15

シャンクスと○○が一緒に暮らし始めて数週間が過ぎた。


初めはおどおどと戸惑った様に接していた○○だったが、次第にシャンクスの人柄に心を開いていった。

元より明るい性格だったらしく、今ではシャンクスと楽しく暮らしている。

シャンクスは会社を起こすのに忙しいらしく、朝早く出掛け、夜遅く帰ると言う毎日を繰り返していたが、毎朝珈琲を2人分淹れる事と、夕食を2人でとる事だけは欠かさずにいた。



「良くもまァ、続くもんだな」

ベックマンが加え煙草で言う。
手はちゃんと仕事をしている。

「あ?何がだ?」

シャンクスはパソコン画面を見たまま聞き返す。

「新婚ごっこだ。本物の新婚夫婦みたいだな」

ベックマンはニヤリと笑うと紫煙を吐き出す。

「あァ?そうだな。意外と楽しいしぞ」

シャンクスは作成した書類をプリントアウトする。

「嘘が真にってやつか?」

ベックマンは意外そうに声を出す。

「それはねぇな。ただ、○○とは気が合うってか、一緒にいて楽ってか。その代わり、ドキドキ感はねー。女として見てねぇって事だな」

シャンクスは書類を確認して判子を押す。

「……そいつは……」

ベックマンは片眉を上げる。

「そう言や、○○がお前に会いたがってたぞ」

シャンクスは書類をベックマンに差し出す。

「俺に?」

ベックマンは書類を受け取る。

「あァ、お前の話をしたら会いたいってさ。妬けるな」

だははとシャンクスは笑う。

「そうか。ここ、間違ってる」

「はっ?どこだよ?!」

「ここだ」

「…………うわっ」

「やり直せ」

「……はぁ。分かったよ」

シャンクスは書類をベックマンから取ると、またパソコン画面と睨めっこをする。





○○は朝シャンクスを見送ると、掃除、洗濯をする。
外に一人で出るのは怖いので、殆どを家の中で過ごす。

家事を一段落させると、ルフィとエースに借りたマンガを読むのが日課になっていた。

ルフィとエースとサボはシャンクスがいなくても、遊びに来る様になり、休日のシャンクスがいない昼間などはとても心強い味方である。
しかも、自分を助けてくれたガープの孫と言う事もあり、安心も出来た。


「今日の夕飯は何にしようかな?」

○○は冷蔵庫の食材を見て考える。


ーーピロローン


「ん?メール」

○○は携帯電話を手に取る。


前に結婚していた時、元夫は外部と○○が繋がる事を極端に嫌い、持っていた携帯は解約させられた。
もちろん、電話、パソコン類も無かった。
外部の情報はテレビと元夫が持ってくる雑誌や本、新聞のみだった。


○○が手に持つ携帯電話はシャンクスが買い与えた物だ。
シャンクスは固定電話を持っていなかったので、無いと不便と言って買い与えたのだ。
ちなみに機種はシャンクスと色違い。三年間携帯を持っていなかったので、操作が解らず、シャンクスも自分のだったら解るからと言う事でだ。

ちなみにアドレス帳にはシャンクスを始め、ルフィ、エース、サボの名前が連なっていた。


「あ、シャンクスさんからだ!『今日、ベックマン連れて行く』……。ゆ、夕食何にしよう……」

○○は頭を捻りながら『分かりました。気を付けて』と送った。





「ほら、気を付けてだってよ!」

シャンクスは返信してきたメールをベックマンに見せる。

「分かったから仕事しろ」

ベックマンは呆れた様に紫煙を吐いた。

「良いよな、こう言う色気の無いメールも!素っ気ない訳じゃねーしな」

シャンクスは楽しそうに笑う。

「お前ら……ヤってるのか?」

不思議に思い、ベックマンが口を開く。
既に数週間。男と女が同じ屋根の下に暮らしているのだ。
しかも、名目上夫婦として。

「あァ?!ヤってる訳ないだろ?」

シャンクスは怒った様に言う。

「……怒るところなのか?」

ベックマンは不思議そうに聞く。

「あの調子だと、あいつ、ドフラミンゴに何されてるか分かったもんじゃねーよ!ちょっと近付くだけでも反応されるし、触ろうもんなら弾かれる!まぁ、ちょっと……」

抱き締めはしたが、とシャンクスは腹立たしげに言う。

「……そうか」

「今、鷹の目に調べて貰ってる」

「そんな事してどうする?」

「……わからねぇ」

「は?」

「わからねぇが、知っておきたい。じゃないと、ドフラミンゴがまだ○○を諦めてないのか、もう○○にとって安全なのかわからねぇからな」

シャンクスは椅子の背もたれに体重を乗せて座る。

「……なるほどな」

ベックマンはふっと笑う。

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