15

○○は困っていた。

「うわっ!鷹の目の船に女がいるぞ!」

「本当だ!ちょっと可愛い」

「なぁなぁ、こっち来て一緒に飲まないか?」

「おーい!聞いてるか?」

崖の上から海賊達が小船に乗る○○を見下ろして口々に話しかけて来ているのだ。

(……まさか、海賊に会いに来てたなんて……)

○○はそろりと上を向く。

「お!こっち向いた!!」

「本当だ!!」

「なぁ!これ飲むか?」

また話しかけて来る海賊に慌てて○○は顔を背けた。

「なんだよー」

「つまんねェなぁ」

海賊達は不満気にブーブーと唸った。

(早く帰って来てよ!鷹の目!!)

○○は軽く鷹の目を呪っていた。





「お前が鷹の目の連れてる女か?」

崖の上から今までと違う声がした。

「は、はい!」

○○は慌てて上を向き、頷いた。

「なら、上がって来い。お頭が呼んでるぜ」

位の高いらしい海賊が言う。

「上がれと言われても……」

○○はほうきを使っても良いのか迷いながら呟いた。

「縄梯子を下ろす」

そう言うと海賊は縄梯子を下ろして来た。

「上がって来い」

海賊の言葉に○○は意を決して縄梯子を登った。


「よし、付いて来い」

海賊はそう言うとスタスタと歩き出す。

○○は慌てて後を追った。

たくさんの海賊達は鷹の目の女だとジロジロと○○を見た。

(こ、怖いんですけど……)

お世辞にも優しい顔だと言えない連中なので、○○は怯えていた。

「ここだ」

少し広間になったそこでは、すでに酒の匂いが充満していた。

「鷹の目……」

○○は知った顔を見付けるとホッとして鷹の目に近付いた。

「こいつがこの海賊団の親玉だ」

「親玉!」

鷹の目の言葉に○○は初めて赤髪と対面する。

「……赤い……髪?」

○○は不思議そうにその男を見る。

「あ……あれ?に、似てる……けど……?」

○○は不思議そうに赤髪を見る。
一方の赤髪は眉間にシワを寄せて○○を凝視して動かない。

「ね、ねぇ鷹の目……この人……シャンクスに似てる……よね?」

「…………そうだな」

○○の言葉に鷹の目は少し考えてから頷いた。

「あっ!シャンクスのお兄さんとか?!初めまして、○○と言いま」

○○が挨拶をし終わる前に赤髪が○○に近付いて、○○の被る帽子を取った。

「……お頭?」

幹部達も不思議そうに赤髪の様子を見ていた。

「あ、のっ!!」

○○が困っていると、赤髪は帽子を投げ捨て、その手で○○の顎を掴んで無理矢理顔を近付け覗き込む。

「………………○○?」

赤髪は眉間にシワを寄せたまま、驚いた声を出す。

「え?え?」

「そいつは赤髪のシャンクス本人だ」

戸惑う○○に鷹の目が静かに告げた。

「えぇ?!だ?え?だって、年取ってる!!」

○○は慌てふためいている。

「当たり前だ、10年経つんだぞ!今までどこにいたんだ!!」

赤髪はそう言うと○○を右手一本で抱き締める。

「じ、10年?!」

○○は驚いて声を出す。

「あの時から俺がどんだけお前を探したか!!!」

赤髪は抱き締める力を強くして、声を絞り出した。

「っ!で、でも、私は……っ!!え?ひ、左手が!!左手どうしたの?!」

○○は片手だけで抱かれるのに違和感を感じて探ると、あるはずの左手が途中からすっかりなくなっていた。

「はは、ルフィに会う直前だったもんな」

赤髪は抱く力を弱めて、○○の顔を見て、懐かしそうに目を細めた。

「会えて良かった」

赤髪はもう一度抱き締める。

「私ーー」

「ちょっとお頭?この子誰?!」

○○が10年の時を受け入れ様とした時、艶っぽい声が響いた。

「………………」

○○は慌てて赤髪から距離を置いて赤髪の背中に絡み付く綺麗な女性を見た。

(っ!!10年だもんね……)

○○は納得をした。

10年だ。あの時は愛し合っていても、今もそうだとは限らない。

○○は混乱する頭を無理矢理納得させた。

「お前にゃ関係ねェだろ!話がややこしくなるから向こう行ってろ!」

赤髪は美女を冷たくあしらう。

「はーい……」

美女は仕方なく少し離れた所に移動した。

「…………○○?」

赤髪が改めに○○に向く。が、○○はすでに赤髪から距離を置いていた。

「あ、うーん。えっと、私は、皆さんから言うと10年前?赤髪さんをちょーっとお世話した者です」

と、回りの海賊達にぺこりとお辞儀をした。

「いや、待て!あいつの事は……」

赤髪は「赤髪」と呼ばれた事にショックを受けながら手を伸ばすが、その手は空を切った。

「…………と、とりあえず鷹の目、○○を連れて来てくれて感謝する。こいつはこっちで預かるから安心してくれ」

赤髪は情けない顔のまま鷹の目を見て言う。

鷹の目は今までの行動を見てスッと目を細めた。

「貴様に渡すなど言っておらん」

「わわっと」

鷹の目は○○の肩を抱くと、自分の方へと引き込んだ。

「あァ?!」

赤髪は不機嫌な顔で鷹の目を睨み付ける。

「○○は俺が奪った俺のものだ。誰が貴様に渡すなど」

鷹の目は当たり前の様に声を出す。

(鷹の目……素肌は心臓によくない!)

○○は目の前にある鷹の目の胸板に照れていた。

「渡せ、俺の女だ!」

赤髪が鷹の目を睨み付ける。

「ふん、みっともなく目を回して手を離したのはどこのどいつだ」

「うるせぇ!!だから必死に探してたんだろうが!!」

鷹の目と赤髪が言い争いをしている。



「わっ!凄い!ヤソップさん!!」

○○はその言い争いを無視してヤソップの銃の腕前に舌を巻いていた。

「だろ?俺は飛んでる蟻の眉間にだってぶちこめるぜ?」

「飛んでる蟻の眉間!?!!」

○○はヤソップと楽しく話をしていた。



「………………○○?」

赤髪はじとっと○○とヤソップを見る。

「あ、話し合い終わった?」

○○はにっこりと笑いながら振り返る。

「いや、お前について……」

赤髪は○○の笑顔に反応しながらも声を出す。

「え?だって、私としたらどちらに付いて行っても同じだから。もう、元の世界には帰れないもん。なら、心機一転!新天地で生きて行かなきゃ!!」

○○は強く手を握る。

「やっぱり10年って重たいよね?出来たら安全な島までは送って欲しいな!それくらいの恩は売ってるよね?」

「あ、ああ。そりゃもう」

○○の笑顔に赤髪は思わず頷いた。

「良かった!あ、出来たら人拐いとかいない所が良いなぁ。怖いのは嫌い」

○○は困った様に笑った。

「じゃあ、短い間だけど、宜しくね、お頭?」

○○はにっこりと笑った。

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