10
「……暇……」
宿屋に着いて、鷹の目は一人ワインを飲み始めた。
○○は海で濡れた体を風呂に入って温まり、新しい服を着て気付く。
下着は残念ながら濡れてしまったのだ。
「ねぇねぇ、鷹の目。街にでも行かない?」
○○はずいっと鷹の目に近付く。
「行かん」
鷹の目はそう言うとワインを飲む。
「えー。言っては何なんですが、鷹の目が拐ったせいで、着替えとか……その色々無いのだけど?」
○○は恐る恐る声を出す。
「……これで行って来い」
鷹の目はボンッとテーブルに札束を投げる。
「こ、こんなに要らないけど……」
○○はその中から何枚か札を抜き取る。
「足りるのか?」
「どんだけ買う気よ!」
○○は思わず突っ込みを入れる。
○○はポケットにお金を押し込む。
「俺の居ない所で飛ぶなよ」
鷹の目はワインを飲みながら言う。
「え?」
「人拐いに会い、売られたくば話は別だが」
鷹の目は平然と恐ろしい話をする。
「ひ、人拐い?売られる?……人が?」
○○はふるふると震えながら鷹の目を振り返る。
「そうだ。一生奴隷は嫌だろう」
「も、もちろん!」
「ならば飛ばない事だな」
鷹の目はワインを味わう。
「……た、鷹の目は私を売らない……よね?」
○○は恐る恐る聞く。
「生憎と金ならある」
鷹の目はチラリと○○に視線を合わせる。
(無かったら売る気かぁ?!)
○○は冷や汗をかきながら不安になる。
「目立つ事をしなければ、ぬしは一般人にしか見えん。ここは治安も悪くない」
鷹の目はそう頷いた。
「そ、そっか。なら、行ってきます」
○○は不安に思いながらも、下着だけは買おうと心に決めて部屋を後にした。
○○はとにかく女物の服と下着を探した。
「あんなに脅すからどうかと思ったけど、こう言う所は変わらないなぁ」
○○はウィンドウショッピングをしながらぷらぷらと街を歩く。
街らしい街を歩くのはこの世界に来て初めてだった。
見付けた店に入り、色々物色する。
先に、下着を購入し、ホッと一息ついてから、服などを見る。
まだ午後3時頃。
宿屋で過ごすには勿体無い時間だ。
○○は鷹の目の金で、着替えや少しの化粧品、バッグなどの小物も揃えた。
疲れたので休憩を取ろうとベンチに座る。
「疲れた」
帽子を脱ぎ、パタパタと扇ぐ。
人を観察すると、やはりグランドライン。海賊らしき人達が多い。
(ってか、さっきから同じ様な刺青の人が多いなぁ)
○○はなるべく目線は合わない様に観察する。
(荷物もいっぱいになったし、一度部屋に帰ろうかな)
○○は荷物を持って立ち上がる。
「おう、お姉ちゃんお一人?」
後ろから声がしたが、自分だと思わずにそのまま進もうとする。
「あっ!サッチの奴フラれてる!!」
ケラケラと楽しそうな声がした。
「うるせェ!!!ちょ、お姉ちゃん、無視は寂しいぜ?」
「え?私?!」
肩を叩かれて初めて自分の事だと気が付いた。
振り返ると顔に傷があり、リーゼントが特徴的な男が立っていた。
(こ、怖いっ!!)
○○は一瞬パニックをお越しかける。
「あ、の、私、これから……」
○○は明らかに海賊の男に恐れながらゆっくり下がって行く。
「怖がんなくて良いぜ!俺はサッチ!!お姉ちゃんお名前は?」
男ーーサッチはフランクに話しかける。
「う……え?いや」
○○はジリジリと後ろに下がる。
そして、後ろに人がいた事にぶつかってから気付く。
「なにやってるんだよい」
(っ!!パ、パイナップル!!!)
後ろにはパイナップル頭の男が立っていた。
「っうわぁぁ!!!」
○○は一目散に逃げ出した。
「あー…………何すんだよ!マルコ!!せっかく良い感じだったのに!」
サッチはマルコと呼ばれたパイナップル頭の男を睨む。
「そうは見えなかったよい」
マルコは呆れてサッチを見た。
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