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「終わっ…………た!!」

○○はふぅーと息を吐いた。

ベックマンだけでなく、シャンクスにまで色々と聞きながら、何とか読み終わる。

「お疲れさん!」

シャンクスがにかりと笑った。

「頑張ったな。明日も同じ時間に来い。コツを掴んでからの後半は早く出来ていたぞ」

ベックマンは紫煙を吐き出した。

「ありがとうございます!これしか読んでないけど、結構時間かかちゃいましたね」

○○は訳した紙を見る。

「一文一文丁寧に訳したからな」

9時頃書庫にやって来て、今は11時半だ。

「ありがとうございました」

○○は帽子を被り、ペンや紙を持つ。

「そういや、船内でもそれ被ってるな」

シャンクスは帽子を指差す。

「え?ええ、日除けに良いですし、外に出るのに一々部屋に戻って取りに帰るのが面倒なんです。それに無くしたくないですし、気に入ってるんです!」

○○はにこにこと笑顔で話した。

「確かこっちに来る時は被って無かったよな?」

シャンクスは記憶を呼び覚ますように言う。

「…………10年前の事よく覚えてますね」

「凄いだろ?尊敬したか?」

だっはっは!とシャンクスは笑った。

「します、します」

○○はスクスクと笑った。

「これ、鷹の目に貰ったんです。あの船太陽を遮る物が無かったから」

「取れ」

「は?」

○○の言葉にシャンクスは真剣な目をしていた。

「取れ」

「………………」

シャンクスは同じ言葉を繰り返した。
○○は余りにも真剣な目をしているので、とうしたものかと固まる。

10年前と比べて貫禄が出て来たせいか、凄味がましていた。
それを少しだけ怖いと感じたのだ。

「あんな野郎に貰ったもんなんて被るな」

「いや、でも、これがないと外の作業の時面倒ですし……」

「じゃあ、新しいのやるから取れ」

「…………このデザイン気に入って」

「同じの買ってやるから取れ」

「…………」

一歩も譲る気のないシャンクス。

○○は困った様にベックマンを見る。
ベックマンは面白そうに煙草に火をつけていた。
特に助ける気はなさそうだ。

「じゃあ、新しいのを買うまではこれを」

「……………………」

○○の言葉にシャンクスは眉間にシワを寄せた。

「……こ、怖いです、お頭」

○○は眉毛を八の字にして言う。

「……そう言えばお前、鷹の目に拐われたとか言ってたな」

シャンクスがふと気付いた様に言う。

「え?あ、はい。だから、せっかく向こうから持って来た物も無くて……」

○○は素直に頷いた。

「その服もか?」

シャンクスの指差す先には○○の体。
まさしく、鷹の目が○○に買い与えた物だ。

「……………………は、はい」

「脱げ」

「む、無茶です!!」

シャンクスの睨み付ける様な顔に○○は涙が出そうなほど怯えていた。

「そうだな、ベック!外に出ろ」

シャンクスはベックマンを振り返る。

「そ、そう言う問題じゃ……」

「それは良いが、ここでか?」

ベックマンが楽しそうに、呆れた様に紫煙を吐き出した。

「それもそうだな、来い」

シャンクスは○○の手を掴むと書庫を出た。

○○は落としそうになる紙やペンを持ち直して、引っ張られる。

「ね、あの!お頭!」

○○は必死に声を出す。

「なんだ?」

チラリとシャンクスは振り返る。

「服、殆ど無いんで、脱ぐとか出来ませんよ」

○○はきっぱりと言い切る。

「よし、なら次の島で買ってやる」

シャンクスはニヤリと笑った。

「いや、そこまでして貰う義理はな」

「あるだろ?」

シャンクスは○○の部屋の前でようやく止まり、部屋へと入る。


ーーパタン


「俺はあの時お前に拾われなかったら、どうなってたか」

「……」

「あの時、拾ったのが○○じゃなかったら、異世界があんなに楽しい思い出にはならなかったはずだ」

シャンクスは真面目な顔でじっと○○を見詰める。
それに嫌でも反応して、○○の頬は赤く染まる。

「感謝してもしたりねェ。だから、この世界で頼るのは俺にしろ」

シャンクスは再びドアに○○を押し付ける。

「っ!」

「俺だけを頼って俺だけを見てれば良い」

シャンクスはゆっくりと○○の顔に自分の顔を近付ける。

「お、おかし」

「もう黙ってろ」

シャンクスの声に、しぐさに、眼差しに、全てに反応しそうになる。



「おーい!○○!!明日は食事係だぞ!6時には食堂に来いよ!」

突然外から食事係の声がした。

「っ!は、はーい!!分かりました!!!」

○○はするりとシャンクスの腕から逃げると大きく返事をした。

「お、お頭!私、明日は早いみたいなので、寝たいのですが!」

○○はわざとらしく明るい声を出す。

「………………ちっ」

(舌打ちしたよ!この人!!怖っ!!)

シャンクスの不機嫌な顔に○○はビクビクとした。

「まぁ、良い。分かったな!俺に頼れよ!」

シャンクスは怒った様に声を出す。

「は、はい。あの、お頭!!」

「あァ?!」

シャンクスは不機嫌なまま振り返る。

「お、お休みなさい」

○○はにっこりと笑った。

「ああ、お休み」

シャンクスは○○の笑顔に吊られる様に笑った。

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