22
『悪い、少し遅れる』
そうシャンクスから連絡が入ったのは予定時刻の少し前。
「そうなんですか?残念です。気を付けてくださいね」
『あァ、悪いな』
シャンクスはすまなそうな声と共に電話を切った。
「何だ?シャンクスまだ来ないのか?」
ルフィがコントローラーをいじりながら唇を尖らせる。
「うん。お仕事長引いてるみたい」
○○は諭すようにルフィを見る。
「えー、俺そろそろ飽きた!」
ルフィはソファーにごろんと寝転んだ。
「確かにな」
エースもコントローラーをぽんと置いた。
「なら、行くか?」
サボがぽつりと呟いた。
「お!良いな!」
ルフィが起き上がり賛成する。
「ここで待っててもシャンクスの二度手間だしな」
エースはサボの意見に頷いた。
「だ、ダメだよ。シャンクスさんと約束したし」
○○は慌てて首を左右に振る。
「大丈夫だ!」
ルフィはにししと笑う。
「大丈夫じゃなくて……」
「迷子にはならないぞ。この町は俺達の庭みたいなもんだしな」
サボがニヤリと笑う。
「そ、そうじゃなくて」
「ほら!行くぞ!○○だって早く行きたいだろ?」
エースが○○の手を取る。
「そ、そうだけど……」
○○は困った顔をするが、エースの力に逆らえず、立ち上がる。
「じゃあ、ちょっと待って。食器片付けるから」
少しでも時間稼ぎをしようと口を開く。
「そんなの良いよー」
ルフィが面倒そうに口を尖らせる。
「ダメ!ここはシャンクスさんの家なんだから、綺麗にしなきゃ!」
○○が腰に手をあてる。
「確かシャンクスの家ってもっと汚かったよな?」
エースがぽつりと呟いた。
「……そう言えば……」
初めて来た時の事を思い出す。
もう、ずいぶん前の事の様だ。
「○○の言う通りだな。片付けよう。俺達はゲームを片付けよう」
サボが頷いた。
「えー!」
「ルフィ、お前のマンガ捨てるぞ」
「っ!!それは嫌だ!!!」
サボの脅し文句にルフィがゲームを片付け始める。
「じゃあ、俺は食器を運ぶ」
エースがお盆を持って片付ける。
「よし、俺はごみを」
サボは分別しながらごみを片付けた。
○○が食器を洗い終わるとすっかり部屋は綺麗になった。
「よし!じゃあ、行くぞ!」
エースは○○の手を掴む。
(仕方ない)
○○はやれやれと3兄弟に付いて、外に出た。
「チッ。こんな時に誰だよ」
しばらく歩いてからエースは不機嫌そうに舌を鳴らした。
「え?」
「付いて来てるんだよ。俺達の後を」
サボもうんざりした様だ。
「だから、さっきから変な道通ってるのか?」
ルフィがそう声を出す。
「お前か?ルフィ?」
エースがジロリとルフィを見る。
「俺がそんなヘマする訳ないだろ!」
ルフィが怒る。
「お前か?サボ?」
「俺はその辺上手くやる。お前だろ?エース」
「…………心当たりが有り過ぎる」
サボに言われ、エースは苦虫を噛んだような顔をする。
「え?」
「悪いな。巻き込んじまって。……○○?」
エースが眉間にシワを寄せる。
「ごめんなさい。私かも」
○○は片手で口を押さえる。
顔は真っ青だ。
「ルフィ。先に行ってシャンクスに知らせて来い」
「えー?!俺?」
「お前が一番身軽だろ?頼む」
「っ!!任せろ!!」
エースの笑う顔にルフィは嬉しそうに笑うと走り出した。
「よし、巻くぞ」
「おう!」
エースとサボは慣れたように声を出すと、○○の手を取って走り出す。
「チッ!!」
後ろから舌打ちが聞こえた。
それから、複数の走る足音。
エースとサボはビルの隙間や建物の影を通り抜ける。
「しつこいな」
サボがはぁはぁと息をしながら呟く。
「やるか?」
エースがニヤリと笑う。
「だな」
2人は立ち止まると後ろを振り返る。
○○ははぁはぁと肩で息をする。
追い付いて来た男達もはぁはぁと息を荒くする。
「ガキども、その女置いてどっか行きな」
男の一人がニヤリと笑う。
「あァ?嫌に決まってんだろ」
エースがジロリと睨む。
「悪いようにはしねーよ」
「しますって顔してるじゃねーか」
サボが嫌そうに吐き捨てる。
「このガキィ!!人が下手に出てりゃ!!」
「やっちまえ!」
男達はエースとサボに襲い掛かる。
「え、エース君!サボ君!」
○○の声にちらりとエースとサボは○○を見る。
ニヤリと笑う顔が楽しそうだ。
2人は大の男と取っ組み合い、殴りあう。
「っ!!」
○○はその様子を見ていられなく、目を閉じてしまう。
「ふぅっ!」
エースの息を吐く声に恐る恐る目を開ける。
「っ!!」
強い!2人はあっという間に男達を倒した。
「俺、警察呼んでくる。確かそこに交番があったからな」
サボはそう言うと表通りにいく。
「頼んだぜ」
エースは疲れた様に笑った。
「あ!あんな事して!危ない!!」
○○は涙目でエースを睨む。
「大丈夫だよ。俺、何か知らないけど。ああ言う奴等に良く絡まれるからな」
エースはニヤリと笑う。
「それでも!心配する!!」
○○は怒る様に声を荒くする。
「○○。悪かった」
エースが○○を引き寄せ様と手を伸ばす。
「っ!!」
「エース君!!!」
ガツンと言う音と共にエースが倒れ込む。
「舐めるなよ、ガキィ……」
倒れた振りをしていた男が一人、そこらにあったガラス瓶でエースを撲ったのだ。
「エース!!!」
「よし、行くぞ」
○○をハンカチで口を押さえる。
どうやら薬を嗅がされたらしく、視界がぶれていく。
「しゃん、くす、さん……」
○○は意識を手放した。
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