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緊張しながら○○は食堂の前にいた。
まだ、賑やかな食事は続いている。
「すー…………ふー」
深く深呼吸をしてから○○は握り飯を手に一歩食堂へと踏み出した。
「遅いぞ!○○」
「おう!○○!!迷子にでもなったか!?」
「○○こっち来いよ!酒もあるぞ!」
海賊達は○○が考えているよりもずっと陽気に話しかけて来た。
「っ!はい!!」
○○はそれが嬉しくて笑った。
「やっぱり、女は良いな!」
「匂いも違う!」
「明日は食事係か?」
「それで足りるのか?」
「肉食え!肉!!」
次々に海賊達は話しかけて来た。
「あ、ありがとうございます!」
○○は楽しそうに笑った。
(やっぱり、シャンクスは凄いな)
シャンクスのお陰で、結局は心配事も小さくなった。
そして、こんなにも素敵な雰囲気の海賊団にしているのは、まぎれもないシャンクス自身の人柄だろう。
(見た目は本当に怖いけど)
○○は改めてシャンクスの器の大きい事を知る。
(……抱かれるのも私の仕事なのかな?)
○○はそう思うようになる。
○○の世界でもそうであったように、シャンクスはきっとモテるに違いない。
ならば、体だけの関係の女も多々いるであろう。
(複雑なのよね……)
そう、○○は複雑な気持ちでいた。
食事を終わらせると○○は書庫に向かった。
ーーコンコン
「入れ」
「失礼します!」
ドアをノックするとベックマンの声がした。
「副船長!宜しくお願いします!……って、何でお頭もいるんですか?」
○○は困った顔をしながらベックマンの隣に陣取るシャンクスを見た。
「お前を他の男と二人きりにするつもりはない!」
シャンクスはきっぱりと言う。
「いやいやいや、副船長にも選ぶ権利があると思います」
○○は呆れながら声を出す。
「なっ!お前、俺の○○に手を出さないつもりか?」
シャンクスはベックマンに向き直る。
「…………出して良いのか?」
「良い訳ないだろ!!」
「……」
「……」
シャンクスの訳の解らない主張にベックマンと○○が無言で呆れる。
「……じゃあ、まずはこれだな」
ベックマンはシャンクスを無視すると一冊の絵本を取り出した。
「『うそつきノーランド』」
○○はベックマンの前に腰かけると、題名をすらりと読む。
「これは読めるのか?」
ベックマンは煙草を吹かす。
「ええ、私の国と同じ言葉……。ああ、中はそうもいかないみたいです」
○○は絵本を開いた。
「今日はそれを読んで中身の把握だ。解らない単語や文は聞いてくれ。辞書は意味がないだろうからな」
ベックマンは紫煙を吐き出した。
「はい!」
○○はにっこりと笑った。
「……それくらいなら俺に頼れば良いのに」
シャンクスはつまらなそうに口を尖らせた。
「ペンと紙だ。必要だろう」
「ありがとうございます。お借りします」
○○は嬉しそうにペンと紙を受け取る。
「これはお前にやろう」
ベックマンは紫煙を吐き出した。
「良いんですか?」
「ああ、使い古しで悪いが、無いよりましだろ」
「ありがとうございます!大事に使います」
ベックマンの心遣いに○○は嬉しそうにペンを見た。
ベックマンも表情を和らげた。
「………………」
シャンクスは一人で不機嫌そうな顔をしていた。
○○が真剣に和訳を始めてしまったので邪魔はしないが、ベックマンを睨み付けている。
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