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「来たか」
甲板に出るとシャンクスは珍しく引き締まった顔をする。
「シャンクス……あのね」
○○が先に謝ろうと声を出す。
「悪いが話は後だ。ほら」
シャンクスが指差す方を見る。
「……島?」
そこには雰囲気の暗い島がひとつミエタ。
「あァ」
「上陸するの?」
「俺とお前でな」
シャンクスは自分と○○を指差した。
「2人で?」
「そうだ」
○○の質問に頷くシャンクス。
「ちょっと寄るだけだ。ログが貯まる前には出る」
シャンクスは少し不機嫌そうだ。
「ふーん?」
意味が解らずに○○は不思議そうにシャンクスを見上げる。
「よし、行くぞ」
「は?!」
シャンクスは○○を担ぎ上げる。
「ちょっと行って来る」
「なるべく早くしろよ」
「あァ」
ベックマンの言葉に頷くとシャンクスは○○を担いだまま島に飛び降りる。
「っ!!」
突然の浮遊感に○○は必死にシャンクスにしがみ付く。
ズンズンとシャンクスは歩く。
何だか湿っぽくて薄暗い、もう人の住んでない街。そして古城が立たずむ。
「……ね、ねぇ。何か怖い」
○○は担がれたままシャンクスに言う。
「俺がいるだろ」
シャンクスは不満そうに声を出す。
ーーグルルルル
野獣の呻き声がする。
「っ!しゃ、シャンクス」
巨大な猿の様な群れが2人を囲む。
○○はシャンクスにしがみ付く。
「大丈夫だって」
シャンクスは久し振りの○○の温もりを抱き締め、苦笑する。
「失せろ」
シャンクスは笑みを引っ込めると一言、そう声を出す。
叫んだ訳では無く、ギロリと睨みを効かせただけ。
それだけで獰猛な猿の群れはシャンクスから離れ、遠巻きに見た。
「……」
「行くぞ」
驚く○○にシャンクスが声をかけ、歩き出す。
「よし、もう降りて大丈夫だ」
古城に着くとシャンクスは○○をゆっくりと下ろす。
「あ、ありがとう」
○○はシャンクスに礼を言う。
「貴様か」
「へ?」
久し振りに聞く低い声に慌てて振り返る。
「た、鷹の目!!」
○○は驚いた後、嬉しそうに鷹の目に近付いた。
「○○か」
鷹の目は高い位置から○○を見下ろす。
「久し振りだね!ってか、何も言わないで出てったよね」
○○はクスクスと笑う。
「そうだな」
鷹の目は頷いた。
「俺は少し散歩してくる」
シャンクスは不機嫌そうに声を出す。
「は?」
○○は不思議そうにシャンクスを見る。
シャンクスはそのまま去って行った。
「……?」
「……来い。いつまでもこんな所にいても仕方がない」
鷹の目はそう言うと城の奥へ進む。○○は慌てて鷹の目に着いていく。
「どうした?」
「え?」
鷹の目の質問に不思議そうに○○は返した。
「俺に用なのだろう」
鷹の目はワイングラスを持ち上げた。
その光景にも懐かしい感覚が帰ってきた。
「でなければこんな所に来ないだろう」
鷹の目の言葉で○○は理解した。
これは、シャンクスなりの謝罪なのだ。
「あははは!」
○○は可笑しくて笑う。
「な、なんて不器用!!」
○○は嬉しそうにクスクスと笑う。
「…………解決か」
「うん!」
「そうか」
鷹の目はふと、表情を和らげとワイングラスを傾け喉を潤した。
「そうだ。鷹の目。ごめんなさい。せっかく貰った帽子を無くしちゃったの」
○○は困った様に言う。
「そうか」
「ごめんなさい」
「形あるもの、いつかは無くなる」
鷹の目は静かに薄い唇を開く。
「……ありがとう」
○○はにこりと笑った。
この世界に来て、やはり長い間一緒に旅をしたせいか、鷹の目といると安心できた。
「たまには本気の奴とやり合うか」
突然鷹の目がそう言うとニヤリと笑った。
(こ、怖い)
久し振りの鷹の目はやはり心臓に悪かった。
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