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それから○○の機嫌は良くなる事はなく、シャンクスの存在を無視していた。
他のクルーにはいつもの様に接し、雑用を買って出た。
「はぁ………………」
シャンクスは盛大にため息をついた。
「なんだよ、お頭。まだ仲直りしてないのかよ!」
ヤソップが呆れながら言う。
「…………」
シャンクスはぐったりとしている。
「こりゃ、重症だな」
「四皇が聞いて呆れるな」
「ダメなオッサンだ」
幹部達が次々と痛烈な言葉をシャンクスに投げ掛ける。
シャンクスは落ち込んだ様に机に倒れ込んだ。
「あ!ルウさん!」
ノックと共に入り口から現れた○○がルゥを見付けて部屋へと入ってきた。
「○○!!」
○○の登場にシャンクスがいち早く立ち上がり、近付いた。
「シーツ出してませんよ!」
○○は抱えていた他のシーツを見せながらルゥを見上げる。
「なぁ、○○」
シャンクスは○○に視線を合わせようと必死だ。
「……あ、あァ今出す」
そんな2人のやり取りを見て冷や汗を滴ながらルゥは立ち上がった。
「お願いします」
○○は完璧にシャンクスを無視してルウに話しかける。
「ありゃ、酷いな」
「さすがにお頭が可哀想になってくるな」
「なぁ、○○」
「はい?」
ヤソップに呼ばれて○○が振り返る。
「そろそろ許してやれば?お頭も反省してるしな」
ヤソップは心の中で(反省してるかは解らないが)と付け加える。
「……」
○○がチラリとシャンクスを見上げる。
久し振りに目線が合い、シャンクスはホッとする。
「反省だけなら猿にも出来ます」
冷たい声でぽつりと呟いた。
「っ!!」
「怖っ!!」
「さすが四皇の女!!」
クルー達は驚いて○○を見る。
初めて赤髪海賊団に接触した時は鷹の目の棺桶船で小さく震えていた女と同じ人物だとは到底思えなかった。
「では、失礼します」
○○は深々と頭を下げると、ルウから受け取ったシーツを持ってその場を後にした。
「…………はぁ」
シャンクスは再び項垂れた。
「所でお頭、○○に謝ったのか?」
ベックマンが煙草に火をつける。
「なんで、俺が謝るんよ」
ムスッとシャンクスが口を尖らす。
「だからか!」
「だからだ!」
「それだな!」
幹部達が次々に言う。
「俺は悪くねェ」
シャンクスが噛みつく様に言った。
「はぁ……」
○○は一人部屋でため息をついた。
「一言謝って欲しいだけなのに……」
世話になったとは言え、他の男から貰った物をいつまでも大事にしていた自分も悪い。
しかし、やはり棄てるのは酷いと○○は思った。
それでも謝ってくれさえすれば水に流そうと思っているのだ。
「……シャンクスって肝心な言葉は口に出さないよね」
○○はぽつりと呟いた。
好きだ
愛してる
それらの言葉も言われた事が無かった。
「いや、それは態度見てたら解るから良いけど」
○○は枕に顔を押し付けた。
そろそろ自分だって、シャンクスと一緒にいる時間が欲しい。
何のために危険を犯して異世界までやって来たのか?
「はぁ……。良いや、私から折れよう」
○○は立ち上がると部屋を出た。
「お!○○!」
「あ、航海士さん!」
「今から呼びに行こうと思ったんだ!お頭が呼んでるよ。甲板だ」
航海士はそれだけ言うと足早に去って行った。
「忙しいのにわざわざ来てくれたんだ」
○○は甲板へ急いだ。
ただ、シャンクスに会うために。
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