08

シャンクスは8時に仕事を終え、帰路についていた。

車に乗って自宅マンションへと向かう。

「今から帰れば8時半。ちょうど良い時間だな」

シャンクスは腕時計を確認した。

誰かが家で自分の帰りを待っていると言う経験があまりなかったせいか、少しだけうきうきとしていた。

「まだ、時間早いし、夕飯はどこかに出れば良いな」

などと考えていた。




地下駐車場に車を停め、エレベータに乗り、部屋へ向かう。

「隣の家はシチューか?」

良い匂いがして、腹の虫が鳴く。

鍵は持っているが、何となくドア前のインターホンを押した。

部屋の中からは物音がしない。

(あれ?)

シャンクスは不思議そうにしながらも、自分で鍵を回し、ドアをあける。

「ただいまー」

シャンクスが声をかけながら入ると、電気がついた。

「お、お帰りなさい」

○○がホッとした表情でリビングの方から出てきた。

「何だ、いるじゃねーか」

シャンクスはにかりと笑った。

「あの、シャンクスさんだって解らなかったので」

○○は照れながら言う。

「それもそうだな」

シャンクスは笑いながらリビングへと入る。



「………………え?」

シャンクスは驚いて部屋を見回す。

綺麗になった部屋。分別されたごみ。
奥には畳まれた洗濯物が見える。

「えっと……。暇だったので、掃除してみました」

ダメでしたか?と遠慮がちに○○はシャンクスを見上げる。

「いや!いやいや!助かった!ありがとう!」

シャンクスはにかりと笑って○○を見る。

「後、お風呂も沸かしてありますよ。それと、夕飯も軽くですけど作りました。どちらを先にしますか?」

「……」

○○から笑顔で繰り出される言葉にシャンクスは呆然とする。

「…………す、すみません。余計な事でした……」

「もう一声!」

「……は?」

シャンクスの真面目腐った声に○○は聞き返す。

「いや、新婚で、「お風呂にする?ご飯にする?」と来たら「それともわ・た・し?」だろ?」

シャンクスはじっと○○を見て阿呆みたいな事を真面目に言う。

「……………………」

○○は困った顔をして固まる。

「…………ぷはっ!!!そんな本気にするなって!おかしいな!○○は」

だははとシャンクスは笑った。

そこで初めて自分がからかわれたと知る○○。

「っ!シャンクスさん!」

「悪い、悪い。あー、風呂に入って来るよ。汗もかいたしな」

シャンクスはひとしきり笑うとそう○○に告げる。

「はい!着替えも置いてあります。ごゆっくり」

○○はにこりと笑った。

「凄いな、奥さん」

シャンクスはそう笑うとバスルームに消えた。





「シチューはうちだったのか!」

風呂上がりのシャンクスはビールを飲んでテーブルで待っていると、クリームシチューが運ばれてきた。

「あまり、材料が無かったので、これしかありませんが」

○○はご飯を持って表れる。

「……なぁ」

「はい?」

「お前の分は?」

「え?」

シャンクスの言葉に不思議そうに首を傾ける○○。

「もう、食ったのか?」

「あ、いえ」

○○は首を横に振る。

「なんだよ!なら一緒に食おうよ!」

シャンクスはいそいそとキッチンに立ち、皿にクリームシチューをよそり、ご飯も茶碗によそる。
そして、箸とスプーンも持って○○の前に並べる。

「良いんですか?」

○○は恐る恐る聞く。

「何言ってるんだ。当たり前だろ?夫婦なんだしな」

シャンクスはビールを飲み干す。

「ほんじゃ、いただきます」

シャンクスはさっそくクリームシチューに手を伸ばす。

「おっ!上手い!」

シャンクスは大満足で声をあげた。

「良かった」

○○はホッと胸を撫で下ろす。

「○○も食ってみろよ!上手いぞ!」

ほらほらとシャンクスに促され、○○もクリームシチューを口に運ぶ。

「ん!美味しいです」

○○は嬉しそうに笑った。

「だろ!」

シャンクスは自分が作ったかのように笑った。




「そう言や、明日は休みになった」

「え?」

「必要な物買いに行くぞ」

「あ、あぁ。洗剤とか足りないですもんね」

「……天然?」

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