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今回の戦いはそう強い敵では無かったようで、見習いや新人が戦っていた。

「お、お頭?」

「ん?」

「お頭達は戦わないの?」

「必要があったらな」

シャンクスだけでなく、ベックマンやルウ達幹部も戦ってはいないようで、皆○○に背を向けて立ち、動かず様子を見ている。

ヤソップだけは、こちらに敵が近付かない様にすり抜けて来た敵を狙撃していた。

「おっ!あいつ粋が良いな!」

「ロックスターだな」

「さすが懸賞金9400万ベリー」

のほほんとした声でそんな事を話していた。

「き、きゅうせん……まん」

○○は驚いた声を出す。

「それで驚くなよ!お頭なんかな」

「来たぞ」

ヤソップの言葉をベックマンが遮る。

「赤髪ィィ!!」

敵の船長がシャンクスに銃を向ける。

「っ!!」

○○は息を飲む。

「さすがだな。ここまで来るとはな」

シャンクスは目を細めた。

「ふふふ!これで四皇は俺のもんだ!!」

敵の船長はシャンクスから後ろに見え隠れする○○に標準を合わせる。

「死ねっ!!」

敵の船長は引き金を迷う事なく引く。




しかし、その場で焦る者はいなかった。


ルウが敵の船長を銃で撃ち抜き、ヤソップの銃弾が○○を狙った銃弾を撃ち落とした。


シャンクスだけではなく、ベックマンも動かずに煙草を吹かす。


敵の海賊団は船長がやられたと、蜘蛛の子を散らすように退散していく。

「ベック。○○を頼む」

「ああ、こっちだ」

シャンクスの顔は見られなかったが、声色は低く、怒りを感じた。

○○は素直にベックマンに着いて甲板を後にした。

「さて、俺の女を狙った罪は重いぞ」

シャンクスはまだ生かされている敵の船長を冷たい目で見下ろした。








ベックマンは○○を連れて書庫に来ていた。

「大丈夫か?」

「はい?」

何がだろうとベックマンを見る。

「この船に乗っていれば嫌でも今みたいな目に遭う」

「ああ」

そう言う事かと頷いた。

「大丈夫です。それなりに覚悟はして来たので。戦う事は出来ませんが」

○○は真剣な顔をする。

「……この船に乗っていればお頭が傷付く事も見る事になるんだぞ?」

「っ……はい」

ベックマンの言葉に○○の体はドクンと大きく脈打った。

「あの人は時々無茶をする。お前を探すために1年以上同じ所で航海したり、ガキの為に左手無くしたり」

ベックマンは煙草に火をつけた。

「今でこそ四皇などと呼ばれてるが、腕を無くしてからの1年ほどは大変だった。周りがな」

ベックマンはニヤリと笑った。

「……もし、シャンクスが目の前で死んだとしてもちゃんと看取ってあげたいですし、シャンクスの目の前で死んだとしても看取って貰いたいです」

○○はにこりと笑った。

「だから、お願いです。船を降りろと言わないでください」

○○はベックマンの目をじっと見た。

「…………なら、条件がある」

「な、なんでしょう?」

「お頭の女になるんだな」

「は……は?」

ベックマンの言葉に○○は止まる。

「正直、戦いになった時の冷静な静観には肝が座ってると思う」

ベックマンは紫煙を吐き出した。

「だがな、やっぱり俺達は海賊だ。戦えない奴を乗せるのは難しい。元々そのつもりで来たんだろ?簡単じゃないか」

ベックマンは「お前なら出来る」と言う言葉を残して書庫を出ていった。

「……」

○○は目を閉じた。










「うん、元々そのつもりで来たよ」

○○は自室のベッドの上に転がっていた。

「でも、でも!10年だし、美女いるし!…………」

ベックマンの言葉に頭が混乱していた。

「…………でも、お頭の態度は……」

自惚れかもしれないが、シャンクスは○○を女として見ている。

「…………はぁ、分からない取り合えず、次の島では下ろされるかも」

○○は不安に押し潰されそうだった。

「あ、そろそろ厨房行かなきゃ」

○○は自室から出た。


その後の事は○○は覚えていなかった。
キチンと厨房の手伝いをして、夕食を食べ、後片付けをして、ベックマンとシャンクスの待つ書庫へ行き、勉強して。


「……よし、今日はこれくらいにするか」

ベックマンの言葉にハッと○○は顔を上げる。

紙にはちゃんと和訳された文字が踊っていた。

「……ありがとうございました」

○○はぺこりと頭を下げるとフラフラと書庫を出て行った。

「…………お前、何か言っただろう?」

シャンクスは少し不機嫌そうにベックマンを見た。

「何の事だ?」

「何の事だ?じゃない!○○の事だ」

シャンクスは眉間にシワを寄せ声を出す。

「さあな」

ベックマンは煙草を灰皿に押し付けた。

「余計な事はするな。あいつ自身に誤解を解いて貰わなきゃ意味がないだろう」

シャンクスは強く言う。

「そうか?お頭がさっさと抱いちまえば事足りる話だろう」

ベックマンは呆れながら声を出す。

「……俺もこの10年で随分と臆病者になっちまったな」

シャンクスは苦笑した。

「ふっ、まぁ見習いとしてどこまでやれるかが見物だな」

ベックマンは○○を少なからず認めている様だ。

「明日は掃除か。………………エプロンだな」

シャンクスは真面目な顔で呟いた。

「………………」

ベックマンは呆れた顔でため息をついた。










次の日の○○の真っ白なフリル付きエプロンドレスは、レッド・フォース号で大好評だった。

「お!○○ちゃん!可愛いな!」

「良く似合ってるよ!」

「…………あの後ろのリボンほどきてェ……」

「……それ、解る!」

などなど、セクハラ紛いな発言も混じっていたが、恥ずかしながらも、好評を得て○○は嬉しそうに笑っていた。




そして、あっという間に○○のレッド・フォース号で1週間が過ぎようとしていた。

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