23

朝早く目覚めた○○は5時半には厨房へ来た。

「お!感心感心!言われたより早く行動できるのは素晴らしいぜ!」

コックはそう言うとジャガイモの皮剥きを命じてきた。
○○は包丁を借りると作業に取りかかる。

「上手いな!これは即戦力になって頼もしいぜ!」

コックの話によると、昨日から9日間、洗濯、厨房、掃除の順に1日ずつやってもらい、一番相性の良い雑用を優先的にやる事になったらしい。

「戦闘ではお役に立てないので、雑用を精一杯やらせて頂きます!」

○○はにこりと笑って答えた。

それから朝の戦争が終わると、風呂掃除へと駆り出される。

朝、風呂掃除をする代わりに一番風呂に入れる事になったのだ。
○○はそれを喜んで受け入れた。

「シラパも一緒に入れば良いのに……」

○○は赤髪海賊団の美人戦闘員を思い出す。
昨日、この提案が出た時にシラパに一緒にどうだと言ったが

「お頭に怒られちゃうから止めておくわ」

と妖艶な笑みを浮かべていた。

「お頭は女同士でもシラパの体を他人に見せたくないのね」

○○は胸の痛みに自ら塩を擦り込むように言う。
ゴシゴシとブラシの音だけが風呂場に響く。

掃除が終わり、湯を張り、ようやく風呂に入って出て来るとすでに10時近くなっていた。

「もうこんな時間!厨房に戻らなきゃ!」

○○は急いで厨房へ戻る。

「遅くなりました!」

○○が入ると食事係が皆振り返る。

「ふ、風呂上がりか!」

「濡れ髪か!」

「良い匂いだ……!」

「っ!!ほら!昼飯の支度するぞ!!」

「「おぉ!!!」」

何やら気合いの入った厨房は、熱さを増した。







あっという間に昼食も終わり、5時の集合まで休憩を貰った。

「ふはぁ……。食事係も大変」

○○は少しバテ気味に甲板に出た。

「あれか?」

「あれだ」

「撃つか?」

「可哀想じゃねーか?」

何やら話してるヤソップとルウに近付いた。

「こんにちは!」

「おう、○○か!」

「休憩か?」

「はい!」

○○が声をかけるとヤソップと肉を食べながらのルウが振り返る。

「何してるんですか?」

「あそこにな」

ヤソップが上を指す。

「鳥の巣が出来てるみてェなんだよ」

ルウも見上げる。

「…………ど、どこですか?」

○○は見えずに目を細める。

「これの一番上」

ヤソップが当たり前の様に指差すが、○○には見えない。

(超人的視力!!)

○○は驚きながら2人を見上げる。

「登っても良いけどな」

面倒くさい。とルウ。

「だから、撃ち落とすか?」

ヤソップが銃を構える。

「あ、あの、私行ってきましようか?」

○○がはいと手を挙げる。

「お!そうか!そうだな!頼むわ!」

ヤソップは銃を下ろした。

「はい!」

○○はほうきに跨がるとふわりと浮いた。

「行って来ます!」

「気ィつけろよー」

○○は柱に沿って飛んでいく。

「おー!」

「飛んでるよ!」

船のあちこちからそんな声がした。

(は、恥ずかしい)

○○は照れながらも一番上までたどり着く。

(た、高い!!)

頭がクラクラとする高さだった。

「これか、雛もいる」

○○は巣ごと持つと、くるりと周りを見渡す。

「あ、船だ」

○○はドクロの書かれた船を確認してから、下がった。



「よう!お疲れ!」

ヤソップがそう声をかける。

○○が飛ぶとちょっとした騒ぎになる。
それを聞き付けたのか、シャンクスもいた。

「はい!あ、お頭」

「なんだ?」

○○はシャンクスを見上げる。

「あっちの方に船がいましたよ」

「船?」

「海賊船のようでした。こちらに向かってるようです」

○○はそう報告をする。

「お!戦闘か?お頭!」

ヤソップは楽しそうに銃を触る。

「かもな。取り合えず見張り番は」

「海賊船だぁぁぁ!!!!」

丁度見張りが大きく声を出した。

「だ、そうだ」

ルウは楽しそうに笑っている。

「戦闘意欲があるなら相手してやるよ」

シャンクスはニヤリと笑った。

(こう言う顔は海賊っぽい)

○○は内心で、シャンクスの顔に二つの意味でドキドキとしていた。

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