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「帰ったぞー!」
自宅マンションにそう言いながらシャンクスは入る。
「お帰りなさい!お疲れ様でした」
にっこりと笑って○○はシャンクスを出迎える。
「○○、これがベン・ベックマン。強面だけど、良い奴だから」
シャンクスはベックマンを指で指す。
「初めまして、○○と申します。宜しくお願いします」
○○は緊張しながらも深々と頭を下げる。
「ベックマンだ。話はこいつから聞いてる」
ベックマンはそう声を出した。
「ほれ、玄関にずっといるのもおかしいだろ。入ろうぜ」
シャンクスは○○とベックマンを促す。
「お土産」
「何ですか?」
「開けてみな」
「ケーキ!!」
「旨いんだと」
「美味しそうです!ありがとうございます!シャンクスさん!」
と、ベックマンの目の前で他人から見ればイチャイチャしている様にしか見えない新婚夫婦だ。
しかし、本人達は同居している仲間同士の様な感覚らしい。
ベックマンは小さく笑うと2人についてリビングへと向かった。
「えっと、ベックマンさんは車ですか?」
○○は冷蔵庫の前でベックマンをカウンター越しに振り返る。
「マンションが近くだから歩いて帰れる」
「なら、お酒用意しますね」
「すまんな」
「いいえ!」
ベックマンににこりと○○は笑いかけた。
食卓には手の込んだ料理が用意してあった。
エビチリ、エビマヨ、中華スープ、中華サラダ、炊き込みご飯も味は中華風。
今日のメニューはお酒に合う中華風の様だ。
「どうぞ」
ビールを持って現れた○○はグラスをベックマンに渡すとビールをそそぐ。
「旨そうだ」
「どうぞ!だいぶ料理の感覚も戻って来たので、食べて下さい」
ベックマンの言葉に○○は嬉しそうに取り皿を渡す。
ベックマンは進められるままにエビチリに手を伸ばす。
「うん、旨い」
「ありがとうございます」
ベックマンの言葉にホッとしたような、嬉しそうな顔で笑った。
「○○……」
「はい?」
シャンクスの声に○○はを振り返る。
「お前の分は?食べたのか?」
シャンクスは不機嫌そうに聞く。
「え?いえ。まだ」
○○の声に、シャンクスは取り皿に適当に料理を盛り付けると自分の隣の席に置く。
「ちゃんと食え。放っておくとすぐ忘れるんだから」
シャンクスは怒った様に言う。
「す、すみません。あまり食べる習慣が無くて」
○○は困った顔をする。
「…………本当にどんな生活してたんだ」
シャンクスは眉間にシワを寄せて○○の顔を覗き込む。
「お頭」
「…………えっと……」
○○は少し顔色を悪くして、困った顔をする。
「いや、悪い。」
ベックマンの声にシャンクスはばつの悪そうな顔をする。
「いえ……。っ!冷めちゃいます!早く食べましょう!」
○○はにこにこと笑った。
「そうだな。このスープも旨い」
ベックマンは落ち着いた声で言う。
「ありがとうございます!」
「この炊き込みご飯も旨いぞ!!」
シャンクスは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!!」
○○は本当に嬉しそうに笑った。
「邪魔したな」
ベックマンが身支度を整えて玄関に立つ。
「○○も楽しそうにしてたしな」
シャンクスはほろ酔いで笑った。
「ベックマンさん!これっ!キャッ!!」
○○はお土産用のバターロールを渡そうとしたが、玄関マットに足を取られる。
「っと、大丈夫か?」
ベックマンが危なげなく○○を抱き止める。
ふわりと香る煙草の匂いはいつもベッドで嗅いでるのと同じ匂い。
「っ○○?!どこか痛いのか?」
シャンクスも慌てて声をかける。
「い、いえ!す、すみません」
カーッと赤くなる○○は何でもないと首を振る。
「そうか。気を付けろ」
ベックマンはそう言うと出て行った。
○○は赤い顔のまま、ベックマンが出て行ったドアを見つめた。
「………………大丈夫か?」
「え?あ!はい!」
シャンクスの少し不機嫌そうな声に慌てて頷いた。
「何睨んでる」
「別に」
「…………鬱陶しい」
「ベックマン、○○は俺の奥さんだからな」
「……ごっこだろ?」
「だとしても!」
「………………はぁ」
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