29
「あれ?流されたのか!」
風呂に入りながら、先程の会話を思い出す。
自分はシャンクスに告白をした。
それに対してシャンクスは夫婦だから当たり前だと言う。
なら、シャンクスの気持ちはどこにあるのだろうか?
「けじめは付けるって言ってた……よね?」
○○は考える。
「って、事は浮気とかしないって事?でも、それじゃあ私の事をどう思ってるのか解らない……」
○○はため息をつく。
「これは、聞いてみるしかないかな」
○○は微妙な気持ちに決着を付けようと決意を固めた。
風呂から出ると、シャンクスは酒を飲みながら3人がけソファーの真ん中に座ってテレビを見ていた。
○○は意を決してシャンクスの隣に座る。
「ん?どうした?」
シャンクスは珍しそうに○○を見る。
いつもは一人がけソファーに座るか、風呂に入ると自分の部屋に行くからだ。
「……嫌ですか?私がここに座るの」
○○は真っ赤になる顔をそのままにテレビを見て、聞いた。
「いや」
ふと、柔らかく笑いながらシャンクスは首を振る。
気にした様子なく酒を飲みながらテレビを見るシャンクス。
ニュースが流れている。
覚醒剤の大きな組織が壊滅状態だと報じられる。
○○は画面を見ながらシャンクスに寄りかかってみる。
既にテレビの内容は頭には入っていない。
「…………○○?」
「嫌なら言ってください」
「あァ」
○○の言葉にシャンクスは穏やかに笑いながら頷いた。
そんな余裕が悔しくて、○○はやはり相手にされてないと少し悲しくなった。
「……すみません」
○○は恥ずかしいやら悲しいやらでシャンクスの隣から立ち上がる。
「……どうした?」
シャンクスは酒を飲みながら○○を見上げる。
「……寝ます」
○○の声があまりにも元気が無い。
シャンクスが○○の手を引くと、あっさりとソファーに逆戻りする。
むしろ先程よりも、シャンクスとの間には隙間がないほど近かった。
「まだ、寝るなよ」
シャンクスは○○の耳元で低く声を出した。
「っ!!」
その声に○○の顔は真っ赤になり、背中はぞくりと震える。
○○の反応に満足そうに頷くとシャンクスの右手は○○の右肩まで回して乗せ、引き寄せる。
「しゃ、シャンクス、さん!」
○○は焦った様に声を出した。
「そう言や、お前エースとキスしたらしいじゃねェか」
「え?あ!」
こんな時になんて話題だと○○は困った顔をする。
「こっちは色々と我慢してるってのによ」
シャンクスはニヤリと楽しそうに笑った。
「あ、あの時は……それどころじゃなくて」
○○は辛そうな顔をする。
エースに大怪我をさせた負い目がまだ○○を縛り付けていた。
「ふっ、解ってるさ。ただ、たぶん、あー、妬き餅って奴かな?」
どう思う?とシャンクスは笑った。
「え?いや、解らないけど、多分」
○○はそうだったら良いなと頷いた。
「なら」
シャンクスはゆっくり○○に近付く。
ちゅっと音を立てて触れるだけの口付けを贈る。
「……」
○○は顔を紅くした。
嬉しいのと恥ずかしいのと、色々な感情が交錯する。
「……あァ、なるほど」
「ど、どうしたの?」
何かに納得したシャンクスに○○は不思議そうに尋ねる。
「俺もお前が好きみたいだ、○○」
シャンクスは笑みを深くした。
「へ?あ、え?」
○○はわたわたと慌てる。
「いや、今キスしてみて気付いた」
「お、遅っ!!」
○○は思わずそう突っ込みを入れた。
「悪かったな。なぁ、もう一回して良いか?」
シャンクスは○○に顔を近付けて聞いた。
「う、うん」
○○は小さく頷いた。
初めは触れるだけ、そして、開いた口にシャンクスの舌が入り込む。
「ん……は」
ぞくぞくと長い、深い口付けに○○は体がとろけそうな感覚を味わう。
それは、初めての感覚だった。
[ 31/39 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]