12

明らかにおかしな状況に○○はいた。

「なぁなぁ、ルフィ元気にしてたか?」

「ねぇねぇ、お姉ちゃん!名前は?名前!」

「お前はウルセェよい」

目の前のテーブルには大量の食事と何本も置かれた酒の瓶。
その内何本かは既に空だ。

そしてテンガロンハットのエース、リーゼントのサッチ、パイナップルのマルコが同じテーブルを囲っていた。

「……あ、あの」

○○は恐る恐る声を出す。

「なんだい?○○ちゃん」

サッチは上機嫌で教えられた名前を呼んだ。

「さ、先程は助けて頂きありがとうございました」

まだ言っていなかった礼を口にする。

「良いよ!そんなの」

「そうそう!こうしてお知り合いになれたんだしな!」

エースの台詞にサッチが続ける。

「この街の娘じゃないねい?」

マルコが聞く。

「はい。連れがここは治安が悪くないからと」

○○は鷹の目の言葉を思い出す。

「○○も海賊か?」

エースが聞く。

「私は違います。……“も”?」

引っ掛かる言葉を聞いて○○は訊ねる。

「ああ!俺達は海賊だ!」

サッチは自慢気に親指を立てる。

「白髭海賊団!!」

エースがにかりと笑う。


ーーガタッ!!


「白髭!」

「よ、四皇!!」

「こ、怖ぇ!!」

周りの人達の声を聞いて○○はごくりと喉を鳴らした。

(ゆ、有名なんだ。聞き返したら怪しまれるかな?)

○○は考える。



もし、自分が異世界人だと解ったら売られてしまうかもしれない。
鷹の目がたまたま売らないだけで、目の前の海賊達はどうか分からないからだ。



「……あらら、怖がっちゃった?」

サッチは黙り込んだ○○を覗き込む。

「そ、そりゃ怖いですが、助けて頂き方達です。信用します」

○○は困った様に笑った。

その間マルコはじっと○○の様子を見ていた。


ーーガタンッ


「っ?!」

突然倒れたエースに○○は驚く。

「え?ちょ、あの!」

慌てて声をかける。

「あー、良いの良いの!ほっといてやって!」

「寝てるだけだよい」

笑うサッチとマルコ。

「ね、寝てる?」

食事中に突然寝始めたエースを不思議そうに覗き込む。

「所で○○ちゃん!今夜の予定は?」

サッチはにこにこと聞く。

「は?」

○○は何となく嫌な予感がして呆けて聞き返す。

「夜と言ったら、ねぇ?飽きさせないぜ?」

サッチはニヤリと笑った。

「……ご、ごめんなさい。連れがいるから」

○○は困った様に断る。

「連れは男かい?」

マルコが聞く。

「え?はい」

○○は頷いた。

「げー!!なんだ!残念!!!」

サッチは大袈裟に残念がる。

「はっ!寝てた!」

エースががばりと起き上がる。

「食いながら寝るなよい」

マルコはいつもの事ながら、そう注意した。

「マルコ隊長!サッチ隊長!エース隊長!オヤジが呼んでます!」

店に入って来た男が三人を呼びに来た。

「おう!んじゃ、行くか!」

エースがご馳走さんと立ち上がる。

「またね、○○ちゃん」

サッチがウインクと共に立ち去る。

「あっ!」

マルコが伝票を片手に立ち上がるのを見て慌てて声を上げる。

「まさか、女に払わせられないよい」

マルコは当然とばかりに言う。

「で、でもこれじゃあお礼に……」

○○は慌てる。

マルコはニヤリと笑うと○○の腰に腕を回し引き寄せた。

「っ?!」

「何なら、今夜ここに来たら良いよい。気持ちよくさせてやるよい」

マルコは低い声で○○の耳元で言った。

○○は意味がわかるとカッと顔に熱を集めて、ぶんぶんと頭を左右に振った。

「そいつは残念だよい」

マルコはニヤリと笑うと○○を解放した。

「またねい」

マルコは店を去った。

○○は一人、呆然と残された。

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