海底の再会


「あぁぁ!!」

「ロビンちゃん!!!」

グランドラインは常にどんな天候になるか解らない。
今、サウザンドサニー号も突然の嵐の真っ只中。

それは航海士ナミにも予想が出来ずに突然やって来た。

帆をしまおうと手伝っていたロビンに突然の波。

水に濡れてしまった能力者ロビンは成す術無く海に放り出された。

すぐ隣にいたイマイが手を伸ばせば届いたかも知れないが、寒さと恐怖で体が動かなかった。

そこへ、少し離れたサンジが海へと飛び込んだ。


「浮いてきた!急いで!」

ナミの指示に従がいウソップが縄を正確にサンジへ投げ、サンジが掴まったのを確認するとゾロがそれを引いた。

「ロビン!!」

フランキーが手を伸ばし、ロビンを先に引き上げる。

「サンジ!」

続いてサンジにルフィが手を伸ばす。

「っ!!!」

運の悪い事に大きな高波が再びサウザンドサニー号を襲った。

「っ!サンジくん!!」

イマイは今度こそ体を動かし、ロープを握ると迷わず海へと飛び込んだ。

「イマイ!!!」

「ダメよ!ルフィ!あんたは海の中だと!!」

飛び込みそうな勢いで海面を見ようとするルフィをナミが必死で止めた。

「サンジさん!イマイさん!」

ブルックは黒く窪んだ眼窩で荒れる海を心配そうに見た。









「ん……っ!ここは?」

イマイが目を覚ます。

薄暗い洞窟の様な場所で、植物はもちろんなく、何かシャボン玉の様なもので覆われていた。
頭上には海が広がり、大型の魚が泳いでいるのが見えた。

彼等がまだたどり着いていない魚人島の様な場所だった。



「サンジくん!サンジくん!」

少し離れた所に転がっていたサンジを見付けて慌てて駆け寄る。

「大丈夫?」

「……うぅ、人工呼吸……」

サンジは目を瞑ったまま口を突き出した。

「大丈夫ね!良かった!」

イマイはホッと息を吐いた。

「イマイちゅわん、冷たい!!」

サンジはイテテと頭を押さえながら起き上がった。

「ごめんなさい」

「何が?」

イマイの謝罪にサンジが不思議そうな顔をした。

「私がロビンの手を握ってればこんな事にはならなかったのに……」

イマイは悔しそうに唇を噛んだ。

「仕方ねェよ。俺でもビビる」

サンジはにかりと笑った。
煙草を取り出したが、服も全て濡れていて使い物にならなかった。

「…………ありがとう」

イマイはサンジの言葉に情け無さそうに頷いた。

「とにかくここがどこだか、」

サンジがそこまで声に出すとバシャンっと大きな音と共に黒い塊がイマイとサンジがいる空間へと飛び込んで来た。

「な、なんだ?」

サンジが驚きながらそれを見る。

「…………え?」

イマイは驚きに目を見開いた。

「イテテテ。ったく、この嵐は厄介だな」

黒いマントに赤い髪を揺らしながら男は立ち上がった。

「なんだ?オッサンも嵐に巻き込まれたのか?」

サンジは赤髪の男を見ながら聞いた。

「ん?あァ。お前たちもか?」

赤髪の男がサンジとイマイを振り返る。

「……しゃ、シャン、クス?」

イマイは驚いたまま声を出した。

「シャンクス?シャンクスって言やァ」

サンジはイマイの言葉に驚いて赤髪の男ーーシャンクスを見た。

「お!イマイじゃねェか!こんな所で会うとはな!」

シャンクスはにかりと笑った。

「お前、ルフィの所にいるみたいだな。無事で何よりだ」

シャンクスは続けながら体をイマイの方へと向けた。

「………………しゃ、シャンクスこそ、元気そうで……年取ったけど……」

イマイはしどろもどろにシャンクスに話しかける。

「だっはっはっ!!!そりゃ10年経ったからな!」

シャンクスは高らかに笑った。

「……」

シャンクスの反応にどうしたら良いか解らずイマイはシャンクスを見つめるしか出来ずにいた。

「……へェ、あんたが四皇って言われてる赤髪海賊団の大頭、ねェ」

サンジはイマイを自分の背に隠すようにシャンクスの前へ出た。

「ん?あァ。そう言う事だな」

シャンクスは頷いた。

「あんた、ここがどこだか知ってるのか?」

サンジはシャンクスを睨む様に聞く。

「うーん。そうだな。海底のどこかだろ?あの嵐に巻き込まれると世界にいくつかあるこう言う場所に連れて行かれる」

シャンクスは余裕の表情を崩さずにサンジを見た。

「あんた、四皇の癖に嵐に巻き込まれてここにいるのか。大した事無いな」

「だっはっはっ!!!そうだな!!!」

サンジの言葉に楽しそうにシャンクスは笑った。

「お前もルフィの仲間なのか?手配書にあったか?」

シャンクスは不思議そうに顎を撫でた。

「うるせェ!!!」

サンジはシャンクスに怒鳴る。

「それより、イマイ」

シャンクスの声にイマイの体はびくりと揺れる。

「悪かったな。あの時気絶なんかしちまって」

シャンクスに視線を合わせると、困った笑いを口に乗せていた。

「わ、私の方こそ!もっと力があればシャンクスを離さずにいれたのに……」

イマイの声が小さく弱くなって行く。

「来るか?」

シャンクスが右手をイマイに向けて差し出した。

「…………サンジくん」

イマイが一歩シャンクスへ向かおうとしたが、サンジの手によって阻まれた。

「何でイマイちゃんを探さなかった」

サンジがシャンクスを睨み付ける。

「探したさ。しつこいくらいにな。だが、見付からなかった」

シャンクスはイマイから目を離さずにいた。

「手配書見てたなら、俺達と一緒にいるのが解ったろ?何で迎えに来なかった」

サンジは目線の合わないシャンクスを睨み続ける。

「…………ルフィと約束してたからな。『立派な海賊に』なってないルフィとは会えねェたろ?」

シャンクスは困ったように笑った。

「だからって!」

「サンジくん。ありがとう」

イマイはサンジを止めると前へ出た。

「シャンクス」

「何だ」

「私は今でも貴方が好き」

イマイはにこりと笑った。

「でも、一緒には行けない」

イマイの言葉にシャンクスは静かに手を下ろした。

「私は貴方に付いてここに来た時のただの『イマイ』じゃなくて、麦わらの一味の『イマイ』なの。だから、私はルフィくんと一緒に貴方に会いに行くわ」

イマイは抱き付いてしまいたい衝動を押さえ込み、気丈に言う。

「…………そうか。海賊なんだな」

シャンクスは笑った。

「えぇ。貴方には感謝してるわ」

イマイはにこりと笑った。

「10年振りだ。抱き締めさせてはくれねェのか?」

シャンクスが手を広げる。

「止めてよ。私の決心なんて貴方に触れたら粉々に砕けるわよ」

イマイは困ったように笑った。

「狙ったんだよ」

「それは、残念」

シャンクスはやれやれと頭をかいた。

「そっちにお前たちのロープが見える。それで船まで帰れるだろう。俺の女だ、丁重に扱えよ?」

シャンクスがにやりとサンジを見た。

「うるせェ!いつまでもイマイちゃんがお前ェのものだと思うなよ!!」

サンジは再びイマイの前に立った。

「お前、イマイが好きなのか?」

シャンクスが驚いてサンジを見た。

「当たり前だろ!オッサンに渡すには惜しいだろ!!」

サンジはシャンクスを睨み付ける。

「そうか」

シャンクスはゆっくりとサンジに近付いた。

そして

「イマイに悪ィ虫が付かねェ様に宜しく頼む」

シャンクスはサンジの頭を強く撫でた。

「っ!何すんだ!!!」

繰り出すサンジの足技を軽くかわした。

「だっはっはっ!!!じゃあな」

シャンクスは笑うと背を向けて歩き出した。









海底の再会









「サンジの料理がショッパイ!!」

「泣いたからだろ」

「本格的に振られたのね」











「なァなァ、お頭部屋から出て来ねェけど、どうしたんだ?」

「振られたんだろ」

「そ、そうなのか?」

「あーあ、お頭振る女とか勿体ねェな!」

「本当にな!」



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