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結局シャンクスに解放され、船長室のシャワーを借りて部屋に戻ると4時半になっていた。
(こ、腰痛い……。眠い。でも!自分で決めた事だから頑張らなきゃね!)
○○は気合いを入れた。
少しだけ仮眠を取り、五時半に洗濯室へと向かう。
「おはようございます!」
○○はにこりと挨拶をする。
「おお!○○大丈夫か?」
「風邪か?副船長がそう言ってたぞ」
「それとも疲れが出てきたか?」
皆、心配して声をかけてくる。
「あっ!ありがとうございます!大丈夫です!」
○○は嬉しくてじーんと胸熱くなる。
「そうか。無理するなよ!」
「そうそう、赤髪海賊団唯一の癒しなんだからな!」
「姿が見えないと心配されるぞ」
「お前は赤髪海賊団の立派なクルー見習いだからな!」
頑張りが認められていたらしい○○はその言葉だけで、とても目頭が熱くなる。
鼻の奥がつーんとなる。
「あ、ありがとうございます!!!私、頑張ります!!!」
○○は涙を堪えて微笑んだ。
「よし!じゃあ、頑張るぞ!!」
「「「おおおーー!!」」」
朝食前に昨日の夜までに出た洗濯物を洗い、甲板で干す。
「……あれ?何か寒くないですか?」
○○は少し肌寒く感じた。
「こんなに良い天気なのに」
○○は不思議そうに空を見上げる。
「あァ、きっと秋島か冬島が近いんだな」
「……そうですか」
確か鷹の目もそんな事言ってたなと空を見上げた。
「ほら!朝食食わないと、食いっぱぐれるぞ!!」
船内に向かうクルーから声をかけられた。
「あ!はい!昨日からご飯食べてないから、お腹ぺこぺこです!」
○○は慌てて皆の後を追った。
○○は目玉焼きベーコンとトーストを何とか手に入れた。
「○○、大丈夫か?」
ベックマンに声をかけられる。
「っ!?あ、はい」
○○は真っ赤になり、答えた。
きっと、ベックマンは昨日シャンクスと○○の間に何があったかを知っているはずだ。
でなければ、他のクルーに「風邪で寝てる」なんて言わない。
「そうか」
ベックマンがニヤリと笑った気がした。
「おっ!○○!副船長が良い男だからって見惚れるなよー」
ヤソップの言葉に海賊達はケラケラと笑った。
「うー……」
○○は言葉にならない声で唸った。
「こっちで食うか?席空いてないだろう」
ベックマンの誘いに振り返るとすでに席は埋まっていた。
「お願いシマス」
○○は素直にベックマンの後を追い、隣に腰かける。
○○はようやくありつけた食事を食べ始める。
「ちゃんと条件は満たしたみたいだな」
ーーガシャンッ
「っ!!げほっ」
ベックマンの言葉に○○はトーストを喉に詰まらせる。
慌てて水を飲み干した。
「そう、慌てる事も無いだろう」
「あ、慌てます」
○○は眉間にシワを寄せ、ベックマンをチラリと見上げた。
「で?もう雑用もする事無いんじゃないのか?」
「そんな事ないです!置いてもらうなら、ちゃんと皆さんに認められる様な赤髪海賊団の一員になりたいです!副船長!私、頑張ります!宜しくお願いします!!!」
○○は立ち上がり、ベックマンに深々と頭を下げた。
「……ふ、ふははは!」
ベックマンは上機嫌に声を出して笑った。
食堂が一瞬シーンとなる。
誰もが珍しいと副船長を見た。
「成る程、成る程。確かにお頭が惚れるのにも頷けるな」
ベックマンはひとしきり笑った後、煙草に火をつけた。
「頑張りな、○○。俺はお前の味方になってやる」
ベックマンはニヤリと笑うと紫煙を吐き出した。
「っ!!あ、ありがとうございます!!!宜しくお願いします!!!」
○○はベックマンの言葉にぱぁぁっと花が咲く様な綺麗な笑顔で頭を下げた。
「……良いな副船長」
「……癒されるなァ」
海賊達はジロジロと興味深く2人を見ていた。
○○はにこにことご機嫌にベックマンの隣で朝食を食べ終えた。
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