11

「はぁはぁはぁ……」

○○は息も絶え絶え走って、路地で息を整える。

「か、海賊……だよね。怖かった」

ふぅと息を深く吐き出す。どうやら、追いかけて来る様子はない。

「身軽になろう」

手に持つ荷物を置くために宿屋へと足を向ける。



と、そこへ突然、男達が出て来て○○とぶつかった。

「おう、姉ちゃん痛いじゃねーか」

ぶつかった男が声低く言う。

「え?す、すみません」

○○は慌てて謝る。

「こりゃ、骨折れたかもな」

男は異常に痛そうに呻く。

「は?あれだけで?」

「何だとぉ?!」



ーーガツンッ



「キャッ!!」

別の男が壁を叩くと壁が割れた。
どうやら手の甲に鉄を仕込んであるらしい。

「いや、その」

ヤバイヤバイと、頭の中で警報機が鳴り続ける。

「まぁ、金さえ払えば許してやらない事もないぜ?」

ニヤニヤと別の男が笑う。

「お、お金は……」

○○は困った様な顔をする。

(こんな事ならあの札束借りれば良かった)

○○は鷹の目の顔を思い出す。

「まぁ、なら良いや。体で払ってもらうか?」

男はニヤニヤと○○の尻を触る。

「いやっ!!」

○○はパチンとその手を振り払う。

「はぁっ?!!お前がぶつかって来たんだろ?!」

突然大きな声で叫ぶ男。

ビクリと○○の体が恐怖で震える。

「こっちだ!来い!」

「嫌だって!!」

○○の手を引き、無理矢理裏路地に入り、壁に○○の体を押し付けた。

「大人しくしてな。そしたらすぐ終わるぜ」

ニヤニヤと嫌な笑いをする男達。



「嫌だねぇー、大声出せば女が従うとか思ってる小物は」

呑気な声がした。



「っ!!」

「なんだ?!」

男達は突然現れた第三者の声に振り返る。

「ほれ、女を離せよ。嫌がってんだろ?」

そこにはテンガロンハットの若い男が立っていた。

「ウルセェ!ガキ!!あっち行ってろ!!」

男が若い男に怒鳴る。

その声だけで○○は恐怖で震える。

「喚くなって」

テンガロンハットの男は嫌そうに手を振る。

「おーい!エース!!何やってんだ?」

先程のサッチが、テンガロンハットの若い男に呑気に声をかける。

「あ?サッチ。あれ」

エースと呼ばれた若い男が○○達を指差す。

「さっきのお姉ちゃん!!おい、てめェら!その人は俺が先に目ェつけたんだよ!!」

サッチは○○の姿を見て男達に怒鳴る。

「あっ!俺が暴れるんだよ!」

エースがそう前に出る。

「良いからとっとと片付けなよい」

パイナップルのマルコまでもがひょっこり顔を出した。

「なんだと?!」

男がエース達に向き直る。

「俺を知らないとは小物だな!」

エースは腕組みをする。

「まだまだだな、エースちゃん」

サッチがクススと笑う。

「早くしろよい」

マルコはため息をつく。







一瞬。


まさに一瞬の出来事だった。

力の差が有り過ぎて、○○を襲った男達が哀れに思うほどだった。



「お姉ちゃん、大丈夫だったかい?」

サッチが、座り込む○○に手を差し出す。

「あ、はい」

○○は迷ったが、その手を取り、立ち上がるとぺこりと頭を下げた。

「ほら、これ。こんな道通るなよ」

エースが買い物袋を持ち上げて、○○に渡す。

「あ、ありがとう……」

○○はエースをじっと見る。

「何だ?俺の顔に何かついてるか?」

「なに?またエースなのかよ?!」

「煩ェよい」

エースは自分の顔を触り、サッチが悔しがり、マルコが呆れる。

「あ、いえ!何か、似てるなぁって思って」

「似てる?」

エースは不思議そうに聞き返す。

「あ!いや、ルフィ君の笑い方になんか似てるなぁって!あ、ルフィ君って言うのはッ!!」

突然エースが○○の肩に手を置く。

「あんたルフィを知ってるのか?!」

エースは目を輝かせる。

「え?あ、はい」

○○はあまりの勢いにちょっと引く。

「あいつ元気か?俺の弟なんだよ!」

エースは嬉しそうに笑った。

「あっ!なら、これから食事でもどう?」

サッチがどさくさ紛れに提案する。

「お!良いなそれ!行こう!」

エースは○○を引きずる様に歩き出す。

「やった!!行こう!」

サッチも嬉しそうに笑う。

○○は困った様にマルコを見る。

「後でちゃんと解放してやるよい」

と、ニヤリと笑った。



(か、海賊に捕まった!!!鷹の目!助けて!!!)

○○は心の中で叫んだ。

[ 21/61 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -