16

その日の夜は宴になっていた。

赤髪海賊団は陽気な海賊団な様で、お頭であるシャンクスに軽口は叩くは、容赦なく突っ込むはである。
それでもやはり、皆シャンクスの事を信頼、尊敬している様で、結局はシャンクスの言う事を聞くし、心配もする、チームワークの取れた海賊団だった。




宴の席では赤髪のシャンクスの隣にはあの美女が当たり前の様に楽しそうに座っていた。

シャンクスの逆隣には鷹の目が腰を下ろして酒を飲んでいる。


そして、鷹の目から少し離れた横には小さくなっている○○がちょこんと座っていた。

赤髪海賊団は気にする様にチラチラと○○に視線を向けていた。

「飲んでいるか?」

白髪に顔に大きな十字の傷を持つ男が酒を手に○○の隣に腰を下ろした。

○○が皆から少し離れているお陰で彼はすんなりと2人で話す機会を得た。

「え……と?」

○○は困った様に男を見る。

「ベン・ベックマンだ」

宜しく頼むと声を出す。

「ああ!副船長さんですね!」

○○はにこりと笑った。

「知っているのか?」

「はい!シャ……赤髪さんが楽しそうに話してましたから」

ベックマンの言葉に○○は楽しそうに返した。

赤髪の話を聞く限り、このベックマンには一番信頼を置いている様に見えたのだ。

「そうか」

ベックマンは酒を○○に差し出し、○○は迷いながらも酒を受け取る。

「うちのお頭が世話になった。礼を言う」

ベックマンは静かな声で言う。

「いえ!まさか異世界の人と出会えるなんて思わなかったので、楽しかったです!」

○○は手を振りながら恐縮し「人生まで変えちゃいましたしね」と笑った。

「……時に○○はお頭の事をどう思ってるんだ?」

ベックマンは酒を飲みながら無駄話を省き、聞いた。

「そりゃ、もちろん好きですよ。じゃなきゃ、いくら仕事と彼氏と縁が切れても、親や友達を置いて、ましてや世界も捨てて異世界へなんて来ないですからね」

○○は真面目な顔をして酒を飲む。

「でも、だからと言って……だからこそ、赤髪さんに迷惑はかけたくないです。それに、好きな人を他人に取られる辛さは知ってるので、そう言う人も作りたく無いです」

○○は酒の水面を見ながらキッパリと言う。

「そうか……」

ベックマンはぐびっと酒をあおる。

「もし、お頭に女がいなかったらどうだ?」

「どう、と言うと?」

○○は不思議そうにベックマンを見上げる。

「10年離れたんだぞ?」

「ああ」

○○はクスクスと笑った。

「もし、赤髪さんがフリーだったら、諦めませんよ。10年くらい年食っても何の問題もありません」

○○はにっこりと艶っぽく笑った。

「ほう」

ベックマンは○○の表情に面白いと笑った。

「それに、赤髪さんにとっては10年でも、私にとっては1ヶ月経ってないですからね。それくらいで気持ちに整理が付く様な想いなら、世界なんて捨ててないですよ」

○○は少し寂しそうに笑った。

「……」

「それよりも、私の世界には帰れないので、この世界に早く慣れたいですね。読み書きもろくに出来ないと結構大変で」

○○は苦笑しながらお酒を飲む。

「そうか。ならば、知りたい事や聞きたい事は俺に聞くと良い。お頭の恩人だ。もてなすぞ」

ベックマンは煙草に火をつけながら言う。

「本当ですか?!鷹の目の説明は難しい事もあったので、助かります!宜しくお願いします、副船長!!」

○○はぱあっと嬉しそうに笑った。

「ああ」

ベックマンは穏やかに笑い、紫煙を吐き出した。

「まずは読み書きか。可能なら明日から見てやる」

「い、良いんですか?」

「ああ。ただし、こちらも副船長等と言う役職でな。色々とする事もある」

「もちろん副船長さんがお暇な時で良いですよ」

○○は慌ててそう声を出す。

「そうか。ならば時間が取れたら声をかける」

「はい!ありがとうございます!宜しくお願いします!」

○○は嬉しそうに笑うと丁寧に頭を下げた。

「ああ、宜しくな、○○」

ベックマンはそう穏やかに笑った。









「……○○と何話してたんだよ」

「あァ?男の嫉妬は見苦しいぞお頭」

「っ!!」

(全く、この人は……)

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