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「あ、あああああ赤髪!!!!」
「よ、四皇ォ?!!」
「は、初めて見た!!!」
飯屋にシャンクスが入ると、そんな声が聞こえてきた。
本人であるシャンクスは大して気も止めずにテーブルの一つを占拠した。
「っ!!あれは!」
「白髭の!一番隊隊長!!!」
「不死鳥マルコだぁぁ!!!」
「こ、怖ェ!!!」
シャンクスに続いてマルコが入ると店の中は騒然とする。
四皇同士の小競り合いでも政府は緊張するほどの威力を持つ。
中でもマルコが属する白ひげ海賊団は長期に渡りこの新世界を支配する海賊だ。そこのナンバー2となれば広く顔と名前を知られている。
一般市民にはこの2人のせいでこの島が戦争の舞台になってもおかしくないと怯えたのだ。
しかもその2人が同じテーブルに着くものだから、近くのテーブルにいた人達はささっと逃げた。
そのテーブルを中心に店は異様な空気に包まれ、誰もが固唾を飲んで見守った。
「ど、どう言う組み合わせだよ!」
「怖ェ!!!」
「オーラが強ェ!!!」
遠巻きながらも店にいた人々は2人をジロジロと好奇、恐怖、畏怖の目で見た。
「……」
「おい、○○どうした?こっち来いよ!」
飯屋の入り口で、その雰囲気にどうしようかと戸惑い、立ち止まった○○に、周りを気にしない様子のシャンクスが手を上げる。
それに合わせて、客がいっせいに○○を見た。
(うっ……)
○○はたくさんの目に見られて慌ててシャンクス達の座るテーブルにつくと小さく縮こまった。
「クックックッ」
そんな○○の様子を見るとマルコは一人楽しそうに笑った。
「お前もそんな顔するんだな。取り合えず酒!!」
シャンクスはマルコを見て笑うと、店員にそう声をかける。
厨房からは「は、はい!ただ今!」と震えた声が聞こえた。
店員はすぐさま酒の入ったグラスを持ってきた。
「男の連れがいるとは言ってたが……赤髪だったのかい」
マルコは運ばれて来た酒を受け取ると、○○に話しかける。
「は?あぁ、いえ!あの……違います」
○○は自分に話しかけられたのだと気付くと慌てて答える。
「違う?」
マルコは目を細めて聞き返す。
「あー……あの時は」
○○はシャンクスをチラリとうかがう。
この男は○○が鷹の目の話題を出すととても不機嫌になるのだ。
「大人しそうな女かと思ったが、色んな男の所を渡り歩いてるのかよい?大したモンだな」
マルコは不機嫌そうに声を低くして、酒を煽った。
「おい、失礼な事言うんじゃねェよ!こいつは10年前から俺の女だ!!」
マルコの言葉に苛立たしげに反応したのはシャンクスだ。
マルコを睨み、グラスがダンッとテーブルを叩いた。
「はぅっ!」
「がふっ!」
「のわっ!」
近くにいた客達がバタバタと倒れて行く。
「覇気をしまえってんだよい」
マルコは拳でどんっとテーブルを叩いてシャンクスを睨み付ける。
「っと、ふ、2人共!お、落ち着いて!!」
○○はあわわわとシャンクスとマルコの間に入る。
「……」
「……」
(ひぃぃぃぃ!!!)
睨み合う2人の男に○○は縮み上がる。
しかしここで負けるわけにはいかない。そうなれば、ここにいる一般人の客に被害がおよぶ。
シャンクスの戦ってる姿はまだ見た事がないが、四皇と呼ばれる男だ。周りの反応から言っても強いだろう。
そしてマルコに関しては以前少し見たが、恐ろしい速さで襲ってきた男を倒した。
この2人が戦いを始めたら何が起こるかわからない。○○でさえそう感じた。
「……しゃ、シャンクス!」
○○はごくりと喉をならす。
「…………なんだよ?」
不機嫌なままシャンクスが○○を振り返る。
「ここでマルコさんと仲良く出来ないなら、一週間しません!」
「っ!!」
シャンクスは○○の言葉にショックを受ける。
「マルコさん!!」
「な、なんだよい」
次に○○はキッとマルコを見る。
怖い、怖いが仕方がない。今やれるのは自分しかいない。そう○○は胸の中で何度も叫んだ。
「確かに前に会った時は鷹の目といました。が、何もないです。と、言うか、この世界に来てからはシャンクスとしかしてません!だから、マルコさんからのお誘いも断ったじゃないですか!失礼にも程があります!!」
一気に早口で捲し立てる。勢い余って、いつの間にか立ち上がっていた。
「「「……お、おぉーー」」」
一瞬の沈黙の後に、周りから乾いた歓声と拍手が起きた。
「っ!!す、すみません」
○○はぷしゅーっと空気が抜けた風船の様に真っ赤になり椅子に座り込んだ。
「……悪かったよい。俺も大人気無かったよい」
マルコは小さく笑うと○○を見る。
毒気を抜かれた様だ。
「マルコさん……」
「許してくれるかい?」
「はい!誤解が解ければ十分です」
○○はホッとしてマルコに微笑みかけた。
「よし!お互い仲良く飲もうぜ!」
シャンクスはジョッキを掲げた。
「今日だけだよい」
マルコもジョッキを掲げて答える。
「ふふ、乾杯!」
○○も満足そうにジョッキを掲げた。
「ところでマルコ!うち来るか?」
「うるせェよい!!」
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