09
○○は鷹の目の強さに舌を巻いていた。
世界一の大剣豪なのだから、当たり前なのかもしれないが、強過ぎる。
グランドラインに入って来る程の強豪な海賊団などはあった言う間に叩きのめす。
苦戦する相手などいないのでは無いかと思う。
「ねぇ、鷹の目にとってシャンクスって何者?」
○○は気になり聞く。
「暇潰しの相手だ。奴となら退屈せずにすんだ。昔はな」
鷹の目はそう言うと巨大な黒刀“夜”を触る。
「…………まさか、戦うって意味で?」
○○は恐る恐る聞く。
「そうだ」
鷹の目は頷いた。
「シャンクスも、それだけ強いって事なの?」
○○は不思議そうに聞いた。
たった3日間の出来事だったが、確かに時々怖い顔をする時もあったなと思い出す。
すでにシャンクスと過ごした3日間よりも鷹の目と過ごす時間の方が多いのだ。
少しは鷹の目に慣れてきた様だ。
「知らないのか?」
「え?何が?」
「赤髪の事だ」
鷹の目は○○に目を向ける。
「…………知らないかも」
○○は考えてから呟く。
シャンクスは自分の事より仲間や鷹の目の事を話す事の方が多かった。
「ねぇねぇ!シャンクスの事教えてよ!」
「断る」
「えー……」
○○が嬉しそうに聞くが、鷹の目はにべもなく言い放つ。
「まぁ、良いや」
(会いたいな)
○○はこの海のどこかにいるであろうシャンクスに想いを馳せた。
「じゃあ、能力者って言うのは悪魔の実を食べた人の事を言うのね?」
「そうだ」
○○が聞くと鷹の目が頷いた。
この世界の事について色々と聞いてみる。
「面白いね!ねぇねぇ、どんなのがあるの?」
○○は楽しそうに聞く。
「……島が見えた」
鷹の目の視線の先を追うと新しい島が見えた。
「次はあそこ?」
「ああ」
島の停留所に止めると、鷹の目は何も言わずに○○を抱き抱え陸へと跳ぶ。
「っと、ありがとう」
○○はまだ慣れないのか、緊張気味に礼を言う。
「悪魔の実かぁ。飛べる能力なら良いのにね!」
○○は空を見上げる。
この広い空を飛べるのならばそれも楽しそうだと思ったのだ。
「悪魔の実は海に嫌われ、海では沈む」
「そ、そうなの?泳げなくなるのは嫌ね」
鷹の目の言葉に○○は残念そうに言う。
ふと、目に入ったほうきを手に取る。
「子供の時見た映画に魔女が出て来て、小さい時はほうきに跨がって飛ぶ練習したなぁ!」
○○はそう言いながらほうきに跨がる。
「え……?」
「っ?!」
初めて見る鷹の目の驚愕の表情も気になったか、それよりも自分の身に起きた事に驚く。
「と、飛んで……るー……」
スイーとほうきに乗って空を飛んだ。
驚きながらも自分の思い通りに飛べるほうきを操る。
まるで、物語に出てくる魔女だ。
「た、鷹の目……。これは?」
○○は不安になり、ほうきから下りると鷹の目の前に来た。
「……」
鷹の目は○○からほうきを奪うと食い入る様に見る。
「っわ!た、鷹の目?!」
鷹の目はほうきを投げると○○を抱き抱える。
そして、海に近付きーー
ーードボンッ
鷹の目は○○を海に投げ入れた。
バシャバシャと慌てる○○を冷静に見下ろす。
「っぷはっ!た、鷹の目!!な、何するの?!」
○○は何とか浮き上がり、鷹の目に文句を言う。
「……悪魔の実では無いようだな」
鷹の目は片膝を付くと片手を○○に差し出し、引き上げる。
「な!もしかして、それを確認するために?!」
○○はびしょ濡れのまま怒った。
「そうだ」
鷹の目はタオルを投げる。
「も、もっと他に方法は無かったの?」
○○は非難がましくタオルで拭きながら鷹の目を見上げる。
「無かった」
鷹の目は静かに言い放つ。
「……」
「行くぞ、風邪をひかれても困る」
(ならするなー!!!)
○○は心の中で叫んだ。
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