○○の言葉にシャンクスは押し黙る。
「でも、今はシャンクスさんやエース君達のお陰で凄く幸せ。だから、外の世界も知りたいなぁって」
○○は恥ずかしそうに笑った。
「…………うむ」
シャンクスは小さく唸る。
「それをね、エース君に話したら、エース君の会社紹介してくれるって」
「ダメだ」
「え?」
キッパリと言い切るシャンクスを不思議そうに見る。
「白髭で働く?ふざけるな」
シャンクスの言葉も目付きも厳しいものだ。
それに○○は不安そうに体を震わせる。
「そんな所で働かせるくらいなら、俺の所で働けば良いだろ?」
シャンクスは口を尖らせて拗ねたように言う。
どうやら、怒っているのではなく拗ねている様だ。
「……シャンクスさん」
「俺はお前にどんな時でも出迎えて欲しいんだよ。前にも言ったが、○○の作る飯が好きだ。それに○○の笑顔が俺の癒しなんだよ。疲れて帰ってきて○○を抱けばまた元気に働ける。だから、お前が働く事に反対だ」
シャンクスはため息をつく。
「だが、○○がせっかく社会復帰しようとしているなら、俺はそれを応援したいと思うよ。同世代の同性の友達だって欲しいだろうしな」
シャンクスは困った様に笑う。
「シャンクスさん……私……」
シャンクスの心遣いに○○は胸を突かれる。
「まァ、試しに俺の会社で働いてみるか?雑用とかならあるぞ?」
「良いん……ですか?」
「あァ、目の届かない所にいられるよりましだからな」
「ありがとうございます!頑張ります!!」
シャンクスの笑顔に○○は嬉しそうに頭を下げた。
「あ!あいつ○○に近付いた!」
「……お頭」
「可愛いなァ、○○」
「…………お頭」
「お!頑張ってるな!」
「………………お頭、仕事しろ」
「無理だ!」
「悪い、○○。お前クビだ」
「「えぇ?!」」
(困った夫婦だ)
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