19
レッド・フォース号の風呂は本当に大きく、海賊達がいっぺんに何人も入れる様になっていた。
そこへ、一番風呂を頂いているのは○○だ。
提案者は美女シラパ。
しかも、ちゃんと貸切りになっているのだ。
「美人で気遣いも出来る、最強だわ。シャンクスもあれは惚れるわぁ」
○○は風呂に浸かりながら呟いた。
せっかく会えた何もかも捨てても一緒にいたいと思った愛しい男。
やっと会えたと思えば10年時が流れていて、しかもその隣には別の美しい女がいた。
しかも自分達はいつの間にか惹かれ合った。
お互いに理由なく好き合った仲なのだ。
「はぁ……」
○○は小さくため息をつく。
「○○!タオル置いておくわ!」
その美しい女のシラパが脱衣場から声をかける。
「あ、はい!」
「外にいるから出て服着たら教えてね!」
そう言うとシラパは脱衣所から外に出た。
「性格も良いと来た!」
○○は勝てないと苦笑した。
風呂を堪能して服を着ると○○は脱衣場を出た。
「お、お待たせしました」
「あら、肌のお手入れは?せっかく綺麗なのに!」
「あ、部屋に置いてあるの」
○○はシラパの質問に答える。
「なら、私のを貸すわ!」
シラパは○○の手を掴むと脱衣場へまた入る。
「ここの棚は私専用なの。化粧水、乳液、パック。○○なら使って良いわよ」
シラパはにこりと笑う。
「あ、ありがとうございます」
○○は呆気に取られながら礼を言う。
「良いのよ!それにしても固いわね!女同士なんだから、もっと仲良くなりましょう!ね?」
シラパは完璧な笑顔で笑った。
「えっと、じゃあ、ありがとう、シラパ。宜しくね」
「こちらこそ!さて、潮風を甘く見ない方が良いわよ」
シラパは満足そうに笑うとコットンに化粧水を染み込ませ、○○の顔に丁寧に塗る。
「っ!!じ、自分で出来るよ!」
○○は赤くなりながら言う。
「そう?残念」
シラパは素直にコットンを○○に手渡した。
しっかりとスキンケアをして、先程の甲板に出る。
「お!○○だな!今日は取り合えず洗濯を手伝ってくれ!」
「はい!宜しくお願いします!」
洗濯係が新人券を取得した様で、待ち構えていた洗濯係に声をかけられた。
天気も良いので洗濯物が多いようだ。
○○はシーツを洗う。
他の海賊達の着替えなどはお頭命令で他の洗濯係がやる事になったらしい。
真っ白とまで行かないが、綺麗に洗い、よく絞り、干していく。
乾かしている間に、レッド・フォース号の案内をして貰える事になった。
「ここが食堂。毎日戦争だから覚悟しろよ?」
「っ!は、はい!」
「でー、ここが書庫」
ーーコンコン
「入れ」
「失礼します」
書庫の中から低い声が響く。
中には赤髪海賊団副船長ベン・ベックマンがいた。
「ああ、見学か?」
「はい!」
ベックマンの質問に○○は笑顔で答えた。
「大体ここには副船長がいる」
「他の奴らは本に関心が低いからな」
ベックマンは苦笑しながら紫煙を吐き出した。
「あはは」
海賊は乾いた笑いを出す。
「そうだ、○○」
「はい!?」
ベックマンに呼ばれて慌てて返事をする。
「夕食終わったらここに来い」
ベックマンはそう煙草を吹かした。
「あっ!はい!宜しくお願いします!」
○○は昨日の約束を果たして貰えると喜んで頷いた。
「なんだよ、怪しいなぁ」
海賊はじとっとした目で二人のやり取りを見た。
「良いから仕事に戻れ」
ベックマンはニヤリと笑うと手で二人を追い払った。
「はい!失礼します!」
「……失礼しまーす」
○○と海賊は書庫を出た。
「じゃあ、ついでにここが船長室だ。何か有ったらお頭に相談だ!」
ーーコンコン
「失礼しまーす!」
「俺はついでか」
部屋を開けると、案内海賊の言葉に赤髪海賊団船長であるシャンクスは不服そうに声を出した。
「まぁ」
「酷いな」
シャンクスはだっはっはっ!と笑った。
「どうだ、○○?結構広い船だろ?」
シャンクスは自慢気に言う。
「はい!良い船ですね!」
○○はにこにこと嬉しそうに笑った。
「だろ?だろ?もうここはお前の居場所だからな!ちゃんとくつろげよ!」
「っ!はい!」
シャンクスの言葉は素直に嬉しいものだった。
「ところで夜は……」
「先約があるので無理です」
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