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「で、悪いんだが、お頭にこれ持って行ってくれ」
「ご飯?」
ベックマンが差し出したのは朝食の乗った皿。
「まだ起きてないみたいなんだが、様子を見てきてくれないか?」
「……わかりました」
食事を終えた○○は、食器を片付けると皿を持って立ち上がった。
「○○!お使いか?」
洗濯係が声をかける。
「はい!お頭にこれを届けて来ます」
○○はにこりと笑う。
「おう!終わったら風呂掃除だろ?昼飯終わったらまた洗濯室集合だ」
「はい!」
○○は笑顔で頷くと、船長室へと歩き出した。
ーーコンコン
「お頭ー?起きてますか?」
返事はない。
ーーコンコン
「お頭ー?入りますよ?」
○○はドキドキしながら船長室のドアを開けた。
「……お頭?」
ベッドに膨らみを見付けて近寄ると赤い髪が見えた。
○○がベッドまで近付くが、起きる気配がない。
「……朝ですよ!」
○○がゆさゆさと揺らす。
「ん……」
小さいが反応があった。
「お頭!副船長がお呼びです!」
ホッとしてそう耳元で叫んでみる。
「わぁっ!」
突然腕を引かれ、ベッドの中へ引き摺り込まれる。
「っ!!お頭!起きてるじゃないですか!」
○○は顔を真っ赤にして自分を見下ろすシャンクスに非難する。
「シャンクスだろ?」
シャンクスは眉間にシワを寄せた。
「いいえ!今は海賊見習いとしてここにお頭を起こしに来ました!」
○○は負けじと言う。
「……何だそれは」
シャンクスは○○に唇を寄せる。
「……………」
「こ、怖いので、睨まないでクダサイ」
○○の手によってシャンクスの唇は塞がれてしまい、キスは失敗に終わったのだ。
「私、これからお風呂掃除なんです。だから、お頭と遊んでる場合じゃないんです」
○○は困った顔をしながらも、しっかりと声を出した。
「……そうか」
シャンクスが小さく頷いた。
○○はホッとしてシャンクスから手を外す。
「分かってくれたんですね?では離してくだ」
「俺の姫さんは無理矢理がお好みか」
「……………………は?」
シャンクスは実に楽しそうなニヤリ笑いをした。
対する○○は訳が解らない。
「ちょっ!止め」
「抵抗されるってのも、燃えるな」
○○が慌てて抵抗するのを楽しそうに目を細めるシャンクス。
「ど、どこ触って!や、だ」
「嘘をつくのはこの口か?」
「っ!んん!」
「力抜け」
「ま、って」
「ここか?」
「ち、がっ!」
「ほら、素直になれって」
シャンクスはニヤリと笑ったままで、指を動かした。
「お頭ー!」
ーービクッ!!!
第三者の声に○○は盛大に驚くと、素早くベッドから転げ落ちた。
「っ痛ぁ!!!」
「って、○○。何やってんだ?」
部屋のドアを開けて入って来たのはヤソップ。
「な、何でもありません!助かりました!では、私はこれで!!」
○○は急いで部屋から逃げ出す。
「………………お頭、何やってんだ?」
ヤソップは呆れた様にベッドにうつ伏せになるシャンクスを見た。
「あ、あの!」
出ていったはずの○○がドアの影から部屋を覗き込む。
「ちゃんと朝御飯食べてくださいよ!じゃあ!」
○○は今度こそ走り去った。
「くっくっくっ!!!あいつ本当に可愛いな!!」
シャンクスは満足そうに笑った。
「お頭って歪んでるな」
ヤソップはやれやれと声を出した。
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