18
「帰ったぞー」
自宅の玄関を開けて家に入る。
酒を飲んだのでタクシーで帰ってきた。
「お帰りなさい、シャンクスさん!」
○○は嬉しそうに玄関までシャンクスを迎えに行く。
シャンクスはやって来た○○を掴まえ、胸にかき抱く。
「しゃ、シャンクスさん!?」
○○は焦るようにシャンクスから逃れようとじたばたと動くが、シャンクスはそれを強い力で封じる。
「○○……」
酒の匂いと共にシャンクスの低い声が耳元で呟く。
「っ!」
○○は怖い過去を思い出すが、不思議と恐怖はない。
背中がぞくりとした。
「俺が守ってやるから。あいつの所に行く事なんかない。あいつから俺が守ってやるから」
シャンクスの低い声が耳に入り、ゾクゾクと背中を震わせる。
「シャンクス……さん?」
○○は不思議そうにシャンクスを見ようとするが、力強く抱き締められたままで、何も出来ない。
そして、シャンクスの力が抜け、○○に体重がかかる。
「うっわ!シャンクスさん!お、起きて!!」
○○はずるずるとシャンクスの体重を支えきれずに倒される。
シャンクスは呑気に寝息をたてていた。
「…………ありがとう、ございます」
○○はシャンクスの言葉に涙を滲ませる。
(あぁ、きっとこの人は私の結婚生活を知ってしまったんだ)
○○は涙を流し、困った顔をする。
(同情、哀れみ、何の感情が貴方にそう言わせたのかしら……)
○○は自分の膝にあるシャンクスの頭、赤い美しい髪を撫でる。
「…………愛情なら良いのに……」
○○は口にしてから慌てて口を手で押さえる。
「…………シャンクス……」
(いつからだろう。私はこの人に恋をしている)
○○はそう言えるはずもなく、心の中でシャンクスに言う。
(好きです。貴方が)
○○は涙をポロポロと流しながらシャンクスを優しく撫で続けた。
シャンクスは夢を見てた。
すぐに夢だと理解する。
何故なら自分が自分を見ていたからだ。
○○が泣いている。
「泣くなよ」
もう一人のシャンクスは○○に手を伸ばす。
「なァ、どうすれば泣き止むんだ?」
シャンクスはしゃがみこむ○○に合わせて、自分も正面にしゃがんだ。
「ーー」
○○は口を開くが、解らない。
「○○。俺はお前が……」
(何だ?)
シャンクスは不思議そうにもう一人の自分の声を聞く。
(俺はお前が……なんだよ?)
シャンクスは苛立たしげにもう一人の自分を促す。
「お前が泣くのは嫌なんだよ」
シャンクスはそう続けた。
(なるほど、確かに)
シャンクスがそう思って見ると、もう一人のシャンクスが○○を抱き寄せ口付ける。
(は?)
シャンクスは驚いてその場面を見る。
「俺は、お前が……」
シャンクスは○○を押し倒す。
○○の目には涙はなく、頬に朱が射していた。
(いや、待て!待て!)
「待てって!!!」
がばりとシャンクスは叫びながら目を覚ました。
「はぁはぁはぁ、夢か。いや、知ってたけどよ」
汗をぐっしょりとかいたシャンクスがため息をつく。
「何だあれ?あれか、溜まってんのか?そう言や、結婚してからヤってないな……」
シャンクスは呟く様に夢の分析をした。
「あ、シャンクスさん!おはよ」
「うわぁぁぁぁ!!!」
「ございます……」
リビングへと現れた○○にシャンクスは叫び声をあげる。
○○はショックを受けた様にシャンクスを見る。
「……私、玄関で寝ちゃったシャンクスさんをここまで運んだんですけど……」
○○はしょんぼりと呟く。
「わ、悪かった!夢がな!悪かった!」
シャンクスは慌てて謝る。
「………………エッチな夢でも見てたんですか?」
○○は赤くなりながら困った顔をする。
「っ!!」
シャンクスは慌ててトイレに駆け込んだ。
「○○!あれは別に」
「……」
「健康、健全な男の生理現象でな」
「……」
「別にお前にやましい事を思ったり……は」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「なぁ、お前以外抱いたらやっぱり浮気なのか?」
「っ!!し、知りません!!」
[ 20/39 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]