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「大丈夫か?疲れたか?」

久しぶりの外出に○○の顔色が少し暗い。
先程エース達と会った時は楽しそうにしていたと言うのにだ。

「大丈夫です。せっかくシャンクスさんとお出掛けしているんです」

○○はにこりと笑った。
が、少し無理をしている様にも見える。

「……そうか?無理はするなよ」

シャンクスは○○の頭を撫でる。

最近のシャンクスは良く○○に触る。
それは、元夫である男から受けた心の傷が癒える様な気がして○○は気持ちが落ち着いていくのを感じていた。
最初こそ体がびくりと震えていたが、今はシャンクスであればそれは無くなった。

「……はい。実は少し疲れました」

○○は困った顔をする。

「そうか。あー、少し早いが昼飯にするか」

「はい!」

「ラーメン……よりも、今日はゆっくり座れる所が良いな」

「お願いします」

「よし、行くか」

シャンクスは柔らかく笑うと○○を促す。






「オムライス美味しかったです!」

○○は大満足で頷いた。

「まさか、腹の減り過ぎで気分が悪かったとわな」

シャンクスは楽しそうに笑う。

「っ!もぅ、言わないでください!自分でも分からなかったんですから」

○○は顔を赤くして照れている。

「だはは、可愛いな」

シャンクスはよしよしと○○の頭を撫でる。

「……っ」

○○は小さな幸せを噛み締めながら小さく笑った。


「わっと」

「ご、ごめんなさい!」

シャンクスの驚いた声で振り返るとバランスを崩した若い女性に飲み物をかけられていた。

「良いよ、気にしなくて。悪いね、飲み物」

シャンクスは笑いながら女性に接する。

「いえ!本当にすみません!あの、クリーニング代を」

「大丈夫、安物だよ」

女性が財布を出そうとするのをやんわりと断る。
女性の頬がほんのりと赤くなるのを○○はぽーっと見ていた。

(モテるよね。この態度にこの容姿)

○○は女性が「何かあったら連絡くれ」と名刺を渡しているのを見た。

「○○?」

女性を見送ってシャンクスが振り返る。名刺はジャケットのポケットに無造作に入れられた。

「……シャンクスさん。それ洗った方が良いかも」

○○はクスクスと笑いながら汚れたジャケットを指差す。

「あァ?そうか。そうだな」

シャンクスはトイレの近くまで来て「ここを動くなよ」と念を押してから、入って行った。

「ふふ、何だかシャンクスさんらしい」

○○は素直に近くにあったベンチに腰を下ろす。
携帯のバイブがメールを受信した事を知らせる。

「誰かな?あ、ルフィくんだ」

○○はほんわかとした気持ちになり、下を向き携帯を操作する。
馴れない携帯に集中していて、背の高い男が近付くのに気が付かなかった。

「…………○○?」

低い声に○○はぞくりと背中に嫌な冷たい汗を感じた。
頭に感じる威圧感に恐ろしくて顔を上げる事が出来ない。

「フッフッフッ……!!相変わらずつれねェなァ」

男は無造作に○○の顎を掴むと、無理矢理顔を上げさせ、目線が合う。

「な……」

○○は声を出そうとしたが、恐怖で喉がカラカラになり、声が上手く出なかった。

「何やってるんだ?こんな所で、一人で」

男ーー元夫であるドフラミンゴがニヤニヤと笑う。
色の濃いサングラスのせいで表情は解らない。

「あ……っ」

ガツンと無理矢理立たされ、壁に押し付けられる。
通路から少し奥まってしまい、他の人間の目は無くなった。

「フッフッフッ……!!イイ顔だな。物欲しげな……!!」

ドフラミンゴの言葉に○○は懸命に頭を左右に振る。

(怖い!恐い!シャンクスさん!!!)

○○はギュッと目を瞑る。

「オイッ!!!何をしてる!!!」

明らかに怒っている聞いた事も無い低い声が○○の耳に入ってくる。

「赤髪じゃねェか。なんでお前が……?」

ドフラミンゴが不思議そうにシャンクスを振り返る。

「しゃ、んくす、さん」

○○は自分の体から力が抜けるのが解る。

「離せ」

シャンクスはドフラミンゴの手を○○から離させる。

「フッフッフッ……。お前に関係ないだろ?」

余裕の笑いでドフラミンゴはニヤリと笑う。

「こいつは俺の奥さんなんだよ」

シャンクスは○○を自分の後ろに隠して、ギロリとドフラミンゴを睨む。

「…………フフフフフフ!!!そう言う事か!!」

ドフラミンゴは至極楽しそうに笑う。

○○はシャンクスのシャツの後ろにしがみつく。

「フッフッ……!!他の男の手垢がついたなら、こちらから願い下げだ」

ドフラミンゴはニヤリと笑う。

「じゃあな、○○チャン」

「早く失せろ」

「フッフッフッ……!!怖いな」

ドフラミンゴはシャンクスのどすの効いた声にも驚かずに、マイペースにその場を離れた。

完全にドフラミンゴの気配が消え、たっぷり二十秒ほど経ってから、シャンクスが○○を振り返る。

「○○。大丈夫か?悪かった、ジャケットなんて洗ってる場合じゃ無かったのにな」

シャンクスは○○の顔を覗き込む。

「……シャンクスさん!」

○○は堪えていた涙をポロポロと流しながらシャンクスに抱き付いた。

「もう、大丈夫だ!何であいつがこんな所に……」

後半部分は小さく呟く。

「で、でも、これで終わったんですね?」

「ん?」

「だって!もう私には興味が無いみたいな事言ってました!」

○○は涙目のまま、そう希望を見出だしていた。

「そうだな」

(だと、良いが)

シャンクスは眉間にシワを寄せて、ドフラミンゴが消えた方を見つめた。




「ドフラミンゴの野郎にバレた」

「お頭、大丈夫か?」

「あァ、予定が少し早まるだけだ」

「フッ、仕方ない。皆にも連絡しておく」

「頼りにしてるぜ!相棒!!」

「あァ、任せておけ」

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