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「○○かよい?」

「マルコさん!!」

船に向かって走っていると、街中でマルコが声をかけて来た。

「どうした?慌てて。赤髪はどこだよい?」

マルコはキョロリと辺りを見回す。

「そ、それが」

○○はマルコに先程の話をする。

「あァ、さっきのガキかい」

マルコは頷いた。

「それって、あれじゃないかい?」

マルコは街の端を指差す。
いや、端ではなく空を。

「え?ヘリコプター?」

「へりこぷたー?」

○○の言葉を不思議そうに繰り返す。

「……空を飛ぶ乗り物の事です」

ぎくりと体を震わせる。
もしかしたら、この世界にはヘリコプターや飛行機など無いのかもしれない。

「俺も教養はある方だと思ったがねい」

マルコは気にした風ではなく声を出す。

「○○!!」

「シャンクス!!」

シャンクスが飛行機が飛んだ方向から現れた。

「どうやらあれに乗っちまったらしいが……」

シャンクスはお手上げとばかりにヘリコプターを指で指す。

「ここには空を飛ぶ技術は無いの?」

○○はシャンクスを見上げる。

「…………無いな」

シャンクスはため息混じりで言う。

「っ!って!私がいるじゃない!」

自分で自分に突っ込む。

○○は辺りを見回し、箒を探し出す。

「おい!○○!」

シャンクスは慌てて箒を押さえ付ける。

「離してよ!ニナちゃん助けないと!売られたらどうするの!」

○○はキッとシャンクスを睨み上げる。

「それでもお前を危険に合わせる訳にはいかねェ」

シャンクスは目を細めて○○を見る。

「……」

○○は諦めた様に力を抜く。

「良い子だ」

シャンクスの手が緩んだのを見計らい、○○は駆け出した。

「っ!」

シャンクスも一瞬の事で反応が遅れる。

○○は箒に跨がるとふわりと浮く。

「はぁ?」

それに驚いたのはマルコ。

「能力者かよい!」

マルコは声を出す。

「ごめん!私やっぱり!」

○○はヘリコプターを目指す。

「待てよい!」

マルコが手をばさりと羽ばたかせると、青い炎をまとった翼に変わる。

「待て!」

「赤髪?!」

シャンクスがマルコの背に飛び付く。

「頼む!」

「っ!今回だけだよい!」

マルコは青い鳥、不死鳥に変身すると、○○の後を追う。


「へ?シャンクス?!その鳥さんは?」

突然隣に並ぶように現れた青い炎をまとった鳥。
そして、その背中にはシャンクスがいて、驚く。

「説明は後だ!早く片付けるぞ」

シャンクスはやれやれと声を出す。

「っ!ありがとう!」

○○はにこりと笑うと、ヘリコプターを目指す。

形はヘリコプターのそれだが、音は全くしない。
飛ぶ技術は向こうの世界と違うようだ。


ヘリコプターに追い付くと、シャンクスが飛び移る。
鳥の姿から戻ったマルコもヘリコプター内部で暴れている。

「マルコさんだったんだ!」

○○はヘリコプターと並ぶように飛ぶ。
危ないから入るなと言われたのだ。

マルコがニナを抱えて外に飛び出して来る。

「こいつを頼むよい」

「はい!」

○○はニナを箒の後ろに乗せた。

シャンクスがヘリコプターと内部の人間を再起不能にすると、不死鳥に変身したマルコにしがみつく。

「これで良いな?」

シャンクスは○○に聞く。

「うん、ありがとうシャンクス!!」





4人は宿屋に戻った。

「ニナ!良かった!」

「ほんとに、この子は!ありがとうございます」

少年と女主人はシャンクス達に頭を下げる。

「いや、俺は○○に言われたから」

シャンクスは苦笑する。

「本当にありがとうございました!!あの、マルコさん!」

「は?」

「良かったら、私と!!」

ニナはシャンクスからマルコに乗り換えた様だ。

「良かったな!マルコ!!」

シャンクスが楽しそうにマルコの肩を叩く。

「なにがだよい!!」

マルコは面倒そうに叫ぶ。







次の日、マルコが一度帰ると言うので見送りに来た。

「マルコさん、ありがとうございました」

○○はペコリと頭を下げる。

「いや、昨日お前に酷い事言ったしねい」

マルコはため息をつきながらいう。

「へ?あ、ああ!そう言えば」

○○はクスリと笑う。

「マルコ、またな」

シャンクスがマルコに声をかける。

「お前たちが来る前にここを離れなきゃな」

シャンクスはやれやれと声を出す。

「え?なんで?」

○○は不思議そうにシャンクスを見上げる。

「マルコんとこの親父は四皇なんだよ。鉢合わせると色々と面倒なんだよ。海軍動くと厄介だしな」

シャンクスは事も無げに言う。

「そ、そう言えばそんな事前に……」

○○はマルコを見上げる。

「じゃあねい」

マルコはばさりと不死鳥に変身すると空高く舞い上がった。

「はぁ、素敵な能力ですね。そう言えば能力者に初めて会いました」

○○はマルコを目で追う。

「珍しいからな」

シャンクスもマルコを目で追う。
すでに、小さくなって○○の目では追えなくなった。

「じゃあ、船に戻るか?」

シャンクスは手を伸ばす。

「うん!」

○○はその手を取った。

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