21

緊張しながら○○は食堂の前にいた。
まだ、賑やかな食事は続いている。

「すー…………ふー」

深く深呼吸をしてから○○は握り飯を手に一歩食堂へと踏み出した。

「遅いぞ!○○」

「おう!○○!!迷子にでもなったか!?」

「○○こっち来いよ!酒もあるぞ!」

海賊達は○○が考えているよりもずっと陽気に話しかけて来た。

「っ!はい!!」

○○はそれが嬉しくて笑った。

「やっぱり、女は良いな!」

「匂いも違う!」

「明日は食事係か?」

「それで足りるのか?」

「肉食え!肉!!」

次々に海賊達は話しかけて来た。

「あ、ありがとうございます!」

○○は楽しそうに笑った。

(やっぱり、シャンクスは凄いな)

シャンクスのお陰で、結局は心配事も小さくなった。
そして、こんなにも素敵な雰囲気の海賊団にしているのは、まぎれもないシャンクス自身の人柄だろう。

(見た目は本当に怖いけど)

○○は改めてシャンクスの器の大きい事を知る。

(……抱かれるのも私の仕事なのかな?)

○○はそう思うようになる。

○○の世界でもそうであったように、シャンクスはきっとモテるに違いない。
ならば、体だけの関係の女も多々いるであろう。

(複雑なのよね……)

そう、○○は複雑な気持ちでいた。







食事を終わらせると○○は書庫に向かった。


ーーコンコン


「入れ」

「失礼します!」

ドアをノックするとベックマンの声がした。

「副船長!宜しくお願いします!……って、何でお頭もいるんですか?」

○○は困った顔をしながらベックマンの隣に陣取るシャンクスを見た。

「お前を他の男と二人きりにするつもりはない!」

シャンクスはきっぱりと言う。

「いやいやいや、副船長にも選ぶ権利があると思います」

○○は呆れながら声を出す。

「なっ!お前、俺の○○に手を出さないつもりか?」

シャンクスはベックマンに向き直る。

「…………出して良いのか?」

「良い訳ないだろ!!」

「……」

「……」

シャンクスの訳の解らない主張にベックマンと○○が無言で呆れる。

「……じゃあ、まずはこれだな」

ベックマンはシャンクスを無視すると一冊の絵本を取り出した。

「『うそつきノーランド』」

○○はベックマンの前に腰かけると、題名をすらりと読む。

「これは読めるのか?」

ベックマンは煙草を吹かす。

「ええ、私の国と同じ言葉……。ああ、中はそうもいかないみたいです」

○○は絵本を開いた。

「今日はそれを読んで中身の把握だ。解らない単語や文は聞いてくれ。辞書は意味がないだろうからな」

ベックマンは紫煙を吐き出した。

「はい!」

○○はにっこりと笑った。

「……それくらいなら俺に頼れば良いのに」

シャンクスはつまらなそうに口を尖らせた。

「ペンと紙だ。必要だろう」

「ありがとうございます。お借りします」

○○は嬉しそうにペンと紙を受け取る。

「これはお前にやろう」

ベックマンは紫煙を吐き出した。

「良いんですか?」

「ああ、使い古しで悪いが、無いよりましだろ」

「ありがとうございます!大事に使います」

ベックマンの心遣いに○○は嬉しそうにペンを見た。
ベックマンも表情を和らげた。

「………………」

シャンクスは一人で不機嫌そうな顔をしていた。

○○が真剣に和訳を始めてしまったので邪魔はしないが、ベックマンを睨み付けている。

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